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なぜ日本の報道の自由度は低い? 池上彰が語る「監視されるメディア」の実態

池上彰(ジャーナリスト)

2023年11月09日 公開

 

ネットメディアの台頭

インターネットで気軽に動画を配信・視聴できるようになり、かつてテレビや新聞が独占していた政治家の記者会見をノーカットで見られるようになりました。従来、政治家の言葉を直接聞けるのは記者だけであり、国民は編集された記事を読み、短く切り取られた映像を見るしかありませんでした。

しかし、いまでは誰もが平等に、政治家の主張にアクセスできるようになりました。官庁の公式発表もすべてホームページに掲載されています。政治家が国会でどんな発言をしたのか、その前後の文脈までもすべて知ることができます。

政治家から見れば、何を書かれるかわからない記者を経由することなく、自分の言葉をダイレクトに有権者に届けることができるのです。

記者はただ情報を伝えるだけでは生き残れないでしょうが、決して仕事がなくなるわけではありません。情報の量だけは莫大にあるのですが、有効に活かすにはノウハウが必要です。この言葉にどんな意味があるのか、国民の生活にどんな影響があるのか、分析と解説は今後ますます必要とされるでしょう。

テレビや新聞がネットのメディアを見下すような風潮は、かつてほどはなくなりました。ネットでしか得られない情報も多く、重要な情報源となっています。

一方、ネットの側からマスコミへの風あたりは強まっているようです。「マスコミの報道は偏向している」と主張し、真実はネットにしかないと考えている人もいます。

人それぞれ信じるものがあっていいとは思いますが、ネット上のトレンドが世論ではないということはあるでしょう。ネット上に書き込みをする人、情報発信する人はごく一部です。ほとんどのネット利用者は読むだけ・見るだけです。

そのため、ネット上でブームになっていても、ごく一部の人たちが頻繁に投稿を行なっているだけであり、世の中全体ではまったく知られていないということはよくあります。

インターネットは非常に自由な空間です。中国のようにネットに対しても厳しい検閲を行なって規制している国もありますが、幸い現在の日本では、政府が介入しようにもできません。

ネットによって政治の世界がすぐに変わるということはなさそうですが、選挙への活用など、いままでになかった国民と政治との関わり方が生まれるのではないかと期待しています。

 

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