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世界が震撼したソレイマニ氏殺害、米・イランの緊張はまだ続く

2020年02月14日 公開

杉田弘毅(共同通信特別編集委員)

ちぐはぐな殺害

ソレイマニ司令官の殺害は、トランプ氏のイラン政策の欠陥を露呈した。

まず、そのちぐはぐさだ。ドーハ・フォーラムへの米代表団派遣が象徴するように、そもそも2020年は、カタールなど親イラン国を使ってイランに核合意改定版を提案する狙いだったのではないか。

イラン外交に積極的な日本もそのチャンネルかもしれない。だが、司令官殺害はそうした可能性を潰してしまう。

昨年12月末からイラクのシーア派組織と米軍の小競り合いがエスカレートするなかで、トランプ氏は司令官殺害をいったんは却下したという。しかし、バグダッドの米大使館が親イラン派のデモ隊に襲撃される様子を見て「最も極端な選択肢」である殺害を命じた。

6月のイランによる米軍無人機撃墜や9月のサウジの石油施設攻撃に対してトランプ氏が報復しなかったことで「弱腰」批判が高まり、そろそろ手を打たないと、という焦りがあったと推測できる。

大使館襲撃に手をこまねいていたのは、カーター大統領が結局再選に失敗する打撃を受けた1979年のイラン・テヘランの大使館人質事件や、駐リビア米大使が死亡しヒラリー・クリントン国務長官が厳しく批判された2012年のリビア・ベンガジの領事館襲撃事件を想起させることも理由だろう。

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