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吉村洋文 サンフランシスコ市にいいたいこと

2018年01月31日 公開

吉村洋文(大阪市長)

何もしないほうが相手の思う壺

2017年12月12日、大阪市議会はサンフランシスコ市の慰安婦像受け入れへの反対決議を大阪維新の会、自民・公明両党の賛成多数で可決した。同日にはエドウィン・リー市長が急死。翌13日には、慰安婦像の受け入れを承認したサンフランシスコ市との姉妹都市解消が幹部会議で決定された。姉妹都市解消の経緯について、大阪の吉村市長に聞いた。

聞き手:編集部 写真:大島拓也

 ――日本国内の反応で気になるのが、「慰安婦の問題ぐらいで姉妹都市を解消するのはよくない」とか「国際社会にネガティブなイメージを与える」「大阪万博の誘致にマイナス」とか「過激な対応は反日を煽る団体の思う壺」という意見です。国益を軽く見ているというか、高を括っているような気がするのですが。

 吉村 姉妹都市の解消が「反日を煽る団体の思う壺」というのはまったく逆の話で、むしろ「何もしないほうが相手の思う壺」でしょう。事実に反する批判に対して何も行動を取らずに放置する、という姿勢ほど、反日活動を行なう人びとを利する行為はありません。事実、長年にわたって日本政府が慰安婦問題をめぐる対日批判に反論を示さなかったからこそ、政治宣伝がいま世界中に広まっているわけです。

 こうした流れに対して現在、日本の首相である安倍晋三氏は、サンフランシスコ市の慰安婦像受け入れは「わが国政府の立場と相容れずきわめて遺憾」(2017年11月21日、衆議院本会議)と国会で明言しています。河野太郎外務大臣も同様です。大阪市は突拍子もないことを主張しているのではなく、日本政府と同じ立場を示しているにすぎません。そして、自治体である大阪市がどこの都市と姉妹都市を結び、解消するかは都市の判断であり、外交ではありません。したがって、今回のことで大阪の国際的評価が下がるとは考えられない。むしろ、主張すべきことは明確に主張するのが国際常識です。国際社会においては、黙っていてもわかってくれるという日本の常識は通用しません。

 そもそも「国際社会にネガティブなイメージを与える」という物言い自体が、対日批判の政治宣伝におもねる姿勢です。慰安婦像設置を推進する勢力の発想が、そこに隠されているのではないでしょうか。

 ――よく納得できました。

 吉村 もう1つ大事な点は、市長としての私に課せられた役割です。現に姉妹都市の関係にあるサンフランシスコ市が慰安婦像を建てたことに対し、現状の関係を続けることが正しいか、姉妹都市として大阪市民の税金を使うことが正しいのか、判断をする必要があります。たしかに多くの人は軋轢や対立、批判を受けるのが嫌で億劫だから、「何もしない」ことを選ぶかもしれない。しかしサンフランシスコ市の決定を黙認して、あるいは、いつものよくある「遺憾の意」を表したとしても、姉妹都市の関係を続けているかぎり、それはやはり「大阪市は慰安婦像の設置を認めた」という判断を下したと見なされるでしょう。

 だから私自身、難しい政治判断でしたが「違うものは違う」といえなければ、選挙で選ばれた市長の名に値しない。黙認が許されない以上、信頼関係が壊れた状態を続けるほうが問題であると判断し、解消を表明しました。予想どおり慰安婦支援団体をはじめ立憲民主党、共産党の議員等々から批判を多く浴びていますが、批判を受けるのも私の役目ですし、それでも臆さずにいうべきことはいい、対処すべきことは対処します。

 

国民は「おかしい」と思っている

 ――恐ろしいのは2017年12月、日本国民の与り知らないうちにフィリピンのマニラでも慰安婦像が設置されてしまいました。世界中に日本バッシングの波が広がらないか、不安です。

 吉村 一部報道にあったように、仮にこの動きを事前に在フィリピン日本大使館が把握していなかったとしたら大問題ですし、私は先の経験から大使館や領事館、外務省が鷹揚すぎるのではないか、という懸念をもちます。もう少し危機意識があれば、即座に情報収集や対応を図るはずです。先にもいいましたが、初動が大切です。彼らは日常的に現地で議員への根回し、ロビー活動を継続しています。個々の議員がその気になってしまえば、反日活動を行なう人びとの狙う方向に進んでしまう。現地に駐在する日本の公的機関の方々には真剣に慰安婦像の問題に取り組んでほしい、と感じます。

 誰よりもいま国民自身が、慰安婦問題が歪曲されていることに気付いています。現に2017年11月30日時点で大阪市役所に寄せられた市民の声として、姉妹都市の解消に反対する意見が約100件だったのに対し、賛成する意見は約1000件も寄せられました。やはり多くの方は、たとえ声は小さくても「いまの状態はおかしい」と思っているのです。政治家の側が思考を変えてこの問題を重く受け止めなければ、日本バッシングの流れ、慰安婦像設置の流れは変わらないのではないでしょうか。

(本記事は『Voice』2018年2月号、吉村洋文氏の「サンフランシスコ市にいいたいこと」を一部、抜粋したものです。全文は現在発売中の2月号をご覧ください)


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著者紹介

吉村洋文(よしむら・ひろふみ)

大阪市長

1975年生まれ。98年に九州大学法学部を卒業し、同年に司法試験合格。2000年、最高裁判所司法研修所修了弁護士登録。11年に大阪維新の会から大阪市会議員として出馬、当選。14年に維新の党から衆議院議員として出馬し、当選。15年、大阪市長選に出馬し当選、現在に至る。大阪維新の会政調会長。

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