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インパール作戦の激戦地で見えてきた「インド独立と日本軍」の深い関係

2021年10月20日 公開

岡部伸(産経新聞論説委員、前ロンドン支局長)

岡部伸
佐藤幸徳中将がコヒマ攻略戦で居を構えた民家

16万人もの死者を出し、「無謀な作戦」の代名詞として現代に語り継がれているインパール作戦――。その戦地を訪れてみると、日本軍とともに、インド独立のためにイギリス軍と戦ったチャンドラ・ボースの知られざる足跡が見えてきた。

※本稿は、岡部伸著『第二次大戦、諜報戦秘史』(PHP新書)を一部抜粋・編集したものです。

 

日本軍への協力を訴えたボース

インパール作戦は、太平洋戦線で劣勢に立たされた日本陸軍が、緒戦で占領したビルマを防衛し、中国・蔣介石政権に対する連合軍の補給路(援蔣ルート)を遮断する目的で行なわれた。第15軍の指揮下にあった3個師団がインパールとその補給拠点コヒマ攻略をめざしたが、多くの死者を出し、作戦は失敗に終わった。

しかし、激戦地となったインパールとコヒマなどでは、地元の若い世代を中心に、約10年前から「民族の歴史を後世に正しく伝えよう」(マニプール観光協会のハオバム・ジョイレンバ事務局長)と歴史の見直しが進んでいる。

身元不明の遺骨や遺品の発掘、戦争経験者の証言収集などが進み、インパール南西約20キロメートルの「レッドヒル」と呼ばれる小高い丘の麓に、日本財団が支援して平和資料館が完成。日英の駐インド大使らが出席して2019年6月22日、開館式が行なわれた。これに合わせて約一週間、筆者はインパールとコヒマの周辺を訪問する機会に恵まれたのである。

今回の訪問で、あらためてわかったことがある。祖国インドを英国支配から解放するため、日本軍とともにINAを率いて戦ったボースが、コヒマ近くの最前線まで潜入し、自由を獲得するため、「同じアジア人の日本軍に協力して助けよう」と住民に直接、語りかけていたことである。

ボースが滞在した村では、「インド独立が生まれた聖地」として世界文化遺産登録の動きが進んでいた。インパール作戦は無残な失敗に終わったが、日本が支援したボースの積極的な武力闘争が、植民地支配からの解放に導いたことが裏づけられた気がした。

 

日本人とナガ民族は兄弟だ

インド東端、ミャンマーに接するマニプール州の州都であるインパールは、イギリス統治時代から軍事上の要衝だが、米作地帯の中心でもあり、インパール川のほとりに広がる水田の美しさに目を奪われた。標高786メートルの高地にある大きな盆地のなかに街がある。

日本軍は、海抜100メートルほどのミャンマー側から1500メートル近い山岳地を越え、インパールの盆地に入ったのだ。30を超える多様な民族が共存し、キリスト教徒を中心にイスラム教徒もいて、街には多様性があふれていた。

4WDの車でインパールからコヒマに向けて、約5時間走った。イギリス軍が補給のために造成した道路は、現在も舗装されておらず、何度も頭を車の天井にぶつける片側通行の悪路だった。沿道には、自動小銃をもち迷彩服を着たインド軍兵士がパトロールし、兵士常駐の検問所もあった。

ミャンマーや中国、バングラデシュと国境を接するインド北東部は、インド全体から見ると、民族も歴史も異なる。ナガランド州など計8州には、400を超す少数民族を中心に約5000万人が住んでいる。15の部族からなるナガ民族は、独自の文化や風習を守ってきた。

しかし、イギリスがインドを植民地とした1877年以降、インドに統合されることになり、1880年からイギリスに長く支配された。

第二次世界大戦後の1947年、インド独立直前に一時的に自治権を回復したが、その2年後、再びインドに併合された。1956年までインド政府と独立をめぐって内戦を展開し、現在も自治権をめぐり激しい反体制運動が繰り広げられている。インドの歴代政府も、治安維持を理由に外部との接触を禁じ、近年まで日本人を含む外国人の入境が厳しく規制されていた。

筆者が訪れたコヒマは、標高約1500メートル、人口11万5000人の高山都市だ。雲の上の山の斜面に住宅が建ち並ぶような光景に驚く。われわれ一行を出迎えてくれたナガ民族は、「日本人とナガ民族は兄弟だ」と親近感をもっていた。

たしかに顔立ちや身体つきがわれわれ日本人とどこか似ている。これはナガ民族が、一般的なインド人に多い肌黒いアーリア系ではなく、アジア系のモンゴロイドだからであろう(宗教はキリスト教である)。

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