THE21 » キャリア » マーケティングだけでは厳しい時代...100年続く企業ほど貫いてきた「近江商人の考え方」

マーケティングだけでは厳しい時代...100年続く企業ほど貫いてきた「近江商人の考え方」

2022年02月22日 公開
2023年02月21日 更新

清水康一朗(ラーニングエッジ株式会社 代表取締役社長)

清水康一朗

変化の激しい時代。それは当然、企業の存続をも大きく揺さぶっている。これまでなら通用していた、"教科書通りのマーケティング"ではもはや売れないという声も挙がる。

ラーニングエッジ株式会社の代表・清水康一朗氏は、時代の変化を柔軟に乗り越えてきた老舗企業ほどお客様や社会との"絆"を大切にし、結果的に高収益を実現していると指摘する。企業は今後、どのように振舞い、生き残っていけば良いのか。清水氏に話を聞いた。

※本稿は、2022年1月に上梓した清水康一朗の新刊書籍『絆徳経営(ばんとくけいえい)のすゝめ』(フローラル出版)の第一章を再編集したものです。

 

「教科書通りにマーケティングをやっても売れない時代」に考えたいこと

ここ数年で「経営者の悩みの質」が激変してきています。以前の悩みは「モノが売れない」「社員がすぐにやめてしまう」といったように、しかるべきマーケティングや環境改善を行えば確実に解消出来た問題でした。

ところが現在は、「教科書通りにマーケティングをやっても売れない」「高品質を提供しているのにリピーターがつかない」というように、努力しても効果が出ない、切実な悩みへと移行してきたのです。

そこで、時代の変化を柔軟に体現し、この先10年20年100年と愛され、成長し続けていく企業に敬意を込めて、私は「絆徳企業(ばんとくきぎょう)」と呼んでいます。

絆徳(ばんとく)とは、聞き慣れない言葉ですが、道徳的にお客さまや社員と絆を結び、結果的に高収益を実現する企業のことです。では、悩める企業が高収益体質へと転換する「絆徳企業(ばんとくきぎょう)」になる為には、どうしたらいいか本稿を通じてご一緒に考えていければと思います。

 

透明性を持った「きれい事」が経済合理性を生む時代

改めて目指すべきは、太く短くの急成長を追う事ではなく、長きに渡って高収益を上げ続ける「持続可能な経営」だと考えています。2015年国際サミットで採尺されSDGs(持続可能な開発目標)で世界的にある意味「目標値」が定まったわけですが、一方「なぜ利益が出にくくなっているか?」について考えてみたいと思います。

かつてないスピードで社会が変化している現在、数年前にヒットした商品は、大昔の産物。そこで重要なのが、過去の成功体験にしがみつく事なく、「消費者の変化」を見落とさずに事業計画を立てるフレキシブルさが最も大切な事ではないでしょうか。

また現在の消費者は、何を求めているでしょうか?それは「よいこと」です。「よいこと」とは漠然とした言葉ですが、消費者意識を例にとって考えた場合、燃費の悪いスポーツカーよりも環境に優しいエコカー、有名企業よりも働き甲斐のある職場やジェンダー平等を選ぶ、といったように、今や人々は「よいこと」に魅力を感じるようになったのです。

それでは、経営者は、どんな「人や社会によいこと」を実践すべきなのでしょうか?その答えは、「相手によいことをして絆を結ぶ」事です。つまり、お客さま、社員、社会の三方に対してよいことをするのを、私は「絆徳経営」(ばんとくけいえい)とネーミングしました。

この絆徳経営(ばんとくけいえい)を実践する事で、強い組織力が生まれ、高い経済合理性を同時に達成するようになる事でしょう。透明性を持った「きれい事」が経済合理性を生む時代に変貌を遂げたのです。

 

次のページ
「絆」を作れるデジタルは資産 >

THE21 購入

2024年5月号

THE21 2024年5月号

発売日:2024年04月06日
価格(税込):780円

関連記事

編集部のおすすめ

「なぜ達成できないんだ」と社長が迫る中小企業ほど、生産性が下がり続ける理由

山元浩二(日本人事経営研究室 代表取締役)
×