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オミクロン株は本当に「最後の変異株」なのか

2022年02月15日 公開

國井修(グローバルファンド戦略・投資・効果局長)

國井修(グローバルファンド戦略・投資・効果局長)

依然として続く新型コロナウイルスのパンデミック。感染力の強いオミクロン株は「最後の変異株」なのか。グローバルファンド〈世界エイズ・結核・マラリア対策基金〉戦略・投資・効果局長を務める公衆衛生の専門家が分析する。

※本稿は『Voice』2022年3⽉号より抜粋・編集したものです。

 

オミクロン株の実態

オミクロン株に関するデータが世界から集まり始め、その全容が少しずつ見えつつある。まず、この変異株はデルタ株と比べて、感染者の入院リスクはかなり低く、約3~4分の1、死亡リスクは約10分の1との報告もある。

症状も軽度で、せき、鼻水・鼻づまり、のどの痛みなど、いわゆる「かぜ症状」がほとんどだ。潜伏期は約3日で、従来の約5日より短く、感染力の強さと潜伏期の短さで、急峻な流行曲線を描いている。

おそらく、下気道で増殖しやすい従来型(そのため肺炎や重症になりやすい)に比べ、オミクロン株は上気道で増殖しやすい(そのため鼻水やのどの痛みなどが多い)ために、飛沫感染もしやすく、会話などを通じて家族内など濃厚接触者への感染も多いと考えられている。

ただしオミクロン株が厄介なのは、ワクチン接種済みや既感染の人にも感染させることである。ノルウェーで発生したオミクロン株への集団感染(2021年11月末)では、感染者の98%がワクチン接種完了者で、デンマークからの報告でも、オミクロン株感染者の76%がワクチン接種済みであった。

重要なのは、ワクチン接種によって重症化を減らすことができるという事実である。イギリスからの報告では、ワクチン未接種者と比べて、オミクロン株感染者の入院リスクは2回接種者で65%減少、3回接種者で81%減少するという。

感染者数の増加に伴い入院が増え、医療機関に負担をかけている国も出ているが、重症化した患者にはワクチン未接種者が多く、その90%がワクチン未接種という報告もある。

ワクチン接種によって産生した抗体がオミクロン株の感染を防御できなくとも、抗体以外の免疫系(T細胞など)がウイルスに感染した細胞を攻撃してその増殖を抑え、重症化を防いでいる可能性が研究によって示されている。

とはいえデルタ株はもちろん、オミクロン株でも重症化し死亡するケースもあるため、ワクチン接種は推奨されているのである。オーストリアでは18歳以上、イタリアでは50歳以上、ギリシャでは60歳以上のワクチン接種義務化が実施または予定されている。

公務員やエッセンシャルワーカーにワクチン接種を義務付ける国や企業も増えている。それに従わない場合、罰金や給与支払い停止、解雇などの措置を進める国や企業もあり、ワクチン未接種者に対する嫌悪感を示す政治家も少なくない。

マクロン仏大統領は「未接種者をどうやって減らしていくか。それには彼らがむかつくようなことをやりたい」「無責任な人はもはや国民とは呼べない」などと語り、批判が集まった。

たとえ重症化しなくとも、欧州ではオミクロン株の感染拡大により医療従事者の欠勤が増え、患者数の増加と相まって医療機関は逼迫している。これに対して、検査で陽性が判明しても無症状の医療従事者には隔離期間を5日に短縮して職場に戻すなどの策を講じる国もある。

また医療従事者のみならず、他のエッセンシャルワーカーへの感染急増も問題化している。フランスでは子どもの感染が急増し、教員も感染者や濃厚接触者となり休職が増加したことで2022年1月13日、新型コロナ対策に関する政府の方針や説明を不満として、教職員が大規模なストライキを行なった。さらに消防士や救急救命士、警察官にも感染が広がり、国民の安全・安心が脅かされている地域もある。

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