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定年後の孤独はなぜ危うい? 50代の「肩書に頼らない人間関係」構築法

2022年07月05日 公開

河合薫(健康社会学者/気象予報士)

河合薫 定年 孤独

定年後の「孤独」を防ぐため、現役のうちから職場以外にも友人を多く作っておくべき──そうした主張を最近よく見かけるようになった。しかし、1,000人近いミドルにインタビューしてきた河合薫氏によれば、ただ友人を増やせばいいというわけでもないという。定年後に豊かな人間関係を築くために、50代のうちから意識しておくべきことについて、河合氏にうかがった。

※本稿は、『THE21』2022年8月号総力特集第1部「『脳と心』の若さを保つ秘訣&習慣」より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「孤独」には種類がある!「ロンリネス」には要注意

役職定年や定年延長、第二の人生(セカンドライフ)をどう過ごすのか──。年齢を重ねれば重ねるほど、あまり考えたくないと思っていたことを、嫌でも考えねばならなくなります。

人とのつながりも、仕事上のものだけでは不十分。だからまず趣味をつくれ、仕事以外のつながりを見つけろ、などと言われたりします。しかし、そんな義務感だけで何かを始めても、長続きさせるのはなかなか難しいことでしょう。

大切なのは、なぜそんなにも「つながり」が必要なのかを理解し、会社の役職や立場を離れたフラットな姿勢で人と関わる心を取り戻すことです。

さて、まず「つながり」が重要な理由ですが、そもそも人類は他者と協働することで生き残ってきた生物。孤独ほどストレスフルな状態はありません。

一人が好きだ、という方もいるでしょうが、実は「孤独」は「ロンリネス」と「ソリチュード」の2つに分けられます。

ソリチュードは、孤独は孤独でも、寂しさはあまり感じず、ときには人と結びつくほうにも舵を取れる状態。好んで孤独を選んでいる状態と言ってもいいでしょう。

問題なのはロンリネスです。これは、周りに人がいてもなお、自分は独りぼっちだと感じている状態のこと。組織に自分の居場所がない、もしくは将来そうなるのでは、と感じている方などが当てはまります。

ロンリネスを感じていると、普通の人よりがんになりやすいというデータもあります。高血圧や心筋梗塞、認知機能低下につながるという研究もあり、対してポジティブな影響はまったく報告がありません。

ロンリネスは「皮膚の下に入る」と言われるほど、人に強い悪影響を及ぼすものなのです。

【2つ以上当てはまると要注意!「定年後ロンリネス予備軍」チェックリスト】

□ 町内会やマンションの自治会などで、つい会社の名刺を差し出してしまう
□ パパ/ママ友の集まりでも仕事の話が先行してしまう
□ 情報交換や打算的な目的の一切ない交友関係を持てているか、自信がない
□ 自分から人に話しかけるのが苦手
□ 身の回りの人と話すより、ネットやSNSで話す機会の方が多い、または同じくらいだ

 

「仕事以外の話」ができる友人を持つべき納得の理由

では、この「ロンリネス」の孤独を防止するには何が必要なのか。まず、比較的ラクにできるのが、学生時代の友達や新卒時代の同期など、まだ自分が「何者でもなかった」頃の交友関係を再編することです。

役職や立場を背負う前の身軽だった頃の友人となら、今の仕事の話ではなく、立場を超えたフラットなつきあいがしやすいもの。逆に言うと、肩書きを得てからのつながりは、どうしても純粋な「人」同士のつながりではなく、役職としてのつながりという性格を帯びてしまいがちです。

もちろん、それ自体は悪いことではありません。ですが、そればかりでは人間関係が「打算」を含む情報ネットワークばかりになり、ほっとひと息つける友人がいない、という状況が出来上がってしまいます。

趣味を持て、とよく言われるのも、そういった「仕事と無関係な友人や知り合い」の存在が、「ロンリネス」状態の防止に直結するからなのです。

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