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「中国共産党の脅威」を生んでしまったアメリカ痛恨の”判断ミス”

2019年09月06日 公開

江崎道朗(評論家)

江崎道朗(えざきみちお)

安全保障、インテリジェンス、近現代史などに幅広く精通し、その知見から論壇誌への寄稿も多数の評論家の江崎道朗氏。

その新著『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』では、日本人の多くが"傍観者"だったと思いこんでいる朝鮮戦争において、実は中国、ソ連などの共産勢力が企てていた日本と台湾の侵略の危機という「知られざる歴史」が存在することを指摘している。

本稿では同書より、アメリカ依存によりアジアが危機に晒される危険性を指摘した一節を紹介する。

※本稿は江崎道朗著『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。

 

現在の中国の脅威を生み出したのはアメリカの「優遇政策」

北朝鮮の核開発や、香港での流血デモが国際的に注目されるなか、あまり注目されなかったが、2019年5月27日から31日にかけて、台湾が中国からの侵攻を想定した軍事演習「漢光35号」を実施した。

旧知の元米軍関係者に尋ねたところ、戦闘機や攻撃ヘリ、地対空ミサイルまで参加させたこの大規模軍事演習に、米軍将校も多数参加したのではという噂が飛び交っているよと教えてくれた。

なにしろ2017年1月に発足したD・トランプ共和党政権は、歴代アメリカ政府の「親中」政策を全面的に見直し、台湾との関係強化を推進しているのだ。

アメリカと中国共産党政府(中華人民共和国)、台湾(中華民国)との関係は複雑だ。東西冷戦下、ソ連の脅威に対抗するため、アメリカのR・ニクソン大統領は、中国共産党政府を西側諸国に引き込もうと、1971年に訪中を表明(「ニクソン・ショック」と呼ぶ)。

そして1979年、アメリカは中国共産党政府を「中国を代表する国家」として承認し、台湾との国交はなくなった。これが現在の中国の台頭へとつながっていく。

このとき、アメリカは「台湾関係法」を制定、有償で武器などを提供することで台湾との実質的な関係を維持しようとしたものの、国際的には中国を優遇してきた。他の西側諸国も次々に中国と国交を樹立し、台湾は国際的に孤立していく。

 

台湾との関係強化を急ぎ出したトランプ政権

ところが2016年11月、大統領に当選したトランプは、台湾との関係強化に奔走する。当選からわずか一カ月後の12月、トランプは台湾の蔡英文総統と電話会談を行い、その直後に成立した「2017年度国防授権法」で米台間の軍事交流について初めて明文化し、台湾海峡に米軍のミサイル駆逐艦を頻繁に派遣するようになった。

アジア太平洋地域の防衛を担当する「米インド太平洋軍司令部」がハワイに置かれているが、その司令部に、背広やアロハシャツで出入りしていた台湾軍人が制服を着用して入ることが許可されたのもこのころだと聞く。

翌2017年12月、トランプ政権として初めて公表した「国家安全保障戦略」(NSS)において、中国を「戦略的競争」相手と名指しで批判し、1979年以来38年間も続いた親中路線の転換を打ち出す一方で、オバマ民主党政権では言及されなくなっていた、台湾関係法に基づく台湾への武器供与を明記した。

そして同じ12月に成立した2018年度国防授権法で、米艦艇の台湾寄港、米軍の演習への台湾の招待、台湾への技術支援などを促進する条文を盛り込んだ。

翌2018年3月には、台湾旅行法が成立、米政府の全レベルの高官の訪台、台湾高官の訪米および米政府高官との交流を許可した。その二カ月後の五月には、台湾で米台国防フォーラムを初開催し、8月に成立した2019年度国防授権法では、台湾との防衛協力強化を明記した。

そして2019年6月、米国防総省が公表した『インド太平洋戦略報告書』において台湾を協力すべき「国家(country)」と表記した。事実上、台湾を独立国家と認定したわけだ。

北朝鮮「核」危機をめぐる米朝首脳会談ばかりが国際的に注目されているが、その陰に隠れて米台軍事同盟が密かに復活しつつあるのだ。

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