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「WOWOWは井の中の蛙だった」WOWOW社長が語る反省と“偏愛”

2021年04月19日 公開

田中晃(WOWOW代表取締役社長執行役員)

田中晃(WOWOW代表取締役社長執行役員)
写真:吉田和本

外資系の動画配信事業が熾烈を極める昨今、国産の放送局はいかに立ち向かうのか。そしていかなるコンテンツを視聴者に届けるのか。日本のスポーツ中継の立役者であり、WOWOWのコンテンツを率いる田中社長が語る危機感と覚悟とは――。

本稿ではWOWOW社長・田中晃氏がコロナ禍の今こそ、今までの一方通行的なサービスだけではなく、「だれかと共有する喜び」に焦点を当てたサービスの重要性を熱く語っている一説を紹介する。(聞き手:Voice編集部・中西史也)

※本稿は『Voice』2021年4⽉号より⼀部抜粋・編集したものです。

 

「ゆでガエル」の状態だった

――WOWOWは今年2021年で開局30周年を迎えます。田中社長は年頭訓示で「劇的な変革」の必要性を訴えていますが、この強い言葉の裏にはどんな思いがあるのでしょうか。

【田中】何としても変わらなければならない、という危機感と意思表明にほかなりません。WOWOWは日本初の有料放送を行なう民間の衛星放送局として、開局以来、日本社会に新たな価値を提供し続けてきたと自負しています。

映画館やレンタルショップに足を運ばずにハリウッド映画を観られたり、国内外のスポーツや音楽のイベントをライブで楽しめたりできる。当初は画期的な試みとして、世間の皆さまに受け入れていただきました。

しかし、いつの間にか有料放送のフロントランナーの座に胡坐をかき、外からの変化に対応しきれなかった。まさに井の中の蛙であり、いつ命を落としてもおかしくない「ゆでガエル」だったといっても過言ではありませんでした。

そして近年、皆さんご存じのとおり、アマゾンプライムビデオやネットフリックスといった外資の動画配信サービスが存在感を高めています。これはたんなる"黒船"ではありません。

いまやデジタル革命によって、人びとの生活様式は大きく変化しており、人気の映像コンテンツをいつでもどこでもネットを通じて観られる時代です。

対する我々はといえば、コンテンツの質を維持すればよいと過信し、一方通行の放送会員事業に終始してきた。「変わる」という意識だけではなく、行動で示さなければいけない局面だと痛感しています。

――その危機感が、年頭訓示の「視聴に加えて参加・応援・体験というインタラクティブな繋がりを新しい価値に」という言葉に繋がるわけですね。

【田中】コンテンツをお客様に一方的に届けるのではなく、「コミュニティづくり」や「インタラクティブ(双方向性)」が必要ではないか。そう考え、1月13日から「WOWOWオンデマンド」を始動しました。

このサービスにより、スマホやPC、タブレットからでもWOWOWにご加入いただけるようになりました。放送の同時配信だけではなく、アーカイブも視聴可能です。

しかし、「WOWOWオンデマンド」を開設した意図はそれにとどまりません。昨今、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が叫ばれていますが、重要なのは発想そのもののデジタル化です。

現在高まっているニーズは喜びや感動を誰かと共有することであり、インタラクティブな関係です。SNSをみれば、その傾向がよくわかります。「WOWOWオンデマンド」とは、我々がめざすインタラクティブを体現するツールでもあるのです。

――具体的にどういう取り組みを行なっていますか。

【田中】たとえば今年1~2月の全豪オープンテニスから始めた『WOWOWテニスワールド』のサイトでは、まるでメルボルンの会場にいるような楽しさをオンラインで味わっていただきました。

見事に優勝を果たした大坂なおみ選手が登場した日は、試合前に解説者の試合予想イベントに参加し、練習風景を生で観ながらお客様同士が会話し、試合を観ながらのチャットも盛り上がりました。

終了後はプレス限定の記者会見場を覗いて、チャットルームで感想を語り合ったり、最後にショップで公式グッズを購入できたり、いままでにない体験を楽しんでいただきました。テニス中継のノウハウを蓄積し続けてきた我々だからこそ、競技の魅力を詰め込んだコミュニティがつくれると確信しています。

もう一つ注目してもらいたいのが、今年からスタートした『電波少年W~あなたのテレビの記憶を集めた~い!~』です。『進め!電波少年』は、日本テレビの土屋敏男プロデューサーが手掛けた伝説のバラエティ番組として記憶している方も多いと思います。

WOWOWの『電波少年W』ではコミュニティにお客さんを集め、その声を聞きながら往年の番組の記憶を掘り起こす企画です。「学生時代に観たあのシーンをもう一度観たい」「あの噂は本当だったのか確かめたい」といった視聴者の要望を実現するために、コミュニティが主体となって番組をつくり上げていく。

この企画を続けていけば、視聴者の思い出が詰まった、「超私的」なテレビ年鑑が生まれることでしょう。作品の付録としてコミュニティがあるのではなく、コミュニティがあるからこそ作品が成立する時代なのだと捉えています。

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