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部下が動かないとキレる管理職は“ピラミッド型組織の崩壊”に気づいていない

前川孝雄(株式会社FeelWorks代表取締役)

2023年06月08日 公開 2024年12月16日 更新

現代では多様化が大きく進み、社員の属性や抱えている事情も多岐にわたっている。時代の変化に伴って昭和時代の「ピラミッド型組織」が通用せず、マネジメントに苦労する管理職も多い。これからの時代、どのような組織づくりが求められるのだろうか。前川孝雄氏が解説する。

※本稿は、前川孝雄著『部下全員が活躍する上司力5つのステップ』(株式会社FeelWorks)より一部抜粋・編集したものです。

 

部下一人ひとりの強みを活かし「協働意識」を醸成する

企業の上司層にマネジメント上の悩みを訊ねると、「部下が指示待ちで困る」「自分で考えて動いてくれない」などと並んで、「部下と部下の連携がうまくいかない」「部下同士の仲が悪い」との声が目立ちます。その悩みの背景には「組織は自然に動くもの」との考えがあるように感じます。

しかし実際には、組織に集うメンバーが足並みを揃えて前に進み成果を出すためには、上司による仕掛けが必要です。組織の共通の目的のもとに、部下が互いの役割を認識し合い、いかに連携を取るべきか。上司が理解を促す役割を果たさなければ、組織はうまく機能しないのです。

その際の大前提として上司の皆さんに重視してほしいのは、「職場のダイバーシティ(多様性)」の理解です。「それはグローバル企業の話で、自分たちには無縁」と考えるのは早計です。ダイバーシティは今や全ての日本企業の課題であり、その本質を理解せずして組織づくりはできません。

昭和に原型ができた日本型組織は、男性正社員中心のピラミッド型でした。これは、戦後の高度経済成長期に定着してきた男女の役割分業を基礎につくられたものです。男性は会社で猛烈に働き、女性は結婚したら家庭に入り家を守るのが大勢。上司も部下も男性で、上司は年上、部下は年下が当たり前でした。

しかし平成から令和へと時代が移り変わる中、このような状況はもはや過去のものです。年齢、性別、国籍や文化などの違い、育児や家族介護の有無、雇用形態の違いなど、異なる立場や価値観を持つ多様なメンバーがいる職場が当たり前であり、共に認め合い活躍できる組織づくりが不可欠なのです。

 

「ピラミッド型組織」から「サークル型組織」へ 

今の上司の皆さんが若手であった頃のピラミッド型組織では、「四の五の言わず、黙って自分の務めを果たせ!」と強権を発動すれば、上司は部下を動かせたかもしれません。

終身雇用と年功序列のもと、「我慢して指示・命令に応えていれば、いずれは出世し給料が上がる」という、ポストと報酬による動機づけが機能していたからです。

しかし多様な立場や価値観のメンバーが集まる現代の組織では、このマネジメント手法は通用しません。さらに、新型コロナウイルス感染症拡大や戦争・天災などで、世の中は一層不透明感を増しています。

先が読めない不安の中、将来のポストや報酬などの「鼻先にニンジンをぶら下げる」動機づけは、全ての部下に保証もできません。今の上司の皆さんは、先輩世代のマネジメント手法をそのまま踏襲しても、組織を動かすことはできないのです。

そこで、今の時代に大切になるのが、「組織の目的」と「個々の尊重」による動機づけです。そのためには、組織の目的を中心に置き、その実現のために多様な部下一人ひとりが主体的に重要な役割を果たすサークル型組織をつくることが必要なのです。

組織がサークル型であるからには、上司と部下は上下関係ではないと考えることが第一です。ピラミッド型の組織では上意下達を前提にしていましたが、サークル型組織はフラットな関係です。上司も部下も人として対等であり、それぞれの役割を分担していると考えましょう。

具体的には、上司は「経営層とのパイプ役」「チーム全体を束ね動かす」という役割を担うのです。部下は一定領域の仕事を分担し、自分の持ち味を活かして責任を果たす役割を担います。

すなわち、上司は偉いのではなく、あくまでチームの円滑な運営のための一つの役割なのです。決して自分はピラミッドの頂点に立つ者ではないと認識しましょう。

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組織づくりへの采配の如何が上司力を左右する

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