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ブラック企業でも耐えた「氷河期世代」の悲痛な叫び

2019年10月09日 公開

平岡陽明(ひらおかようめい:作家)


(撮影:森清)

作家、平岡陽明氏が発表した小説『ロス男』(講談社刊)は、1977年生まれの自身も属する氷河期世代=ロスジェネをテーマとした小説である。

バブル崩壊のツケを払わされた結果、就職難と悪待遇に苛まれ、世代間に取り残されたと言われる現在の40代前後。政府が40代への雇用支援に力を入れるなど救済策が展開されはじめたが、その明確な効果はまだ見えていない。

2013年には『松田さんの181日』で第93回オール讀物新人賞を受賞するなど活躍を続ける平岡氏が、改めて今、ロスジェネ世代の主人公を描いた理由とは何だったのか? そして当事者たちの本音とは?(聞き手:『Voice』編集部・水島隆介)

※本稿は月刊誌『Voice』(11月号)掲載の「著者に聞く 平岡陽明『ロス男』」より抜粋・編集したものです。

 

もはや手遅れで救いようのない現実

――1990年代後半から2000年代前半の「就職氷河期」に社会に出た世代の総称として用いられる「ロスジェネ」。本書は、40歳で未婚、正規雇用経験なしのフリーランスライターという、ロスジェネを象徴する主人公が、さまざまな人物との出会いを経て世界が変わり始める物語です。

ロスジェネに関しては、今年に入り安倍政権が「人生再設計第一世代」として救済措置を打ち出すなど、依然としてさまざまな議論が交わされています。平岡さんご自身もロスジェネの一人として(42歳、1977年生まれ)、そうした動きをどう感じますか。

【平岡】率直にいえば、いかなる議論も「もはや手遅れ」であると思います。

大企業などの「良い会社」に入り、経済的に恵まれて、合コンで異性からモテる――。いずれもとくに男性が自己肯定感を得るためには、大切な経験です。

だけどロスジェネはそうした経験が少ないまま、40歳を超えてしまい、いまさら挽回しようがない。それなのに「人生再設計」といわれても、空しいだけ。綺麗ごとにしか聞こえません。

トルストイは「幸せな家庭はどこも似ているが、不幸な家庭の事情はそれぞれ違う」と『アンナ・カレーニナ』の冒頭に書いていますが、ロスジェネには当てはまらない。

ロスジェネの多くは低賃金と悪待遇、そして異性愛から見放されるという「同じ理由」で苦しんできた。ゆえに希望も展望ももてない、という不幸もあります。

――結局は、ロスジェネに対して無関心、あるいは冷淡な態度が日本社会から垣間見えると。

【平岡】ただ、自分たちの「不遇」を認めてほしいわけでもない。そうではなくて、「自分が冴えないのは時代のせいだ」と自己弁護しそうになったとき、グッとその言葉を飲み込んで言い訳しなかった「心の努力」に、どうせならば目を向けてほしい。

だから、もう手遅れで、たいした救いもないという現実から目を背けて、「あなたたちの人生を再設計してあげますよ」といわれても、「そういうことじゃないんだよな……」としか言いようがない。

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