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生き方

一人は寂しいのに、誰かといても孤独なのはなぜか?

枡野俊明(禅寺の住職、大学教授、庭園デザイナー)

2023年05月17日 公開 2024年12月16日 更新

 

誰かといても孤独を感じるのはなぜ

友人や仲間たちと一緒にいても、なぜか孤独を感じることがあります。表面的にはわいわいと楽しんでいるのですが、どことなく居心地が悪かったりすることも時にはあります。また、どこか自分だけ疎外感を抱いていたりすることもあるでしょう。

実は孤独感というのは、物理的に一人でいる時よりも、誰かと一緒にいる時のほうが感じやすいものなのです。現実的に一人でいれば、寂しさや物足りなさを感じることはあるでしょうが、そこに孤独感は意外と生まれません。

それよりも大勢の中にいて、どうもその人たちと自分の間には心の壁がある。そう感じた時に孤独感は生まれてくるのです。たとえば、5人の友達と一緒にいる時に、自分だけが会話から取り残されている。みんなには共通の話題があるのですが、自分だけがその話題についていけない、という状態です。

そんな状況に置かれた時には、やはりそこには疎外感が生まれます。誰かと一緒にいるのに孤独を感じる原因は、自分だけが輪の中に入れないという疎外感にあるのでしょう。そんな時、何とかして疎外感から脱出しようと、無理やりに話を合わせようとします。

相手に合わせようとすることは、けっして悪いことではありません。お互いに合わせようとする気持ちがあればこそ、そこに心地いい人間関係は生まれてくるものです。しかし、無理をしてはいけないと思います。自分の気持ちに噓をついていても、やがて自分自身もしんどくなってきますし、相手もこちらが無理をしていることに気づくことになるでしょう。

また、こうした関係には往々にして強者と弱者の関係が生じます。強いほうの人間は、いつも自分を押し通そうとする。そして弱いほうの人間は、常に相手に合わせてばかり、という状況が生まれてきます。何が原因でこのような関係になるかは分かりませんが、世の中にはこのような関係がたくさんあるものです。

もし、今のあなたが弱者で、いつも相手に合わせてばかりいるとしたら。もしも相手に合わせることに疲れてしまっているのであれば、すぐに無理することを止めることです。相手に合わせなければ仲間外れにされる。みんなから疎外されて一人になってもいいではないですか。

自分に無理をしてまで保たなければならない関係などありません。そんな場所からはさっさと逃げてしまうこと。そして自分を素直に表現できる場所を探すことです。

 

昔からの友達であっても、考え方は変わる

仲間に合わすのはしんどいことですが、なかなかその関係から抜け出せないという人がいます。その原因はその人自身にあります。思いきれば抜け出すことができるのでしょうが、自分から進んでそれをしない。どうしてできないか。それは、その人間関係に執着しているからです。

冷静になって考えてみてください。いくら昔からの友達であっても、別々の道を歩んでいれば、お互いの考え方も変わってくるでしょう。昔は分かり合えていたことも、今ではすれちがうこともあるはずです。

それを昔からの友人だという理由だけで、互いに無理をして関係を続けようとすること。そこに楽しく温かな関係は生まれないでしょう。もしも合わせることを苦痛に感じたり、その仲間の中で疎外感を抱くことが あれば、一旦そこから離れることです。そして何年か経って、思い出すことがあればまた連絡を取ればいいのです。

一年も会わなかったら、その関係が終わってしまったとしても、それでもいいのではないでしょうか。所詮はそれだけの関係でしかなかったのですから。もしも誰かと一緒にいることで孤独を感じているのであれば、一緒にいることを止めることです。その人に執着することを止めることで、余計な孤独はなくなると思います。

 

【枡野俊明(ますの・しゅんみょう)】
曹洞宗徳雄山建功寺住職、庭園デザイナー、多摩美術大学名誉教授

1953年神奈川県生まれ。大学卒業後、大本山總持寺で修行。「禅の庭」の創作活動により、国内外から高い評価を得る。芸術選奨文部大臣新人賞を庭園デザイナーとして初受賞。ドイツ連邦共和国功労勲章功労十字小綬章を受章。2006年には『ニューズウィーク』日本版にて、「世界が尊敬する日本人100人」に選出される。庭園デザイナーとしての主な作品に、カナダ大使館庭園、セルリアンタワー東急ホテル日本庭園など。

 

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