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ウイルス拡散の温床?…中国の寿司屋で見た「日本人には考えられない衛生意識」



2020年02月26日 公開

西谷格(ノンフィクションライター)

 

手を洗わず寿司を握る

面接を経て、採用された寿司屋は上海市内に10数店舗を構えるチェーン店。自宅から地下鉄で30分程度で通勤できる店舗に配属された。働きやすいように配慮してくれたのだ。ありがたい。

翌朝、始業10分前にショッピングセンター内の店の前へ行ったが、ガラス張りのドアはカギがかかっており、周囲には誰もいない。おかしいと思ったが、少し時間を潰して10時ちょうどにもう一度店に行くと、同僚と思しき面々が通路脇のベンチに座ってケータイをいじりながらくつろいでいた。誰も動こうとしていない。

10時5分。ようやくカギを持ったスタッフが現われ、店の扉が開き始業開始となった。中国人は全般的に時間感覚がユルいので、この程度の遅れは遅れのうちに入らないのだろう。

メンバーたちが集まっても「おはようございます」などの挨拶は一切なく、全員がノソノソと緩慢な動きで制服に着替え始める。マッタリしているので気楽だが、日本の飲食店のようなキビキビ感は皆無だ。

寿司職人の制服というとパリッと糊の効いた白衣というイメージだが、この店でリーダーから「はい」と渡されたのは、真っ黒いヨレヨレの甚兵衛。黒いので汚れは目立たないが、清潔感は乏しい。しばらく洗濯していないような感じもしたが、よくわからない。

甚兵衛を私服のTシャツの上から羽織って小ぶりの前掛けをしめ、帽子をかぶって着替えは完了した。

スタッフは20歳前後の若者ばかりで、30過ぎの私はおっさん扱いされるんじゃないか、ハブられるんじゃないかと少々心配だったが、みんな年齢差を気にせずフランクに接してくれて、意外と溶け込みやすかった。そのへんの感覚は、欧米人に近いのかもしれない。

中国語には敬語表現も英語と同程度にしか存在しないため、社会全体が日本よりもフランクだと言える。年齢による上下関係は、日本ほど細かくはない。

店内は教室2つ分ほどの広さで、テーブル席が30席ほど並んでいる。ホールとキッチンはそれぞれ5~6人、洗い場は中高年女性2人が受け持っていた。ホールは全員女性で、キッチンは全員男性だった。

日本の飲食店では食中毒防止のため、キッチンに入る前に手洗いやアルコール消毒を行うのが鉄則だが、この店では手洗いの習慣は特にナシ。

始業前だけでなく、トイレから戻って来た時も手は洗わず、そのまま素手で寿司を握っていた。唯一手洗いの場面を見たのは、丸ごと一匹のサーモンを解体して、両手がヌルヌルになっていた時。客に清潔な料理を出すために手を洗うのではなく、単に自分の手がヌルついて嫌だから洗っていたのだ。

愛知大学の高橋五郎教授の著書『日中食品汚染』によると、こうした「当たり前のこと」をルール化しなくてはいけないのが、中国の食品加工現場の実情だという。

・蚊、ネズミ、ハエ、ゴキブリの侵入を防ぎ、害虫駆除を行うこと
・作業衣は明るい色とし、帽子を着用、髪はとかし、マスクを着用、マニキュアは禁止
・トイレ後は手を消毒し、トイレの際は作業衣、帽子を脱ぐこと
・食堂は禁煙とし、加工食品に向け咳、くしゃみをしないこと
・爪、髪を清潔にし、入浴し、衣類は洗濯し、工場内で痰を吐かないこと
・ゴミのポイ捨ては禁止する

同書によると、ある食品工場の内部規則としてこのようなものがあるという。そして高橋教授は解説する。

「どれも当たり前のことで、わざわざ規定として書くようなことではない。だが従業員のほとんどは、農村から出稼ぎにきた若い男女である。(中略)最近は農村の生活水準も上がり、衛生観念や清潔感などは格段の向上が見られるものの、日本人の常識がそのまま当てはまるところまでには至っていない」

やはり中国人の衛生観念は、日本人とは異なるのだ。

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