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「文政権の南北統一論は幻想」 前統合幕僚長と国際政治学者が指摘

2019年11月12日 公開
2022年07月08日 更新

河野克俊(第五代統合幕僚長)&村田晃嗣(同志社大学法学部教授)

反日と南北統一論は両立しない

村田晃嗣

【村田】 GSOMIAは対北朝鮮の枠組みであると同時に、日米、米韓の同盟関係は対中国の意味もあります。日米韓の連携が揺らぐことで、北東アジアにおける中国の影響力拡大を招くといわざるをえません。

【河野】 実際、今年7には、中露軍機が竹島空域に侵入し、韓国軍が警告射撃する事態も発生しました。日韓の亀裂に中露が付け込んだかたちです。

日本は固有の領土である竹島を係争地とは考えていません。しかし中露は、韓国が領有権を主張している同域を侵犯して、日韓がどう反応するのかを試してきたのです。

そもそも韓国が「北朝鮮は脅威ではない」と捉えているとするならば、GSOMIA破棄は当然の帰結ともいえます。

いったい韓国は北朝鮮の脅威をどう認識しているのか。日本はその点を曖昧にせず、しっかり向き合うべきです。

もっとも、文大統領は「2045年までに南北朝鮮の統一をめざす」と公言しており、あらためて問うまでもない状況ですが。

【村田】 ベルリンの壁崩壊からちょうど30年が経ったドイツの東西統一と比較すると、当時の東ドイツは東欧のなかではいちばんの経済優等国でした。

それでも、統一には莫大な経済的コストがかかった。ドイツ統一が実現したのは、欧州諸国の支えがあったからです。

北朝鮮の経済力に鑑みれば、南北統一にはドイツ統一とは比べものにならないほどのコストがかかるのは明白です。

韓国が民族の悲願として統一を本気で考えるのであれば、いくら日本を嫌悪しているからといって、その協力なしでは成し遂げられない。反日姿勢を強める文政権の南北統一論はたんなる幻想にすぎないといえます。

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