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社内ベンチャーだったアスクルを躍進させた、岩田彰一郎氏の「ラグビー型経営」

2021年12月24日 公開
2023年02月21日 更新

岩田彰一郎(フォース・マーケティングアンドマネージメントCEO)

 

広く世界の動きに常に敏感であること

こうした「勝てるビジネスモデル」は経営者が考えるべきことですが、これから新規事業を始めるリーダーも持っておくべき視点です。

勝てるビジネスモデルを構築するには、何をするべきか。私が最も重視していたのは、お客様の声を聞くことです。

アスクルが他社商品を扱ったり、商品の価格を安くしたりしたのは、お客様からの要望があったからです。やはり、お客様の声には大きなヒントがあります。

それに加えて、世の中を広く見ることも大切です。日本だけでなく、海外にも目を向けることです。

幕末に、「欧米ではこんなことが起こっている」と知っている人と、海外での出来事を知らずに国内だけ見ている人では、意識がまったく違ったでしょう。

アスクルの企画がプラス内で持ち上がったきっかけは、米国の動きでした。

景気が低迷していた86年に、米国の文具業界では、オフィス・デポやステープルズなどのカテゴリーキラーが相次いで登場しました。広大な敷地の店舗で大量に仕入れた文具を安く販売することで、文具業界の勢力図が一変しました。日本にもこの流れが必ず来ると考えていたからこそ、プラスはいち早く新規事業に乗り出せたのです。

海外の動きを知る必要があるのは、現在も同じです。

GAFAがなぜこれほど強大になったのか。なぜ彼らはデータを一生懸命集めているのか…。これらを研究しなければ、日本企業は戦い方のジャッジを間違えるでしょう。

 

0から1を生むのは「意志ありき」

新しいビジネスモデルには反発がつきものです。

アスクルに関しても、プラス以外の商品を扱うと言ったときは、営業の責任者から「国賊」と言われました。業界の方々からも「業界の破壊者だ」と言われました。また、商品を値引き販売することを決めたときは、小売店からの猛反発を受けました。

そうした反発に負けないためには、「志」を持つことです。

私はよく「意志ありき」と言っています。「会社をこんなふうにしたい」「世の中に対してこんな貢献がしたい」ということがなければ、誰かの意見に流されてしまいますし、誰もついてきてくれません。0から1を生むためには、意志の力が不可欠です。

私自身、アスクルを成功に導けたのは、「プラスが21世紀に生き残っていくためには新しい流通のビジネスモデルが必要だ」という志を強く持っていたからです。

「自分が何をしたいのか?」。それを明確に持つことが、リーダーになるための第一歩と言えるでしょう。

私は、アスクルの社長を2019年に退任したあと、様々なベンチャー企業や大企業のイノベーションを支援しています。

私の経験上、ベンチャー企業には100の落とし穴が待っています。若い経営者が失敗をしないように、落とし穴のパターンを教え、ベンチャー企業を育成すること。ひいては、強い日本を作ることが、今の私の志です。

皆さんも、共に頑張っていきましょう!

 

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