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日本企業に「いつまでも現場に居座る上司」が多い決定的な理由

2022年03月09日 公開

中原淳(⽴教⼤学教授)

中原淳

社会や職場の大きな変化により、ひと昔前よりも、マネジャー業務の難易度は格段に上がっている──。そう語るのは、立教大学教授の中原淳氏だ。

企業・組織における人材開発・組織開発について長年研究を行なってきた氏に、現在のマネジャーを取り巻く困難と、プレイヤーからマネジャーへスムーズに移行するためのポイントを聞いた。(取材・構成:林加愛)

※本稿は、『THE21』2022年4月号特集「リーダーになったら必ずやるべきこと絶対やってはいけないこと」より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

現代のマネジャーに襲いかかる3つの困難

「管理職になりたくない」「なってしまって憂鬱だ」と嘆くビジネスパーソンが、近年いよいよ増えています。そこには、昨今のマネジャー事情が多分に影響しています。ただでさえ大変なマネジャー職は、ここ10~20年の社会変化を背景に、さらに複雑化・高難度化しているのです。

その変化は、主に三つあります。

一つ目は「突然化」。
ひと昔前はプレイヤー(実務担当者)からマネジャー(管理職)になるまでに、細かな段階がありました。例えば、課長の下にあった、係長や課長補佐などのポジション。

マネジャー予備軍と目された人はこうしたポジションで、課長職に就く準備ができました。しかし最近は組織のフラット化により、これらのステップが消滅。いちプレイヤーがある日突然課長に、といったケースが多く見られます。

二つ目は「プレイングマネジャー化」。現在、マネジメントのみを行なうマネジャーは、全体の2割にも満たないでしょう。たいていのマネジャーは、自分の業務と部下の管理を同時並行させています。

三つ目は「若年化」。昇進の時期が早まり、若くしてマネジャーになる人が増えています。そこには、日本企業が昔ながらの年功序列型人事から、成果主義へ変化してきたという背景があります。

優秀な人を登用するという考え方には、確かに一定の合理性があります。しかし優秀なプレイヤーであれば優秀なマネジャーになれるかというと、それはまた別の話です。

プレイヤーとマネジャーには、本質的な違いがあります。プレイヤーは「自分が動く仕事」であるのに対し、マネジャーは「人を動かす仕事」。プレイヤーがマネジャーになるには、180度の転換が必要。そこには根本的な学び直し――「生まれ変わる」レベルの変化が求められるのです。

 

日本企業が「管理職育て」を苦手とする理由

にもかかわらず、実際にはマネジャーになるための学び直しの機会など与えられないまま、「突然・プレイヤーと並行で・若いうちに」マネジャーを任されているのが現状です。

このとき、企業側のフォローが不足していることは明らかです。いきなり任命しておいて、「やってみたら何とかなるから」という楽観論や精神論で押し切るのは、実はかなり無茶な話なのです。

なぜ、日本企業の多くが、こうも管理職を育てられないのでしょうか。そこには、日本企業の「新人教育偏重」があると私は思っています。新人研修はOJTを含めて何カ月も行なうのに、管理職研修は1~2日、という会社は珍しくありません。

海外では反対に、新人教育よりも管理職教育が重視されます。そこには、マネジメントの失敗が及ぼす悪影響に比べると、新人の仕事はまだ影響力も低く、仕事のやり方も大学やビジネススクールで学んできたはず、という考え方があります。

とすると、日本の大学が職業訓練を行なわないことも、管理職教育がおろそかになる遠因と言えるでしょう。企業が毎年迎える新卒は、仕事のイロハも知らない若者たち。そこに人材開発費をつぎ込まなくてはならず、とても管理職まで手が回らない、というわけです。

一部の企業では管理職への投資も行なっています。360度評価の導入や、定期的な面談・指導を行なう会社も。目標達成度やメンバーの状況を聞き取り、フィードバックを行ない、仕事に活かすというサイクルを回しながら、成長する仕組みです。

しかし、そんな会社はあくまで一部。それも外資系がほとんどであり、日本の企業ではごくごく少数でしか行なわれていません。つまるところ、学校教育から始まって、企業の人材育成に至るまで、日本のシステムにはひずみがあるのです。

公教育における国の負担割合がOECD諸国中最低であることから見ても、この国は「教育ギライ」と言えます(笑)。海外に比べて、能力が開花しづらいことは否定しがたく、嘆かわしい限りです。というわけで、駆け出しマネジャーのほとんどは、会社をあてにせず、自力でマネジャーへと「生まれ変わる」しかありません。

それは、自分という働き手の「OS」を入れ替えるプロセス、とも言い替えられます。まずは、マネジャーの役割とは何かを知ること。そして「やるべきこと」と「やらないこと」を決めることが必要となります。

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