松下幸之助が考えた「教育」
2012年08月20日 公開 2024年12月16日 更新
昨今の「いじめ問題」など、課題が噴出し続ける日本の教育現場。いま日本国民にとって最大の関心事の1つとなっている「教育」のあり方について考え続けた、松下幸之助の論考・提言をご紹介します。
※本稿は『学校教育活性化のための七つの提言』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集してお届けする。
教育の現場における松下幸之助の疑問
PHP研究所創設者・松下幸之助は、企業における人材育成の重要性を説くとともに、学校教育にも大いに関心を寄せていました。
教育は国家百年の計ともいわれますが、教育問題に言及した松下の数多くの記録・提言に通底しているのは、「礼節」「道徳」「愛国心」といった、人間としての基本的側面を重視していたことです。
そして、そうした日本人としての「躾」を義務教育でしっかりとおこなう一方で、「万差億別」の教育を実現することによって、人それぞれがそれぞれの才能を最大限発揮しつつ、調和のとれた、ともに生きともに栄える社会をつくり上げていく――それが松下の念願でした。
松下は、「大学が多すぎる」こと、教育の現場に「きびしさが欠けている」ことなど、いまも問題視されている課題にも触れていました。
そして個々の現場での青少年教育については、みずからの企業人としての(人材育成面での)成功体験からか、青少年に対してより、その青少年を育成・指導する立場にあるおとな(企業でいえばリーダー、学校・家庭教育では教師と親)に対しての責任を、強く問うていました。
のちに「モンスター・ペアレント」などという言葉が生まれる異常事態を、明治生まれの松下が想像していたかどうかはわかりません。しかしその考え方は、これからの日本の教育再建における一つの思考軸として、参考にしていただけるのではないでしょうか。
過去に導入され、社会問題化した「ゆとり教育」なども、個性の重視という点では、松下の考え方と一見似通っているようにみえるものの、実際はまったく相容れない根本的相違があります。
いま深刻な問題となっている「いじめ」問題についても、その陰湿さは許しがたいものがありますが、そうであっても、おとな側の責任を、やはり松下は厳しく問うたことでしょう。