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なぜ自衛隊員にコロナ感染者が発生しなかったのか? 統合幕僚長が語るその“勝因”



2020年06月13日 公開

山崎幸二(第六代統合幕僚長)

「ダイヤモンド・プリンセス号」船内で活動する自衛隊員(写真提供:防衛省)
「ダイヤモンド・プリンセス号」船内で活動する自衛隊員(写真提供:防衛省)

《新型コロナウイルスは米軍やフランス軍の空母で感染者が続出するなど、軍事分野においても猛威を振るっている。

一方、自衛隊は「ダイヤモンド・プリンセス号」での対応で派遣隊員から一人も感染者を出すことなく任務を完遂した。

その「勝因」は何なのか。未曾有の危機をいかに乗り越えるのか。自衛隊制服組トップである山崎幸二統合幕僚長に、自衛隊の底力について聞いた(聞き手:『Voice』編集部・中西史也)》

※本稿は月刊誌『Voice』2020年7月号、山崎幸二氏の「『未知なる脅威』から国民を守る」より一部抜粋・編集したものです。

 

地下鉄サリン事件、東日本大震災の経験を活かして

――新型コロナウイルスへの対応に世界中が苦慮しています。わが国の平和と安全を守る自衛隊として、この事態をどう受け止めていますか。

(山崎)国家の危機であることは間違いありません。この難局に立ち、防衛省・自衛隊のみならず、関係省庁が総力を挙げて対応する必要がある。政府による方針の下、関係省庁及び地方自治体と緊密に連携し、自衛隊の能力を最大限に発揮して対応せねばなりません。

たとえば、今年1月31日~3月16日までのあいだ、中国・武漢からのチャーター機で帰国した邦人や横浜に入港したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」においては、感染対応のための災害派遣活動を行ないました。

予備自衛官を含む延べ約4,900名の隊員をもって、医官等による回診や問診票の回収、クルーズ船内の消毒、陽性者の輸送支援などを実施しました。

3月28日からは海外からの帰国者・入国者を対象とする水際対策強化のため、国内の主要な国際空港で検疫や輸送、宿泊施設における生活支援などを実施しています。

4月3日以降は市中における感染拡大防止のため、PCR検査で陽性反応が出た患者の空輸や宿泊施設への輸送支援、同検査のための検体採取支援、さらには感染防護の教育支援などを実施しています。

特徴としては、地方自治体の職員や医療関係者、宿泊施設、タクシーなどの民間事業者に対する感染防護の教育支援ニーズが高かったことです。教育支援では、実技も含め約1,470名の方に「ダイヤモンド・プリンセス号」における自衛隊の活動や防護基準、教訓を紹介しました(5月21日時点)。

――「ダイヤモンド・プリンセス号」への対応では、派遣隊員から一人も感染者を出すことなく任務を完遂しました。「勝因」は何でしょうか。

(山崎)第一に、防衛省・自衛隊が組織力を発揮できた点が挙げられるのではないでしょうか。船内で起きている状況を迅速かつ的確に把握したうえで、計画を作成、実行できました。

第二に、隊員一人ひとりが責任感と使命感をもち、防護のための基本動作を愚直に実践してくれたこと。

第三に、指揮官が現場で明確な指示・命令を出し、強いリーダーシップを発揮してくれたことです。

今般の感染症対応の災害派遣は、自衛隊創設以来、まさしく未曾有の経験でした。他方、1995年に地下鉄サリン事件、2011年には福島第一原子力発電所事故において、それぞれ化学物質と放射線汚染下での災害派遣を行なっています。

これらは「見えない敵」との戦いである点で、新型コロナへの対応と共通しています。さらにいえば、部隊は平素からNBC(放射能、生物、化学)防護の訓練をしていたため、その恐ろしさや感染防護における基礎動作の重要性を認識していました。

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