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住宅ローン満期なのに未返済...インフレ下の「変動金利型」が持つリスク

池田健三郎(経済評論家/政策アナリスト)

2023年09月17日 公開

長らくデフレが続いていると思っていたら、いつの間にかインフレが襲来し、所得が必ずしも十分に増えない中で身近な商品・サービスが次々に値上がりしています。人生100年時代、少しでもゆとりある生活を送りたいなら、今この瞬間から「お金」に対する考え方を改める必要があります。

インフレ下でも資産を減らすことなく、持続可能でゆたかな生活を確保するめの「基本となる考え方」について、元日銀マンであり、経済評論家・政策アナリストの池田健三郎氏の著書『「新しい資本主義」の教科書』から一部抜粋してお伝えしていきます。

※本稿は、池田健三郎著『「新しい資本主義」の教科書』(日東書院本社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

利上げをすると変動金利型の住宅ローンはどうなる?

仮にこれから日本が米国並のインフレ率になるとしたらどうでしょう。まずは賃金上昇が物価高に追いつかず、多くの国民は実質の所得が目減りして生活は苦しくなるでしょう。無論、そうなる前に日銀は利上げしてインフレを鎮静化する必要があるのですが、利上げの望みは薄いでしょう。

さて、そうはいいつつも、もし日銀が自身の債務超過リスクなどお構いなしとばかりに利上げに踏み切ったらどうでしょう。わが国は未知の世界に突入していくかも知れません。中でも大きな打撃を受ける代表は、「変動金利で住宅ローンを組んでいる人たち」でしょう。借入金利の高騰により、住宅ローン破産の火の手があちこちから上がるかもしれません。

こうした懸念が出るのは、あまりに多くの人が「変動金利型」住宅ローンを選択しているからです。2020年度に住宅を購入して引き渡しを受けた人で民間住宅ローンを利用した人のうち、実に82・1%もの人が変動金利型を利用しています(一般社団法人不動産流通経営協会「不動産流通業に関する消費者動向調査〈2021年度〉」)。

 

返し切れていない分があるのに、ローン満期を迎えたら?

「変動金利型」の割合はここ数年、上昇してきています。もし日本で金利が上がると、変動金利で借りた人にどのような影響が出るのでしょうか。月々の支払額が10万円の35年ローンを組んだとして考えます。変動金利は借入期間中、半年ごとに金利が見直されます。

ただし、金利が半年ごとに変わっても返済額は5年ごとの見直しとなり、その後5年間の返済額は変わりません。

また、金利の上昇によって返済負担が急激に上がってしまわないように、一般的な住宅ローン商品には、月々の返済額が増えたとしても上限1.25倍までというルールがあります。つまり、金利が0.5%から急激に2%まで上がったとしても、その後5年間、月々の返済額は12万5000円を超えることはないのです。

しかし、これを聞いて安心してはいけません。ローン返済期間は伸ばすことができないので、お金を貸した金融機関としては、毎月の返済額に増えた利息分を上乗せしていきます。つまり、月々の返済額はあまり変わらなくても、その中の金利分の割合が半年ごとに増えていく可能性があるのです。

ということは、真面目に返済を続けても、実は返済しているのは利息ばかりで元本が減らない状態になっていきます。その後、金利が上昇していくと、5年ごとに月々の返済額は1.25倍となり、払っているのはほとんど金融機関への利息だけという事態も想定されます。

そうして35年ローンの満期を迎えたら、返し切れていない分はどうなるのかというと、最終段階で「一括返済」を迫られます。サラリーマンの方が65歳の定年と同時に住宅ローンを払い終わるように設定していたとすれば、退職金全てを返済に充てなければならないケースも想定されるのです。

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変動金利と固定金利はどちらがいい?

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