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話し方ひとつで、人生は豊かになる!

岩田公雄(ジャーナリスト)

2012年09月21日 公開 2024年12月16日 更新

与えられた時間は有限だからこそ、短い時間も無駄にはできない

最後になりましたが、感動した一つの事例を紹介します。アップルの創業者のスティーブ・ジョブズさんには、伝説のスピーチがあります。亡くなったあとも、多くの本が出版され、多くの印象的な言葉を残しています。

なかでも2005年に米スタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチが有名です。「ステイ・ハングリー、ステイ・フーリッシュ」(ハングリーであれ、愚か者であれ)の言葉は、世界を感動させました。

自らの苦い経験を織り交ぜながら、人生観を余すところなく語っています。少し長くなりますが、一部省略し引用してみます。

「アップルを追われなかったら、いまの私はなかったでしょう。非常に苦い薬でしたが、私にはそういうつらい経験が必要だったのでしょう。

最悪の出来事に見舞われても、信念を失わないこと。自分の仕事を愛してやまなかったからこそ、前進し続けられたのです。みなさんも大好きなことを見つけてください。仕事でも恋愛でも同じです。好きなことがまだ見つからないなら、探し続けてください。

決して立ち止まってはいけません。ほんとうにやりたいことが見つかったら、不思議と自分でもすぐにわかるはずです。すばらしい恋愛と同じように。だから、探し続けてください。絶対に、立ち尽くしてはいけません」

自分自身の経験からわかりやすく話し、若い人たちの立場に立った力強いメッセージです。聞いた人は誰もが勇気づけられるのではないでしょうか。そして、次のように話は続きます。

「あなた方の時間は限られています。だから、本意でない人生を生きて時間を無駄にしないでください。ドグマにとらわれてはいけません。それは他人の考えに従って生きることと同じです。

他人の考えに溺れるあまり、あなた方の内なる声がかき消されないようにしてください。何より大事なのは、自分の心と直感に従う勇気を持つことです。あなた方の心や直感は、自分がほんとうは何をしたいのかもう知っているはずです。ほかのことは二の次でかまわないのです。

ハングリーであれ。愚か者であれ。私自身、いつもそうありたいと思っています。そしていま、卒業して新たな人生を踏み出すあなた方にもそうあってほしい。『ハングリーであれ。愚か者であれ』と」

とかく人は他人の眼鏡に左右されて、人生の決断をしてしまいがちです。みんなが憧れる人生であったり、メディアでの評価に影響されたりします。しかし、自分にとって何が大切かをよく考えて判断し行動することを、このスピーチは教えてくれています。

私も齢を重ね、ときには若い人たちには伝えていますが、われわれに与えられた時間は有限ですから、常に無駄にしない生き方をしないと人生の最後に後悔することになりかねません。

『出家とその弟子』や『愛と認識との出発』などの文学作品を世に残した倉田百三には、こんな言葉があります。

「青春は短い。宝石の如くにしてそれを惜しめ」

人は、いつかは死を受け入れなければいけません。そのことだけは例外がありません。それゆえ、与えられた時間、与えられた人生を精一杯生きる必要があります。

ここまで取り上げてきた「話し方」は、他人とのコミュニケーションの土台です。話すことが円滑に進めば、人間関係の幅が広がり、仕事にもよい結果が生まれるかもしれません。人生をより豊かにし、死に際して後悔しないためにもぜひ、よりよく話すことからはじめてみてはいかがでしょうか。

 

【PROFILE】岩田公雄 読売テレビ解説者

 1949年、北海道旭川市生まれ。学習院大学法学部卒業後、読売テレビ入社。事件記者として、グリコ森永事件など国内の重要事件を担当。87年NNNマニラ初代支局長に就任。89年6月の中国・天安門事件の現場で取材に当たる。帰国後も北朝鮮ピョンヤンから連続三日間生中継を実現したほか、自衛隊のPKOではルワンダ、中東ゴラン高原などを取材。また、ミャンマーで自宅軟禁中のアウンサンスーチーさん単独会見をはじめ、ニューヨーク同時多発テロ現場、サミット取材など取材国は40を超える。92年からは読売テレビ制作で毎週土曜朝8時から全国放送している報道番組『ウェークアップ!ぷらす』に解説者としてレギュラー出演。『情報ライブ ミヤネ屋』でも、政治・外交などの解説を担当。
著書に『テレビで言えなかったニュースの裏側!』(学習研究社)がある。 

 

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