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行き過ぎた個人主義がアメリカを狂わせた...500年の歴史に潜む「陰謀論との因縁」

2021年12月28日 公開

カート・アンダーセン(作家)

 

人びとの不安が陰謀論を生み出す

――先が見通せない不確かな時代であることも、こうした陰謀論が出てくる要因になっているのでしょうか。

【アンダーセン】不確かさというよりも、人びとの抱える不安のほうが大きな要因でしょうね。先のことがわからないのはどの時代も同じです。陰謀論が生まれるのは、経済不安など、人びとの不安にインターネットが結びついたときだと思います。

また、その陰謀論の内容も、ここ20年ほどは右翼的なものに偏っている印象を受けます。左右を問わずさまざまな陰謀論があった、1960年代から80年代までとは対照的です。

一方、20世紀全体を通じてみた場合、アメリカの陰謀論がもっとも焦点を当てていたのは共産主義でした。当時の全体主義的な悪者と、自由主義を掲げた正義のアメリカといった二項対立であれば、世界はかなりわかりやすく説明がつきました。

しかし、ソ連が崩壊して、中国がある意味で"普通の国"になると、アメリカもそれらの国々と経済的な同盟を組むようになった。そうすると、悪者が誰かわからなくなり、世界の仕組みがみえなくなってしまう。

そこで人びとはより世界をわかりやすくするために、一つの敵に焦点を絞ろうと、エリートによる陰謀が存在するという考えをもつようになりました。みなさんのなかにも「新世界秩序」という言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。

これは1991年に刊行されたパット・ロバートソンのベストセラー“The New World Order(新世界秩序)”のタイトルにもなりました。巨大な権力が主権国家の枠を超えた世界構想をつくりあげ、我々を支配しようとしている――。そういった陰謀論です。この「新世界秩序」の存在が、多くのアメリカ人に影響を与えたのはいうまでもありません。

 

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