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ブランディングを勘違い? “下手な企業SNS”の運用担当に抜け落ちた顧客目線

鄭泰玉(株式会社NineCraft 代表取締役社長)

2023年08月17日 公開 2024年12月16日 更新

インスタグラムを始めてみたものの「新規顧客を集客できない」、「投稿のアイデアが湧かない」、「運用が属人的になってしまっている」など、日々湧き出る課題に多くの担当者が頭を悩ませている。SNS運用で生じるこれらの問題に、どのように対応すればよいのか。

これまで様々な企業のSNS運用を支援し、成功に導いてきた鄭泰玉(チョン テオギ)氏が、インスタグラムマーケティングにまつわる課題を一気に解決する秘策を紹介する。

※この記事は鄭泰玉著『パーパス・ベースド・インスタグラム 本気でブランドをつくりたい人のためのインスタグラムの教科書』(PHPエディターズ・グループ)の内容を一部抜粋・編集したものです。

 

顧客のフォローメリットからアカウント・パーパスを設計する

インスタグラムのアカウント運用が失敗してしまう主たる原因は、「企業側の目的」から手段を決めてしまうことにあります。

「企業が発信できること」「企業が売りたいもの」「企業が知ってほしいこと」などを起点として設計・運営されているインスタグラムは、往々にして人々の感情を揺さぶるものにはならず、フォロワーの興味・関心を惹きつけることもできません。

インスタグラムのアカウント運用において最も大切なのは、「顧客側の目的」を起点として考えることです。したがって、最初に行うのは「フォロワーにとっての存在目的」を考える、つまり「このアカウントをフォローするメリットは何か?」という問いに対する答えを言語化することなのです。

「当たり前のことじゃないか」と思われたかもしれませんが、私の知る限り、多くの企業はアカウント運用のスタート時点でこの視点や発想がすっぽりと抜け落ちています。

そして、言語化されたフォローメリットを企業視点で定義し直すことで、アカウント・パーパスが決まります。このように、パーパスを意識的に設計し、それを起点としてインスタグラムを運用する方法が「パーパス・ベースド・インスタグラム」なのです。

上手に設計されたアカウント・パーパスはインスタグラム運用における羅針盤となり、それによって戦略の方向性が定まり、全ての施策の一貫性も保たれるようになります。

 

良質なアカウント・パーパスは様々な課題を一気に解決してくれる

考え抜かれた良質なアカウント・パーパスは、インスタグラム運用にまつわる次のような課題を解決し、たくさんのメリットをもたらしてくれます。

1.アイデアが続かない
2.新規顧客を集客できない
3.投稿に世界観や一貫性がない
4.運用が属人的になる
5.「商品の魅力」をうまく発信できない
6.社内でインスタグラム戦略の目的を魅力的に伝えられない

この中からいくつかご説明していきます。

 

アイデアの切り口を広げ、チームを1つにする

●アイデアが続かない

インスタグラムは一発のアイデアがどれだけ素晴らしくても、意味がありません。「つながりの質」がカギとなるインスタグラム運用では、継続的に質の高いアイデアを出し続けることが重要になるからです。そのため、発想の「切り口」を数多く用意する必要があります。

例えば、家具ブランドのインスタグラム運用においてコンテンツを作る場合、まずは基本的な「色/サイズ/家族の人数」といった機能・属性の切り口を用意することで、アイデアを考えるハードルを下げることができます。

ただし、「機能・属性」という切り口だけではアイデアの範囲が商品の外側に広がらず、「商品数×機能・属性の数≒アイデアの数」となり、途中でアイデアが尽きてしまいます。

では、家具ブランドのインスタグラム運用チームが「このアカウントをフォローするメリットは何か?」という問いについて考え、「プチプラ家具で『映える』ワンルームを実現」というアカウント・パーパスを掲げたらどうなるでしょうか?

「『映える』ワンルームを実現するために提供できることは何か?」という問いが新たに立てられるようになり、それによって発想の切り口が商品の外側にも広がり、チームのアイデアが加速していきます。

このような問いについて深く議論していけば、「機能・属性」を切り口にした時とは全く異なるコンテンツアイデアが生み出せるはずです。

 

●運用が属人的になる

企業のアカウント運用は複数人が関わるケースが多いため、チーム内に軸となるものがなければ、「各人がなんとなく良さげなコンテンツを作る」といった運用に陥り、投稿内容の質がバラバラになってアカウントの価値も低下し、フォロワーの離反につながる可能性も生じます。

一方、考え抜かれた良質なアカウント・パーパスがあれば、チーム内でクリエイティブの方向性がずれることはなくなります。むしろ、発想の切り口が広がり、コンテンツの質を高めるアイデアもたくさん生み出すことができます。

アカウント・パーパスは、チームの共通言語、共有する判断軸となります。また、担当者が入れ替わっても、パーパスを共有していれば、それが世界観や一貫性を保つためのルールとなってくれるのです。

パーパス・ベースド・インスタグラムによってアカウント運用の目的やコンセプトが定まれば、クリエイティブな発想がしやすくなり、戦略や施策にも一本の芯が通り、世界観や一貫性が保たれるようになります。

それが結果として円滑な社内コミュニケーションの発展、アイデアが枯渇しないクリエイティビティなチームビルディングの実現につながっていきます。何より、多くのフォロワーに支持されるアカウントになる可能性も高まっていくはずです。

 

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