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新型コロナで傷ついた日本経済…回復に必要なのは「検査の拡充」



2020年07月02日 公開

小黒一正(法政大学経済学部教授)

小黒一正(法政大学経済学部教授)

緊急事態宣言が解除され、われわれは日常生活を取り戻しつつある。しかし、再流行が起きたときに再度四月と同じような自粛生活に戻れば、経済損失は計り知れない。

すでに、新型コロナの影響により巨額の経済損失が発生すると指摘されている。では、再流行に備え、われわれがすべき経済施策は何なのか。「衆議院議員選挙」制度を模範した検査拡充の必要性など、経済正常化のための具体的な施策を提案した(聞き手:『Voice』編集部)。

※本稿は月刊誌『Voice』2020年7月号、「検査拡充が『経済正常化』の鍵」より一部抜粋・編集したものです。

 

命か経済かの二項対立では解決しない

新型コロナウイルスの感染拡大はわれわれの社会に深刻な影響を及ぼしている。このため、先般、京都大学准教授の関山健氏と筆者らは専用サイトを構築し、この問題の「出口戦略」に関する緊急提言を発表した。緊急提言の主なメッセージは次のようなものだ。

まず、政府が実現をめざす1日2万件の検査では、感染拡大の抑制も真の経済回復も果たせない。

次のステップに進むためにもっとも重要なのは、全国民が、希望すれば新型コロナウイルスの感染の状況を定期的(2週間に1回程度)に知ることができ、継続的に陰性の人びとは安心して外出や仕事を再開できるような体制を、遅くとも半年以内につくることである、というものだ。

周知のとおり、新型コロナウイルスは、2つのルートで人命を脅威に晒す。1つは重症化による死、そしてもう1つは外出制限や営業自粛の長期化による経済的死だ。

しかしながら、人びとの移動制限を徹底すると経済が甚大な損失を被り、制限を緩めると感染が拡大し人びとの命が奪われる、という構図に陥ってしまう。このような状況のなか、いま日本社会は二つの立場や対立に引き裂かれつつある。すなわち、命を重視する立場と、経済を重視する立場である。

そもそも、新型コロナウイルスの感染症対策のあり方については、海外や国内にもさまざまな議論があり、現時点でその結果を評価するのは早計で、おそらく結果論的に歴史が評価するしかない。

しかし、「命」や「経済」の視点から一つの参考になるのは、アメリカFRB(連邦準備理事会)のエコノミストであるセルジオ・コレイア氏らの1918年スペイン風邪に関する論文だ。

この論文の分析によると、当時のパンデミックは製造業の産出量を18%も減少させたものの、より早い段階かつ長期の非薬物的介入(例:外出制限や社会的距離)を実施した都市のほうが、そうでない都市と比較して、死亡率(人口10万人当たりの1918年の死亡者数)も低いとともに、その後の雇用の伸び(1914年から1919年の製造業)が高い傾向を明らかにしている。

われわれが闘う敵はウイルスであり、「『命』を守るか、『経済』を守るか」という観念的な二項対立を続けていても、この問題を解決することはできない。

緊急事態宣言は解除されたものの、感染が再び拡大し、医療崩壊を防ぐために自粛が再開される可能性もある。

新型コロナウイルス対策の「出口」とは、「命」か「経済」かの二項対立ではなく、徹底した検査により、人びとが安心して消費、教育、運動、レジャーなどの社会生活を送れるようになる「命も経済も守る出口戦略」である。その鍵を握るのが検査の拡充だ。以下、簡単に説明しよう。

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