良質な睡眠をとるには寝具を整えることも重要です。男女で違いのある枕選びのポイントや、マットレスの買い替えのタイミングについて、スリープトレーナーのヒラノマリさんによる書籍『世界のエリートが実践! 人生を変える睡眠術』より解説します。
※本稿は、ヒラノマリ著『世界のエリートが実践! 人生を変える睡眠術』(大和出版)を一部抜粋・編集したものです。
毎日70点くらいを目指せばいい
私はアスリートやビジネスマンを対象に、セミナーやコンサルをおこなっていますが、タイトなスケジュールで動く彼らには、「時間がない」という制約があります。したがって、「忙しい人でも続けられること」が大きなポイントとなっています。
そこでおすすめしているのが、1日単位ではなく、1週間単位で睡眠をマネジメントする方法。あまり厳密に考えすぎず、1週間のトータルでそれなりに眠れていればよしとするわけです。
「期末試験の1週間前だけ頑張る」みたいな行動は、睡眠に関してはNGです。毎日100点をとらなくていいから、コンスタントに毎日70点、80点をとれるようにしてもらうことが、睡眠の質を上げるうえですごく大切なのです。また、アスリートは、遠征で眠る場所が変わることもしばしばあります。
完璧ではない環境でもきちんと眠り、コンディションを維持しなくてはいけないので、私は環境の変化に合わせた対応もアドバイスしています。
無理して費用をかける必要はない
コスト面も気になるところだと思います。たとえば、質のいい睡眠のためには、いい寝具をそろえられるとベストですが、それには費用がかかります。アスリートの中でも、気軽に寝具の総取り替えができる方はいいのですが、「経済的に、それはちょっと......」という方もたくさんいらっしゃいます。
そもそも、必ずしも寝具をまるまる買い替える必要はありません。限られた予算の中でも、ちょっとした工夫で改善できることは多いです。
枕、マットレス、リネン類を選ぶ
質のいい睡眠を成り立たせる2本の柱として、「体の外側からのアプローチ」と「体の内側からのアプローチ」があります。この「体の外側」と「体の内側」には、上記のようなものがあります。ここではまず、体の外側からのアプローチに焦点を当てましょう。
●マットレスは迷ったら硬いものを選ぶ
日本人は布団文化で進んできたので、「布団は硬いほうがいいのでは」「柔らかいと体に悪いのでは」と考える人もいるようです。でも、硬すぎる布団はよく眠れないことが多いもの。腰とマットレスの間にすきまができると腰を痛める原因にもなりますので、ほどよい柔らかさがあることが重要です。
しかし、新しくマットレスを選ぶ際、硬いものかソフトなものかで迷ったら、とりあえず硬いものを買いましょう。
というのもマットレスは、後からトッパー(マットレスの上に敷いて寝心地を調整するもの)などを敷いて柔らかくすることは可能ですが、柔らかいものを硬くするのは難しいからです。
意外と見落としがちなのが、ベッドパットです。
ベッドパットはマットレスへの汗のしみ込みや汚れ防止にもなるので、ぜひ使ってください。ポリエステルより綿や羊毛などの素材のものを使ったほうが、通気性が確保されて蒸れにくくなります。
使っているうちに、寝具がだんだん合わなくなってきた場合、買い替えなくても手持ちのものをベターな状態にする方法があります。
男性で多いのは、太って、お尻にお肉がついたために腰が浮くようになって、硬いマットレスが合わなくなるケース。この場合は、クッション性のあるものを入れて、腰とマットレスのすきまを埋めると快適になります。
低反発のマットレストッパーを上に載せるのもおすすめですが、このとき、厚手のものより薄手のものがいいでしょう。
ただし、マットレス本体が歪んだり、へたったりしている場合は、何を上に敷いても修正できません。そのときは買い替えをおすすめします。コイルの入っていないウレタンや高反発ファイバーのマットレスの寿命は7年前後、コイルが入っているマットレスは10年前後で買い替えどきと言われています。
●枕選びには男女差がある
枕を選ぶときは、高さ、素材、また男性か女性かを考慮することが必要です。男性は、柔らかいフェザー系や綿の枕は避け、高反発系の素材やパイプの枕など、硬めのしっかりしたものを選びましょう。
男性は女性よりも骨格がしっかりしていて筋肉量や骨量もあるので、ある程度の硬さがないと首を支えられず、寝姿勢が崩れがちだからです。
女性の場合、低めの枕が合うケースが多いです。普段高すぎる枕を使っているという方が多いのですが、それだと首にシワが寄りやすいというデメリットがあるので、一度見直してみるといいでしょう。枕の寿命は素材によって異なりますので、それに応じて買い替えてください。
●柔らかいリネン類を使うだけでも変わる
マットレスはそのままでも、シーツや枕カバー、布団カバーなどのリネン類を変えるだけでも睡眠の質は変わりやすくなります。「肌から眠る」。これは私が睡眠のキーワードのひとつに位置づけているものです。
なぜなら、副交感神経のスイッチを入れるトリガーの中に「肌触り」があるからです。
タオルやブランケットの柔らかい感触や香りは、心を落ち着かせてくれます。スヌーピーに出てくるライナスの毛布もそうですし、小さい子の顔まわりに柔らかいガーゼを置いたりするのも、肌から眠りをもたらす作用があります。
したがって、リネン類もなるべく柔らかい素材にしましょう。夏なら麻が入った素材などと、さらっとした感触やひんやりした感触のあるものに変えてみると、それだけでも眠りの質が変わってきます。