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生き方

自信のない僕が“陽キャの趣味”に手を出した結果、船上でびしょ濡れになった

横川良明(ライター)

2024年01月05日 公開

 

それでもめげずに、次はダイビングへ!

それでもめげずに陽キャな趣味を持とうと、スキューバダイビングのライセンスを取ったこともあった。そしてこれまた陽キャの友人(なぜか友達は陽キャが多い)と2人で沖縄までダイビング旅行に繰り出した。

目的地は、東洋一のダイビングスポットとも誉れ高い慶良間諸島。那覇からだと船で1時間くらいかかる。同乗するのは、同じダイバーたち。道中はダイビング話で盛り上がることもあるだろう。きっとここでなら新たな陽キャ仲間も見つかるかもしれない。期待に胸を膨らませ、いざ慶良間諸島へと旅立った。

が、同行した友人がすっかり参加者たちの輪に紛れ込み、盛り上がっているのに対し、僕は絵に描いたようなぼっちだった。陽キャのコミュニケーション能力は恐ろしい。5分前までは赤の他人だったのに、もうすっかり竹馬の友みたいな顔で肩を小突いたりしている。メロスとセリヌンティウスかよ。

なんなら僕は仲良しの友人をどこの馬の骨ともわからない陽キャたちに奪られたような気がして、若干スネてさえいた。心の底から面倒くさい男である。船のデッキで友人が見知らぬダイバーたちと話しているのを、隅で恨めしそうにじっと見ているだけ。

友人がその視線に気づいて、「お前もこっちに来いよ」と誘ってくれているのに、なぜか依怙地になって「いい。こっちの方が気持ちいいから」と風に当たっているクールな自分を演じてさえいた。

そんなことを僕がしても誰もスナフキンだとは思ってくれないのに、頭の中ではパイプをくわえながらギターをつまびくスナフキン良明がそこにいるつもりなのだ。

 

強風の中で意地を張り続けた結果…

しかも、運の悪いことにその日は風が強く、途中から海が荒れはじめ、デッキの隅で孤独な自分を装っている僕に向かって、容赦なく大波がスプラッシュしてきた。大量の水しぶきを顔面に喰らう。

しかし、ここで引くわけにはいかない。僕は誰とも仲良くなれないからこんな隅っこにいるのではなく、風に当たりたいからここにいるのだ。水しぶきごときでおめおめと尻尾を巻いていたら格好がつかない。

誰になにを言われても「こりん星から来た」と言い張っていた初期の小倉優子のように、僕は何度豪快に波に打たれようと決して微動だにせずスナフキン良明というキャラを守り続けた。

当然、船から降りた後、友人から「お前、他の人らから『あの人大丈夫? ずっと波に打たれてるけど......』って言われとったで」と苦言を呈されたけれど。スナフキン良明は、ただのずぶ濡れぼっち妖怪だった。

こうした迷走も20代のうちなら笑い話ですむ。本当に恐ろしいのは、30代になっても引き続き迷走に迷走を重ねていたことである。恵比寿に住んでみたり、サウナに通ってみたり、思いつきのように陽キャっぽいことをしては失敗を繰り返していた。学習能力がChatGPTとは雲泥の差である。

 

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