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トランプだけではない、アメリカの対中不信は“積年の産物”

2019年07月12日 公開
2022年07月08日 更新

村田晃嗣(同志社大学法学部教授)

1970年代の米中ソ戦略的三角形に似ている

本来は安倍晋三内閣が提唱した自由で開かれたインド太平洋(FOIP)という概念が、トランプ政権でも用いられるようになった。アメリカと日本、オーストラリア、インドを線で結ぶとダイヤモンドの形になる。

この戦略的ダイヤモンドに、中国がすっぽりと収まる。中国の膨張主義や国内的不安定に、この戦略的ダイヤモンドが今世紀半ばまで対応できるかどうかが、鍵である。

ただし、同じFOIPという概念を用いても、アメリカではより戦略的、軍事的色彩が強く、日本は法の支配や自由貿易という規範を目標にしている。東南アジア諸国連合(ASEAN)も日米と同じ言葉を使いながら、中国により配慮している。

すでにアメリカとロシアは激しく対立してきた。トランプ政権によれば、中ロ両国は現状変更勢力である。米ロ対立に米中対立が重なったことで、2つの現状変更勢力の対米結束が強まっている。

いたずらに両国を接近させることは危険だという意見もあるが、両国はサイバー空間や宇宙空間でアメリカの安全保障を侵害し続けてきたという批判の声も根強い。

米中ソの戦略的三角形が語られた1970年代に、事態は似ているかもしれない。しかし、中ソ対立のため、当時の戦略的三角形はアメリカに有利だったし、当時のソ連より現在の中国のほうが手ごわい。

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