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仕事

「良い企画なのに承認がもらえない」と悩む若手に、上司として伝えたい本音

内田和成(早稲田大学名誉教授)

2023年06月29日 公開

昨今、1on1ミーテイングを導入するなど、部下と上司の関係を円滑なものにしようとする動きが高まっている。しかしコミュニケーションの問題以前に、「業務を遂行する上で必要な情報が、社内で与えられた役割によって異なるので関係がこじれる」と早稲田大学名誉教授の内田和成氏は述べる。

効率的に仕事を進め、さらに職場の人間関係を円満に保つために「それぞれの仕事上の役割の違いを把握する」ことの重要性について解説する。

※本稿は内田和成著『アウトプット思考 1の情報から10の答えを導き出すプロの技術』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

マネジャーと一般社員ではそもそも「必要な情報」が違う

情報収集のスタイル、それは自分の「立ち位置(ポジション)」を意識することである。立ち位置とは自分の置かれている立場や状況を指すが、一番わかりやすいのは、その人の「仕事上の役割」ということになるだろう。

同じ目的を持っていたとしても、意思決定者と企画立案者では必要となる情報は違ってくるということだ。

具体的に言えば、企画立案者にとって大事なのは、「あ、これだ!」と気づくヒントだ。そのためにはデータとにらめっこするよりも、実際に商品が売られている現場に出て消費者の生の声を集めてみたり、SNSで話題になっているツイートを探してみたりするほうが有益なはずだ。

一方、意思決定者にとってはそれだけでは不十分で、それが本当に売れるかどうかを判断するための、ある程度定量的な情報が必要となる。

多くの会社で上司と部下のすれ違いが起こるのは、この「立ち位置(ポジション)」の違いが原因である。必要な情報のすり合わせができていない段階で、お互いに「これは売れます」「いや、売れない」などと押し問答をしたところで、結論は永久に出ない。

一方、お互いがお互いの立ち位置を考慮しておくと、コミュニケーションは非常に円滑になる。例えば、商品企画者がどうしても、「この商品を実現したい」と考えるなら、意思決定者がどんな情報を必要としているかを考えて、

「Aさんのような人は世の中に○○万人はいる」
「Aさんのような人は、数は少ないかもしれないが、お金に糸目をつけない優良なターゲットである」

というような「意思決定の助けとなる」情報を集め、理由とともにそれを示せばいいのだ。

 

プロフェッショナルは常に「期待役割」を意識する

前項では、自分の「立ち位置(ポジション)」による役割の重要性を述べてきたが、もう一つ重要なことを指摘しておきたい。それは、「役割とは、地位や肩書きだけで決まるわけではない」ということだ。

どんな組織にも、地位や肩書きとは別に、その人が暗黙のうちに求められている役割がある。これを「期待される役割=期待役割」と呼ぶことにする。この期待役割を把握しておくことは、情報収集はもちろん、キャリアプランを考えるにあたっても極めて重要だ。

期待役割を考えることは、スポーツの世界では当然のことだ。サッカーならば「中央を突破する」「中盤でボールをキープする」などの役割があり、それは試合ごと、ポジションごとに変わってくる。

こうした役割は監督が決めることでもあるが、選手自身が監督の「期待」を意識し、それにフィットする役割を果たすことができれば、それだけ出場機会は多くなる。プロ野球選手もプロサッカー選手も、プロ入り前は全員「エリート」であり、自分の好きなこと、得意なことで勝負してきたはずだ。

だが、プロでそのスタイルを貫ける人はごくわずか。いや、実際にはトッププロであっても、自由にプレーしているわけではない。多くのプロは、チームの中で求められていることと自分のできることを必死に擦り合せ、そのうえで個性を発揮して成果を出そうとしているのだ。

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30代以降は「自分はどこで勝負すべきか」を見直そう

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