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生き方

93歳母が最期まで「しあわせ」だった秘密...後に見つけたノートの中身

有川真由美(作家)

2026年03月31日 公開

イライラ・モヤモヤして心が落ち着かないとき、ちょっとした習慣を取り入れるだけで気分が上向くかもしれません。作家の有川真由美さんが、実際にやってみて効果を実感した小さな習慣を紹介してくれました。

※本稿は、月刊『PHP』2024年7月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

朝の「ささやかな達成感」

「元気を出そう」「ポジティブになろう」と思っていても、じっとしていては、心はなかなか変わってはくれないものです。

手足を動かし、体を動かしているうちに、「お、なんだか元気になってきた」「だんだん楽しくなってきた」「もっとやれそう」などと思うものではないでしょうか。

私は、無理なくできて、ちょっと気分がよくなる小さな習慣をもつことが、心を整える習慣になると、実感しているのです。

そんな習慣のなかで、いちばん長く続けているのが「朝起きたときにベッドを整える」というもの。シーツの皺をぴんと伸ばし、枕をパンパンと叩いて形を整え、布団をふんわりとかぶせる。たった1、2分のことで、すっきりした気分になります。

きれいに整ったベッドを眺めると「さて、活動を始めましょうかね」と一日のスイッチが入り、つぎの行動への弾みがつきます。

ときには朝起きるのがつらくて、布団をぐちゃぐちゃなままにしたくなる日もあります。しかし、習慣になっていると、やらないとどうも落ち着かない。そんな日こそ、ちゃんとやったことで、「よしよし。よくやった、私」と自分をほめたくなります。

この朝の「ささやかな達成感」が、私の生活を支えてくれているような気がするのです。

あとで知ったことですが、ウィリアム・H・マクレイヴンという元アメリカ海軍大将も、母校テキサス大学の卒業式で「世界を変えようと思うなら、まずベッドメイクから始めましょう」とスピーチしていたそうです。

「毎朝、ベッドメイクができれば、その日の最初の任務完了。それによって、ささやかな誇りと、つぎの任務に向かう勇気を得ます」と。そして一日の終わりにはたくさんのことを達成し、それがいつしか大きな達成になっていく、というメッセージです。

ベッドメイク一つで、朝の心がすこやかに整い、その日一日の心が整うのです。

 

10分間、手足を動かしてみる

私はもともと、心配性なところがあり、仕事や人間関係のことが気がかりだったり、グサリとくることを言われたりすると、一日中、クヨクヨ、イライラしながら考えてしまう傾向がありました。

そんなとき、もっとも効果的な気分転換になってきたのが、「10分間、丁寧に片付けをする」という習慣です。

キッチンタイマーを10分にセットして、スタート。「テーブルの上だけ」「引き出しのこの部分だけ」と範囲を決めて、あえてゆっくりと丁寧に片付けるのです。

「丁寧に」が大事。気が焦っているとき、昂っているときは雑にやってしまいがちですが、丁寧にすることで、自然に心がこもり、いつの間にか無心でやっているもの。10分が過ぎるころには、「もうちょっと片付けたい」と思うほどですが、あえてストップ。その流れでやるべきことに移ると、丁寧に向き合うことができるのです。

「15分間、散歩する」という習慣も、ネガティブな気持ちになったときの気分転換として効果的。15分間歩くと、約1キロ。物理的に景色が変わり、前へ前へと進むので、心も後ろ向きにはなりにくいのです。

昔、母が薬の副作用でうつになり、私に当たるようになったときも、私までいやな言葉を吐かないよう、ムカッとしたら、よく近所の公園まで歩いていました。「星がきれい」「花が咲いていたんだ」なんて思いながら歩いていると、帰宅するころには心もリセットされて、笑顔になれたのです。

そんな母が、約半年前、93歳で他界しました。最後の数年間は、うつから解放されて、気分もおだやか。テレビでの野球やラグビーの観戦を楽しみにしていて、私ともその話で盛り上がっていました。

大往生だと思いつつ、私にとって唯一の家族を失った寂しさは意外に堪えたようです。ときどき心がぽっかり空いたような、こころもとない悲しみが襲ってきたのです。

 

思い浮かんだことを書き出そう

そんな私に、「ジャーナリング、やってみる?」と提案してくれた友人がいました。彼女も夫を亡くして1年間、悲しみから抜け出せずにいたところ、頭に浮かぶことを紙に書き出すというシンプルな心理療法「ジャーナリング」を毎日やることで癒やされていったと言います。

ものは試しと、朝起きてすぐ、コーヒーを飲みながら、「寂しい」「ありがとう」など、素直な気持ちをノートに書き殴ってみたところ、2週間もすると、「もう大丈夫」という気分に。自分の気持ちとともに、現実も受け入れられたのです。

自分の心の状態を客観的に見られて、そこから気づきがあったり、解決策を見つけたり。いまもジャーナリングは、感情や思考を整理するための習慣になっています。

最近、見つけた母の日記には、「リハビリの先生と冗談を言って笑った」「『PHP』を読んだ。いい話が書いてあった」「大谷選手がホームランを打った」など幸せなことが9割と、「体が痛い」などの苦しみが1割書かれていました。

毎日のように、母が「私はほんとうに幸せ」と言っていたのは、書くことで、幸せを噛み締めていたのかもしれません。

心を明るく整える習慣は、日々の生活や人生を肯定することにつながっていくように思うのです。

 

【有川真由美(ありかわ・まゆみ)】
化粧品会社事務、塾講師、新聞社広告局編集者など、多くの職業経験を生かして、働く女性のアドバイザー的な存在として書籍や雑誌などで執筆する。「なぜか話しかけたくなる人、ならない人』(PHP文庫)など著書多数。

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