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カウンセラーが説く「家庭内のトラウマ」と「HSP気質」の切り離せない関係

名越康文(精神科医)、武田友紀(HSP専門カウンセラー、公認心理師)

2023年10月20日 公開

優しい言葉と口調で私たちの"心"について教えてくれる、精神科医の名越康文さん。そして、60万部を突破したベストセラー、『「繊細さん」の本』の著者で、HSP専門カウンセラーの武田友紀さん。そんな二人が、対談書籍を上梓しました。

その名は『これって本当に「繊細さん」? と思ったら読む本 HSPとトラウマのちがいを精神科医と語る』(日東書院本社)。

HSP(Highly Sensitive Person)だけでなく、HSPにも関連が深いという「トラウマ」にもスポットを当てた本書は一体どのような内容なのでしょうか。

今回は出版時に撮影された対談動画と本文を一部抜粋して、その内容について少しだけご紹介します。※文:金澤英恵

 

自分の「繊細さん」気質と長年向き合った

【名越】もう手に取ってくださった方もいらっしゃるかもしれませんが、武田先生との対談書籍がついに出版されました。初めて対談したのは、もう2年前ですね。こんなに分厚い本になるとは思っていませんでした。

【武田】1年ぐらいかけて、何度かに分けてじっくり対談させていただきましたよね。

【名越】初めてお会いしたときに思ったのは、僕が語るよりも武田先生にたくさん話していただいたほうがいいな、ということでした。なぜなら、武田先生はカウンセラーである前に、ご自身のHSP(※)の気質と長年向き合われてきたからです。

育った家庭環境の中で様々な経験があり、社会に出てからはいわゆる"バリキャリ"として仕事をしていた。そうした長い道のりの中で、自分はHSPだと気づかれたそうですね。武田先生のユニークさや説得力が、歩まれてきた"人生そのもの"から滲み出ている。

しかも、HSPによる困難があっても"膠着状態"にならないよう、いろんな工夫をしながら生きてこられた。だからこの本の対談は、武田先生の経験されたことをたくさん語ってもらおうと決めていたんです。

【武田】そうだったんですね(笑)。

【名越】ごめんなさいね。でも、内容はまさに、僕の意図を汲んでいただいたかのようでした。自らの人生を客観的に話してくださって、さらに読んでいる人が自分の人生も重ね合わせられるように、咀嚼して語っていただいて。

本書は、繊細さんとはなにか、繊細さんとトラウマの関係、トラウマを抱えたままどう生きていくか、などいくつかのテーマがあるけれど、ともすれば1冊で3冊分の要素をカバーしているというか、それぐらい盛りだくさんの内容だと思っています。

※HSP=Highly Sensitive Personの略で「とても敏感な人」のこと。他の人が気づかない小さなことにもよく気づき、深く考える性質をもっている。武田さんは親しみを込めて、HSPを「繊細さん」と呼んでいる。

 

「心が通い合わない」家庭でもトラウマは生じる

【武田】私は会社員時代、商品開発の仕事をしていたのですが、オーバーワークが原因で休職したんです。そのとき初めてHSPのことを知りました。

でも、しんどいのは「HSPだから」だけではなかったんですね。しんどさの理由を探る中で、トラウマにも目を向けた(※)という話を、名越先生に聞いていただきました。自分のことを話せてよかったなと思うのは、そもそも名越先生との対談では"強度の強い題材"が必要だと感じていたんです。

カウンセラーとして、相談者さんのお悩みはたくさんお聞きしていますが、秘密保持の関係で詳細はお伝えできません。ただ、こんなときにどう思ったか? どう対処したか? という詳細についても、本ではしっかりお伝えしたかったですし、その点、私自身の話であれば包み隠さずお話することができるので。

【名越】武田先生にはそんな戦略があったんですね。

【武田】その"強度"がなければ、名越先生の深い知見には耐えられないだろうと思っていたんです。

【名越】前半はまさに、武田先生の半生というか、就職してからのことや、家庭環境がちょっと大変だったことなどを語っていただきましたよね。

【武田】そうですね。「頑張り続けては動けなくなる」「うまく休めない」「小さな音が気になる」など、私の経験ではあるけれど、読者のみなさんにも共通するようなお話をさせていただきました。トラウマによってこんなことが起こり得るんだ、ということを、わかりやすく伝えられたらなと思いまして。

※本書の中で武田さんは、「親からの共感が極端に少ない」家庭で育ったことなどを打ち明けている。このように、逃れられない環境の中で繰り返しつらい出来事に遭うことによるトラウマを「複雑性トラウマ」という、と武田さんは解説。

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