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特技なし、強みなし…自己紹介が苦手な学生が知らない「自分の本当の強みの見つけ方」

大澤正彦(日本大学文理学部准教授)

2024年07月23日 公開 2024年12月16日 更新

特技や強みを持っていない人は、初対面で何を話せばいいかわからず、自己紹介を苦手だと感じていることがあります。しかし日本大学文理学部准教授の大澤正彦氏は、どんな人でも自己紹介を通して過去と向き合うことで特技を発見することができると、書籍『じぶんの話をしよう』の中で語ります。

※本稿は大澤正彦著『じぶんの話をしよう。 成功を引き寄せる自己紹介の教科書』(PHP研究所)より一部抜粋・編集したものです。

 

「自己紹介ができない」と言う人の特徴

自己紹介ができない学生を見ていると、自分が生きてきた約20年間を自分なりに意味づけできていない人が多いように思います。そういう学生は、自分のことがあまりよく分かっていません。「あなたの好きなことは何ですか?」「得意なことは?」と聞いても、「いや、特に何もないです」と返す学生はとても多いのです。

しかし、よくよく聞いていくと、対戦アクションゲームがものすごく強いとか、野球選手のホームラン数を覚えているとか、その人ならではの特技が必ず出てきます。にもかかわらず、自分で自分の特技に「意味のないもの」とレッテルを貼っているので、自分の特技が分からなくなっているのです。あるいは、その能力に"特技"というラベルを貼ってもいい、ということを単に知らないだけなのかもしれません。

みなさん決まってこう言います。「こんなの、何の役にも立ちません」と。

でも、私に言わせれば、役に立てる方法を自分で思いついていないだけだと思うのです。物事にちゃんとした意味を求めがちな社会の風潮も、学生たちにプレッシャーを与えているのかもしれません。

「やりたいことは何?」と聞かれると、社会的に意義が認められていて、将来の役に立って、しかも自分が得意なもので......と、限定された「やりたいこと」を要求されている気になってしまうようです。しかし、社会的に意義を認めさせるのも、将来役立てるのも、自分がそれを「やりたいこと」と決めた後にすることです。

一方、自己紹介ができる学生は、自己理解が進んでいます。自分の好きなことや嫌いなこと、得意や不得意、何をやりたいかなど、自分のことがよく見えています。それは、自己紹介を通して自分の過去に向き合い、一つひとつの経験を丁寧に意味づけしてきたからでしょうね。

次に紹介するのは、学生Bさんの自己紹介です。

自分にとことん向き合った結果、コンプレックスだと思っていたことが、実は自分の強みだったことが分かったと言います。自分には夢がないことがコンプレックスでしたが、自己紹介の練習をしてみて分かったことがあります。私はいろんなことに挑戦したいし、どんなチャンスも逃したくない。一つの夢に絞れないから「夢がない」と思っていたけれど、これは夢がないんじゃなくて、「欲張り」なんだと。

だから、私の夢は究極の欲張り人間になることです。それを掲げて大学生活を半年過ごしてきて、自分のコンプレックスが自分の強み、魅力になったことで、自分のことが好きになれたし、決断にも迷わなくなりました。究極の欲張り人間を目指すことで、わくわくも増えました。

マイナスにとらえていた自分の一面に、プラスの意味づけができたことで、自分で自分のことを認められるようになりました。「自分の価値」を自分で決めたBさんからは、未来に向かう前向きなエネルギーが感じられます。

 

チャンスを逃さない力

自己紹介を通して自己理解が進むと、チャンスが巡ってきたときに、チャンスを逃さなくなります。夢ややりたいことが明確なので、目の前にチャンスが訪れたら、「今がそのチャンスだ!」「このチャンスはこう活かせる!」と気づいて、瞬時に行動することができるのです。

「チャンスを逃さない」。これは「チャンスをつかむ」とは少し違います。

「チャンスをつかむ」というと、挑戦の数を増やして「チャンスをつかみにいく」というイメージがあります。攻めて、攻めて、攻めまくる感じでしょうか。それももちろん素晴らしいことだと思います。

私はどちらかというと、自分の価値軸に従って、自分が輝ける場所で、自分にとって最適な「攻めどき」に気づけることを大切にしています。それが「チャンスを逃さない」という言葉に込めた意味です。

リンカーンの名言に、「もし、木を切るのに8時間を与えられたら、そのうちの6時間を私は斧を研ぐのに使うだろう」というものがあります。徹底的に準備をすることの大切さを表現していますが、私はこの言葉が好きです。

自己紹介を考えることも、私は準備だと思っています。自分の過去に向き合い、自分なりの意味づけをしておくことは、未来への準備ととらえることができます。この準備がしっかりできていると、不意にチャンスが訪れたとしても、そのチャンスをどう活かせばいいかを瞬時に判断して、自分の力に変えていくことができるのです。

自己紹介をひたすら練習してきた前出の学生Bさんも、チャンスを逃さない力を蓄えてきた一人です。

私が愛知県豊田市で開催された地域共生社会推進全国サミットで、講演を行なったときのことです。興味をもったBさんは自費で夜行バスに乗りサミットに参加しました。

私が講演のなかで自己紹介の重要性や実践例を話すので、講演後の懇親会で「自己紹介ではどんなことを話すのですか?」と参加者の方々から質問を受けます。そこで、「実際に学生の自己紹介をお聞きになればわかると思います」とBさんに振ったのです。

すると、Bさんは自己紹介をその場で披露し、参加していた地元の市長さんたちの心をわしづかみにしました。そして、ある市長さんから、「その話を30分できるようになったら、中学校で講演をお願いしたい」とオファーを受けるに至ったのです。ここぞという場面で魅力的な自己紹介をして、チャンスを引き寄せたのは見事でした。

 

著者紹介

大澤正彦(おおさわ・まさひこ)

日本大学文理学部准教授/次世代社会研究センター(RINGS)センター長

1993 年生まれ。日本大学文理学部准教授/次世代社会研究センター(RINGS)センター長。東京工業大
学附属科学技術高校情報システム分野、慶応義塾大学理工学部情報工学科をいずれも主席で卒業。研
究テーマはHuman-Agent Interaction(HAI)、全脳アーキテクチャなどを通した、人とかかわる汎用人工知能の実現。Forbes JAPAN「日本発『世界を変える30 歳未満』30 人」に選ばれる。著書に『ドラえもんを本気でつくる』(PHP 新書)がある。夢はドラえもんをつくること。

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