Voice » 政治・外交 » 橋下徹「政府は“要請”ではなく“命令”する代わりに、補償をせよ」

橋下徹「政府は“要請”ではなく“命令”する代わりに、補償をせよ」

2020年04月14日 公開
2023年07月12日 更新

橋下徹(元大阪府知事/弁護士)

「命令」する代わりに補償せよ

――3月13日に新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案が成立し、 4月7日には緊急事態宣言が発令されました。感染拡大を防ぐために、都道府県知事が一部において強制的な措置を講ずることが可能となります。「要請」から「命令」へという橋下さんの問題意識において、この対応は評価できるでしょうか。

【橋下】この特措法は私権を制限する強力な法律なので、適用は慎重であるべきという世間の論調が強かったですね。安倍さんもなかなか緊急事態を宣言しませんでした。

しかし、緊急事態宣言の前から行なわれている首相や知事からのイベント自粛や一斉休校の要請、外出自粛の要請は、すでにこの法律が想定している以上の強権発動なんです。

特措法に基づく知事からのイベント自粛や外出自粛、学校の休校もあくまで「要請」であり、国民が従わなくても罰則の適用はありません。その点は緊急事態宣言をする前の首相や知事からの要請と同じです。

他方、特措法で知事が要請する場合には、区域や自粛期間、イベントや営業自粛を要請する施設の規模などを明確化しなければならないことになっています。

ところが、緊急事態宣言前の法に基づかない首相や知事からの要請は、区域も期間も規模も何の基準もない。

要請と言いながら、日本全体の経済活動がフリーズしてしまっています。法律の根拠に基づいていないので、こんな状態になってしまったのです。

このように特措法を適用するよりも、特措法を適用しない曖昧な首相や知事からの要請のほうがはるかに強力なものであり、直ちに法律に基づく要請に正さなければなりませんでした。

そういう意味では、緊急事態宣言を行なってこれからは法に基づく要請になるので、一定程度前進したと言えますが、それでもあくまでも「要請」のレベル。

「要請」なので、それに従って営業を自粛した事業主には何の補償もありません。政府や自治体は「要請」をしただけであって、それに従うかどうかはあくまでも民間事業主の判断ですから、という建前です。

ここが、この法律の最大の欠陥です。政府や自治体は「要請」と言いながら、実際は「命令」なんですよね。でも形式的には「要請」なので、補償はしない。まあ、ほんと官僚たちが悪知恵を駆使して作った法律ですが、最後にそれで決定したのは国会議員ですから、すべては国会議員の責任です。

やはり、営業禁止の命令をする代わりに、一定の補償はしっかりと行うという法律にすべきですね。補償があるから民間も営業を止めることができる。

補償がなければ、なかなかすっぱりと営業は止められず、結局感染拡大を招いてしまうか、営業を止めて廃業してしまうか。いずれにしても最悪です。

次のページ
改憲で問われる、安倍政権の「交渉力」 >

Voice 購入

2024年5月号

Voice 2024年5月号

発売日:2024年04月06日
価格(税込):880円

関連記事

編集部のおすすめ

橋下徹「政策はぶれて当たり前」

橋下徹(元大阪府知事/弁護士)
×