モナコの成功者が「人脈づくりを必死にやらない」理由

モナコ在住の起業家プロデューサーで美容家のエミチカさんは、モナコで暮らすうち、富豪や成功者ほど、付き合う人を厳選していることに気づいたと言います。社交場には積極的に参加しても、同時に付き合う人は最小限に抑えようとする――。それはいったい、なぜなのでしょうか?

※本稿は、エミチカ著『結局、「手ぶらで生きる女（ひと）」がうまくいく』（PHP研究所）の一部を再編集したものです。

友人は「数」より「質」

51歳でビジネスの世界に飛び込んでから、経営者の先輩たちにはいつも、「運もお金も人脈が運んできてくれるんだよ」と言われてきました。

そのアドバイスを受けた私は、「とにかくたくさんの人とつながらなくちゃ!」と大量の名刺を持って、異業種交流会を渡り歩きました。

面識のない相手にもSNSで友達申請をしたりして、人とのつながりを増やすためにたくさんの時間を使っていました。その結果、確かにビジネスが広がった面もありますが、だまされたり裏切られたりすることも増えました。

以前、香港で行なわれたアジア最大級の展示会に出展した際、あの日私は、「1日でこんな数を配ったことがない」というくらいたくさんの方と名刺交換をしました。「人脈が、運もお金も運んできてくれる!」と信じていたからです。

でも、展示会から何日か過ぎても、誰からも連絡が入りません。しびれを切らしてこちらから連絡しても、「あなたは誰ですか?」というそっけない反応。

異業種交流会にしても、SNSでの友達申請にしても、展示会での名刺交換にしても、量を追いかけた人脈作りでは、結局、得られるものは何もありませんでした。

「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」ということわざのような人脈作りをしていても、相手からは「大勢のうちの一人」としか認識されません。それよりも、一人ひとりと顔が見える距離感で、確かな関係を築いていくほうが大切なのです。

モナコに来てからその考えを学び、一人ひとりとこつこつと信頼関係を深めていくことにシフトチェンジしたら、運とツキが舞い込んでくるようになりました。たくさんの人とつながって、知り合いの数が増えたからといって、運やお金が舞い込むわけではありません。

人脈はたしかに大事。でも、もっと大事なのは「人間関係の質」です。

「大勢の中のあなた」ではなく、「たった一人のあなた」を認識してもらうことで、人間関係の質はぐんと変わります。群れから離れて一人の人間として相手と向き合うと、相手はあなたに視線をフォーカスしてくれるようになるのです。

大勢と群れず、大勢にまぎれず、一人ひとりとしっかりと信頼関係を結び、育てていく。それはまさにモナコの人たちが心がけていることです

付き合う相手には、お金と時間を惜しまない

モナコに来てから強く感じていることですが、成功者や大富豪の人ほど、つながりは最小限に抑えようと意識されています。

とはいえ、彼らはまったく社交の場に姿を現さないわけではありません。むしろ、積極的に出向きます。しかし、付き合う相手は、慎重に見極めています。

というのも、彼らはひとたび付き合うと決めた相手とは本当に深い関係を築いていくからです。そのため、誰彼構わず関係を結ぶということは、物理的にできないのです。

出会った相手と深い信頼関係を築いていこうとすると、たくさんのお金と時間、エネルギーを必要とします。逆に言うと、時間とお金をかけない付き合いの中からは、運とツキを高める人間関係は生まれません。

また、どんな人と付き合うかによって、感性の磨かれ方や、浮かんでくるひらめきやインスピレーションも変わるので、成功者や大富豪の方は、うかつにつながりを増やそうとしないのです。

1日の時間は全員に等しく24時間しか与えられていません。その大事な時間を、誰とどう使うかを真剣に考えているのです。

大切な人とゆっくりと関係性を育んでいったり、質の高い出会いを求めて行動したりするほうが、100倍大事。

この先、どんな人と付き合って、どんな仲間と一緒に時間を過ごしていきたいかをイメージしましょう。そのためには、誰と付き合うべきかを考え抜いて、質の高いつながりを結んでいってください。

人はつい、自分と同じ年代で、同じくらいの収入があり、住んでいる地域が近い「似たもの同士」と付き合いがちです。

それは悪いことではありませんが、もしみなさんが「こんな人たちとお付き合いしたい」という理想を抱いているのなら、今いる「小さな世界」の外に出てみることをおすすめします。

職業がまったく違う人、別の趣味を持った人、目標に向けて頑張っている人、今まで出会ったことがない人との出会いは、あなたに新しい未来をもたらします。

その中で、「この人!」という人を見つけましょう。そして、まずはそのたった一人と真剣にお付き合いをするようにしてみてくださいね。

【エミチカ】
起業家プロデューサー、美容家、EMICHIKA Co.Ltd 代表取締役。三重県出身。モナコのパレスエリア（王宮前）で暮らす唯一の日本人。50 歳のときに眼科医の夫が急逝し、2 人の子どもを抱えながら2 億円の負債を抱える。51 歳で美容ビジネスを立ち上げ、わずか5 年で年商7 億円企業に成長させる。しかし、その後大病を患い、生き方やビジネスの進め方の大転換を迫られる。その経験から、「古い価値観を手放して手ぶらになる生き方」にシフトし、本物の自由を手に入れる。2018 年には、知り合いなし、コネなし、語学力なしの状態から、持ち前の行動力で次々とコネクションをつなぎ、「大富豪でなければ住めない」と言われ、世界中のセレブが集まる国・モナコで暮らし始める。また、「本物の幸せを見つければ人生は変わる」というアイデアをスピーチした海外TEDx は、2022 年7 月度の世界最高再生回数を記録（日本人女性初のランクイン）し、好評を博している。現在は、モナコのパレスエリアと日本を行き来しながら、多くの女性たちのプロデュースを手がけている。