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カープ元監督・緒方孝市氏が「あえて2軍レベルの選手を1軍で起用した」真意

2022年03月25日 公開

緒方孝市(広島東洋カープ元監督)

緒方孝市
(写真撮影:大島拓也)

「監督1年目はリーダーとしては落第点。しかし、その経験がなければ3連覇を成し遂げられなかった」。そう語るのはプロ野球・広島カープ元監督の緒方孝市氏だ。

緒方氏は監督就任1年目こそ4位と低迷したが、翌年からリーグ3連覇を達成。リーダー1年目の失敗を結果に結びつけた、ビジネスにも共通するチーム運営のコツとは?(取材・構成:杉山直隆)

※本稿は、『THE21』2022年4月号特集「リーダーになったら必ずやるべきこと  絶対やってはいけないこと」より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

なぜ、監督就任1年目はBクラスに沈んだのか?

――2016~2018年にかけて、広島東洋カープの監督として、セ・リーグ3連覇を成し遂げた緒方孝市氏。しかし、15年の監督就任1年目の成績は4位と低迷した。その原因をシーズン終了後に振り返ると、次の結論に達したという。

【緒方】「勝つために、どんな野球をするのか」という野球観を、選手やコーチにきちんと話していなかったのです。

具体的に言えば、打ち勝つ野球を目指すのか、守りを重視した野球をするのか、機動力を使うのか、といったことですね。

――最初のミーティングの第一声は「今年は勝つ。勝つ。何が何でも勝つ」。続けて「君たちは今までやってきたことをそのまま継続してやってくれればいい」と話し、具体的なことは言わなかったという。

【緒方】もちろん、私も私なりの野球観を持っています。ただ、前年までの5年間、野村謙二郎前監督の下でコーチをする中で、「前監督の方針を続ければチームは強くなる」と感じていました。だから、そのまま継続してほしいと言ったのです。

――しかし、それが選手たちを混乱に陥れた。

【緒方】「前監督の方針を継続する」といっても、100%まったく同じ方針になるはずがありません。選手起用や作戦の出し方は当然異なります。それを言わずに、「強い気持ちを持って戦えば勝利につながる」という精神論しか言わなければ、選手もコーチも混乱するのが当たり前です。

――また、優勝することばかり強調したことで、選手たちは結果を恐れて思い切ったプレーができなくなってしまった。

【緒方】細やかなチームプレーも選手に叩き込めていなかったので、試合中に適切な作戦が取れないことも少なくありませんでした。結局、1年目は「監督の仕事とは何か」がよくわかっていなかったのです。

 

結果のみを意識せずそれに至る過程を徹底しよう

――そこで緒方氏は、1年目の反省を踏まえ、2年目はやり方を大きく変えた。まずは自分の野球観をきちんと伝えるために、最初のミーティングで、選手やコーチ、スタッフに、今年の指針を書いた資料を配った。

【緒方】最初に述べたのは、「結びに専念すれば、果が生まれ、果に専念すれば、苦が生まれる」という言葉。「果」というのは、結果のこと、「結び」というのは行ないそのもののことを意味します。

この言葉を通して、優勝という目標を立てるのは重要だけど、結果よりも「優勝に至るまでに何をしなければならないのか」という過程を徹底的に突き詰めよう、と伝えました。

そのうえで、どんな方針で野球をするのかを具体的に書きました。優勝するためには、「投手を中心とした守り勝つ戦い」「接戦を勝ち切るために、チャンスで1点をもぎとる攻撃」などが重要で、そのためには「守備のときのサインプレー」「出塁率を上げる」ことなどを強化する必要があると話しました。

――さらに、選手一人ひとりに、「私やチームが期待している仕事はこれだ」と役割を明確に伝えた。例えば、1番打者の田中広輔選手には「とにかく出塁する」、2番の菊池涼介選手には「走者を進塁させる」、3番の丸佳浩選手には「外野フライでもいいのでランナーを返す」といった具合だ。

【緒方】役割が明確になると、それを果たすために何をすればいいか、選手はプロセスを具体的に考えられるようになります。例えば「自分の役割は塁に出ること」なら、大振りしてホームランを狙う必要はなく、フォアボールでもエラーでもとにかく塁に出れば良いとなります。

すると、「エラーも誘えるので、セーフティバントをしよう」「セーフティバントの練習をしよう」と塁に出るための方法を自分で考え、重点的に練習するようになるわけです。

こうして役割を伝え、それを全うしてもらうことで、選手たちは結果に振り回されなくなり、プレーに迷いがなくなりました。

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