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効果がない指導の特徴とは? 上司が見極めるべき「部下のタイプ」

三宅孝之(株式会社ドリームインキュベータ代表取締役社長)

2023年10月26日 公開

大企業の次の柱となる、数百億、数千億円規模の新規事業を生み出す「ビジネスプロデュース」を行なっている、東証プライム上場企業の「ドリームインキュベータ(DI)」。その社長を務める三宅孝之氏は、部下が「深掘りタイプ」か「共感タイプ」かによって、アドバイスや指示の仕方を変えるべきだという。

※本記事は三宅孝之著『「共感」×「深掘り」が最強のビジネススキルである』(PHP研究所)の内容を一部抜粋したものです。

 

部下のタイプを知れば的確なアドバイスができる

部下のスキルを鍛えるにあたって、叱って育てたほうがいいのか、褒めて育てたほうがいいのかは、よく議論になるところですが、部下のタイプによって違います。

大量の資料を調べて分析し、数値化・定量化し、思考を深めるスキルが得意な「深掘りタイプ」は、褒められてもあまり反応しないか、逆に効きすぎて気が緩んで、やる気を失うこともあります。

一方、数多くの人たちに会いに行き、話を聞くスキルが得意な「共感タイプ」は、褒められると嬉しくなって、やる気が出ます。逆に、叱られると反発して、やる気を失います。

この違いを上司が知っていることも、部下を上手に指導するうえで重要です。

お客様に感謝されるのは、共感タイプにとって大きなモチベーションになります。ですから、共感タイプの部下には手柄をあげるようにしましょう。すると、また頑張ってくれます。

深掘りタイプは、他人に感謝されるより、自分の納得感をより高めたいと考えています。自分が納得できる仕事ができたことが、次へのモチベーションになります。ですから、高い納得感が得られるような、やや難易度の高い仕事にチャレンジしてもらうようにするといいでしょう。

部下が2つのタイプのどちらなのかを認識し、それを踏まえて指導すれば、部下はどんどん伸びていきます。

これ以外にも、2つのタイプにはたくさんの違いがあります。それを理解していれば、指導やアドバイスに活かすことができます。

例えば、「若い社員が育っていない」という課題について議論することになったとします。

共感タイプは、思いつきの浅い答えを自信満々に言い切ります。あるいは、「AさんとBさんのことでしょ。それなら2人を呼んで教育しましょう」などと、解決策を勝手に決めつけます。その意見が正しいかどうかを検証するのは、「どうせ正しいに決まっているのだから、面倒なだけだ」と考えています。

他方、深掘りタイプは、「若い社員って何歳から何歳の人のことですか?」「育っていないという判断の理由は何ですか?」などと細かいことを言い出します。それらがクリアになったら、「採用が原因なのか」「研修が原因なのか」「現場が原因なのか」といったように課題を分解して考え始めます。

そして、「これが原因だから、こうするのが解決策だ」と決めつけるのですが、口にはせず、その解決策が正しいということを自分で納得するための根拠となることだけを延々と調べ続けます。

解決策を決めつけるのは両タイプとも同じですが、こうしたかなりの違いがあります。したがって、両タイプへの上司の働きかけもまったく違うものになります。

共感タイプに対しては、

「思いついたことをすぐに話し始めるのはやめたほうがいい。少なくとも5秒は考えてから話し始めてね」

などとアドバイスするのが有効でしょう。

深掘りタイプに対しては、

「考えすぎないほうがいいな。とりあえず現段階での課題を言ってみて」

などとアドバイスをするといいでしょう。

両タイプの特徴がわかっていれば、このようにアドバイスの仕方を使い分けることができます。上司は、部下がどちらのタイプなのかを認識し、アドバイスを上手く使い分けることが大事です。

 

タイプによって指示の仕方も変える

ビジネスプロデュースに限りませんが、プロジェクトの最初の段階では、そのテーマに関する情報や知識を幅広くインプットする必要があります。そこで、部下に情報をインプットするよう指示をするとしましょう。

共感タイプは、情報や知識を幅広く仕入れるのが得意です。本や雑誌、新聞、ウェブサイト上の情報や記事に片っ端から目を通していくことが苦になりません。まさに「目を通している」状態で、ポイントだけを拾って、飛ばし読みをすることが難なくできます。

一方で、もともと情報や知識を得るために調べることを面倒くさいと思っているので、できるだけ効率よく情報や知識を得たいと思っています。その結果、「広く浅く」情報や知識をインプットするのが得意なのです。

そんな共感タイプに対して、「この1冊に大事なことがすべて書いてあるから、しっかりと読み込んできて」と指示すると、どうなるでしょうか。読んでいる途中で眠たくなり、最後まで読み切れないか、いつものように飛ばし読みですませてしまうかのどちらかになりがちです。

他方、深掘りタイプは、飛ばし読みができません。読み始めると、興味が湧いて全部読んでしまう。あるいは、読み飛ばしたところに重要なことが書いてあるのではないかと気になってしまい、結局、全部読んでしまう。

その結果、インプットに大量の時間がかかり、最後は時間切れになります。結果、一部の偏った情報と知識を得るだけ、ということになってしまいます。

そんな深掘りタイプに、「このテーマについてざっと知っておく必要があるから、この10冊を飛ばし読みでいいので読んでおいて」と指示するとどうなるでしょうか。飛ばし読みをすることができず、時間が不足し、数冊は読めずに終わる可能性が高いと思います。

「1冊だけなら読み込めるだろう」「飛ばし読みぐらい誰でもできるだろう」と思うかもしれませんが、タイプによっては、これが意外にできません。

このように、本の読み方ひとつ見ても、タイプに合わせた指示の出し方が重要であることがわかります。

 

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