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すぐに実践! 言いにくいことをうまく伝える「プロの技術」

野原蓉子(日本産業カウンセリングセンター理事長/臨床心理士)

2012年10月12日 公開 2023年01月05日 更新

日頃職場で顔を合わせている人に対して、言いたくても言えないことの一つや二つ持ち合わせているはず。

臨床心理士の野原蓉子氏は、そのような場合に、言った後の相手の反応とその対応を具体的にイメージしておくといいと語る。実際にどのようにイメージをすべきなのか、例を交えて紹介する。

※野原蓉子 著『プロカウンセラーが教える 言いにくいことを伝える技術』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

相手の反応と対応を具体的にイメージしておこう

言いにくいことが言えないのは、言った後の相手の反応と、それに対してこちらのとるべき対応を具体的にイメージしていないから、というケースは少なくありません。

相手がどんなことを言ってきたとしても、それにどう対応すればいいか具体的なイメージを持っていれば、不安感も和らぎ、心にゆとりが出てきます。

相手の反応に対して、どう対応するかを具体的にイメージしていただくために、参考例をあげてみたいと思います。

もちろん、記述どおりにいかないことも多いでしょうが、ご自分なりに、相手がどんな反応をしてきて、それに対して、どう対応するかということをイメージしてみてください。

もし、イメージしにくいときには、誰か身近な人に、「○○さんに、こんなふうに言おうと思うんだけど、どう思う?」と聞いてみて、相手の反応を予想してみるのもいいでしょう。

ちょっとした準備をしておくだけで、言いにくいことが言いやすくなります。

 

相手が怒り出したときの対応

「言いにくいこと」の中には、相手にとっては、聞きたくない内容が含まれていることもあるはずです。そのようなケースでは、伝えたときに相手が怒り出してしまうことも想定されます。

相手が怒り出したときは、こちらから見ると攻撃的な態度に見えますが、実は、相手にとっては傷つくことから自分を守る当然の行動であることが少なくありません。

人間は「痛いところを突かれた」ときには、自分を防衛しようとします。その反応の1つとして、無意識のうちに攻撃的な態度になり、怒りという反応となって現れてしまうこともあるのです。

怒りに対応するためには、まず、日ごろの相手の言動をよく観察しておくことです。相手の性格によって、対応法を変えるのが賢明です。相手が怒りっぽい性格なのか、どちらかというと冷静で落ち着いた人なのか、相手の性格を見極めておくことは、対応を考えるときに役に立ちます。

また、「その場」の反応だけではなく、「その後」の反応も想像しておきましょう。世の中には、その場では激しい怒りを出すけれども、カラッとした性格で、尾は引かないという性格の人もいます。

その反対に、その場ではあまり感情を表に出さないけれども、後々まで尾を引くタイプの人もいます。相手がどういうタイプの人かで対応は変わります。

では、具体的に相手が怒り出した場面を想定して、対応法を考えてみましょう。職場、家庭、友人関係などさまざまな場面がありますので、その中の代表的な場面をいくつか想定して考えていきたいと思います。

 

(1)意見を言ったら上司が怒り出した

[ケース]
上司に、勇気を出して、自分の意見を伝えてみた。

[伝えたこと]
「私は、こういったサービスも加えてみてはどうかと思っているのですが、いかがでしょうか」

[上司の反応]
「おまえは部下のくせに、エラソーなこと言うな。オレの言うとおりにやっていればいいんだ」

[対応]
「部長のお考えに従ってこれまで仕事をやってきました。今回も部長としてのお考えを確認させていただきたかったのでお話ししました。お客様からのご要望が多かったものですから、担当者として私の考えも加えてよいものかどうか教えていただけたらと思っています。部長のお考えをおっしゃっていただけたらと思います」

上司の中には、自分の価値基準と合わないことを部下から言われると、怒り出す人もいます。仮に部下の意見が正しいと思っても、「気に入らない」と感じる人もいるようです。

前述したように、怒りは防衛反応であることが少なくありません。上司は、部下に意見をされて、自分の立場が守れなくなると感じているのかもしれませんし、上司としての威厳を保ちたいのかもしれません。いずれにしても、自分を守ろうとしている可能性があります。

それを頭に入れたうえで、上司が守りたいと思っているものには、あえて踏み込まない配慮も必要でしょう。部長の立場を脅かそうというつもりはまったくないし、部長の指示をとても大切に考えているということを伝えるのも大切です。

そのうえで、お客様に喜んでいただくために自分のアイデアを入れてもいいかどうか確認させていただきたかったと伝えてみましょう。

意見を言ったという印象を弱めるために、「意見をお聞きしたい」という姿勢を貫くのも有効です。上司の意見に真剣に耳を傾けて、「おっしゃられていることは、こういうことですよね」と何度もうなずいたりしながら話を聞く姿勢を見せると、上司も悪い気はしないはずです。

それでも、上司の怒りがおさまらないときは、できるだけ直接怒りを受けないように、かわしていく方法も考えておいてください。

上司が、瞬間的に爆発するけれども、後には引かないというタイプであれば、その場の怒りをかわすことさえできれば、後はそれほど心配する必要はありません。その場では上司に逆らわないようにして、やりすごしましょう。

自分の考えを伝えることはできたのですから、それを採用するかどうかは委ねます、という態度で接しましょう。

 

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