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外国人労働者による人手確保は安直な考え

2019年08月16日 公開
2019年08月17日 更新

デービッド・アトキンソン(小西美術工藝社代表取締役社長)

国民一人ひとりの幸せに直結する道

――なぜ日本では、例をみない人口減少に将来陥ることがわかっていながら、抜本的な対応策が講じられてこなかったとお考えですか。

【アトキンソン】 これまで人口が増えることが当たり前だったので、その常識にとらわれてしまったのでしょう。人口の絶対数が減り、労働生産人口が減る現実から目を背けてきたのです。

メディアは「少子高齢化」という言葉はよく使いますが、「人口減少」の深刻さを強調し始めたのはそんなに昔の話ではありません。

エコノミストは過去の常識を前提として研究を進め、政治家は中長期的なビジョンを描けず、経営者は自らのポストを維持することに固執しました。

しかし、手もとに莫大な額の請求書が送られてくるかのように社会保障費がかさむ状況において、それを放置していいはずがありません。

経営者が変わろうとしないのであれば、国が主導して抜本的な政策を進める必要があります。

――人口増加で自ずと経済成長を謳歌できた昭和の価値観を見直し、改革が失敗した平成を乗り越え、令和の新しい日本を支える政策を推し進めるときですね。

【アトキンソン】 世界3位の経済規模をもつ先進国・日本は、歴史上経験したことのないペースの人口減少に直面しているわけですが、それをいかに乗り越えるか、世界が注目しています。

このまま策を打たずに沈んでいくのか、生産性を上げて再び輝くことができるかは国民次第です。私は30年以上、日本に住んでいますが、この国の労働者の質の高さは身をもって感じています。

感情論にとらわれず客観的にデータを分析すれば、日本のやるべきことはみえています。国民の所得を断続的に上げて、生産性を向上させる。

これは日本が生き残る道であると同時に、国民一人ひとりの幸せに直結する道です。小手先の施策ではなく、抜本的政策を実行できるかどうか。日本の覚悟が問われています。

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