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生き方

恋人がいれば不安は消えるはず...恋愛依存に陥る人の“虚しい期待”

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

2023年04月19日 公開 2024年12月16日 更新

「良い人だと思ったのに...」「恋人との関係が長続きしない」など、なぜかいつも恋愛がうまくいかないと悩む人も少なくないはず。

心理学者の加藤諦三氏は、どのような人間関係であっても、他者の行動が原因ではなく"自身の心"に問題がある場合が多いと指摘する。他者と安定した関係を築くためのコツを聞いた。

※本稿は、加藤諦三著『なぜか恋愛がうまくいかない人の心理学』より、一部抜粋・編集したものです。

 

始まり方が悪い恋愛は破綻しやすい

恋が実ったようで実っていない。そういった恋がある。それは始まりに原因がある。

「会社の上司を私のほうから追いかけて、1年半交際した後に結婚した」奥さんである。だが、夫の愛人問題で今は苦しんでいる。

この奥さんは結婚できたときに「恋が実った」と思ったのが錯覚で、実は実っていない。

「主人はその女性と別れたと言いながら実はまだつきあっている」

その愛人も会社の女性。彼女が夫に「愛人とまだつきあっているでしょう」と言うと、「送っていってくれと言うものだから仕方なくて」と言い訳をする。

夫は自分が受け身であることを主張して、責任を逃れようとする。

「こんな男を何で追いかけたのだ?」と聞くと、「つきあい出したときに私は淋しかったもので、家にいろいろとあって、家を出たくて、そんなときに優しくしてくれて、どこかに連れていってと言ったら7時間一緒にいてくれた」と昔を懐かしむ。

つまりこの恋愛関係が破滅になってしまうのは、そもそもの始まりに原因がある。彼女は淋しかったから彼とつきあい出した。家を出たくて彼とつきあい出した。そこに今の恋愛関係破綻の原因がある。

もし彼女が家を出たくて、家を出て1人で暮らしているときに恋愛を始めたのなら、このような恋愛破綻にならなかったかもしれない。

それは家を出るということで、そのときの心の葛藤を自分1人で解決しようとしているからである。

彼女の場合、この恋愛は自分の心の葛藤を解決するための恋愛だった。そこに恋愛関係の破綻の原因がある。

 

誰かを愛するために必要なこと

恋愛関係ばかりでなく、どのような人間関係であっても、自分の心の葛藤を関係の中に持ち込み、その関係の中で解決しようとするときに、その関係は破綻する。

例えば深刻な劣等感のある人がいる。その人が、皆から素敵と言われる人と恋愛をしようとする。これが自分の心の葛藤を恋愛で解決しようとしているということである。

彼女の恋は自分が安心するための恋愛である。不安を動機とした恋愛である。欠乏動機からの恋愛である。

こういう場合、そのときだけを取ると恋は実ったように見える。しかし決して本当には実らない。表面的に恋が実っているようでも、本質的に実っていない。必ずすぐに破綻が来る。

ドイツの心理学者であるエーリッヒ・フロムは、著書『愛するということ』の中で、「純粋な本来の愛は生産性の表現であり、配慮、尊敬、責任、知識を意味している」と語っている。

つまり生産的な心構えのない人に愛はない。生産的な生き方をしている人にしてはじめて人を愛せるのである。

さらに、フロムは同書の中で、「誰かを愛するということは、自らの愛する力を実現することであり、集中することである」とも記している。

恋愛には欠乏動機からの恋愛と、成長動機からの恋愛がある。この2つの恋愛を区別しない人は、心を見ない人である。

「良い子」が社会的事件を起こすと、「なぜあの『良い子』が?」という新聞記事と同じことである。その子は恐怖感から「良い子」を演じているだけである。

欠乏動機からの恋愛は、依存症的恋愛関係になることが多い。

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「熱しやすくて冷めやすい人」は恋愛で苦労する

著者紹介

加藤諦三(かとう・たいぞう)

早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員

1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

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