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生き方

前向きな気持ちに「運」はついてくる

新井貴浩(プロ野球選手)

2012年11月21日 公開 2024年12月16日 更新

本稿は新井貴浩著『阪神の四番』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。(写真:岡村啓嗣)
 

強い気持ちと感謝の心が運を引き寄せる

自分は運がいいと思うことがある。ただ、少々生意気なことを言わせてもらえば、「運とは自分で引き寄せるものである」と思っている。

それでは、何によって引き寄せるのか――絶対に欠かせないのが強い気持ちだ。一軍でなんとかやっていけるようになったのは、打てなくても守れなくても、大下さんに怒鳴られても殴られても、結果が出なくてくじけそうになりながらも、最後は気力を奮い立たせ、立ち向かっていったからだし、主力選手のケガで巡って来たチャンスを活かすことができたのも、「ここで絶対に結果を出してやる!」という強い一念が通じた結果だと思う。

そもそも、たいした実績のない僕がプロに入ることができたのは、高校と大学で理不尽でつらい練習を課されても、逃げずに一所懸命取り組んだことが認められたからだ。そうやって鍛えられた身体と精神の強さがあれば、プロでもやっていけるだろうと評価されたからだったのだ。

野球にかぎらず、チャンスにはプレッシャーや困難がつきものだ。幸運の女神の後ろ髪をつかむには、プレッシャーや困難に打ち克たなければならない。せっかくチャンスがやってきても、プレッシャーに耐えきれず気持ちが引けてしまえば、持てる力を発揮することはできない。そうなれば、せっかくのチャンスをみすみす逃す結果になってしまうのだ。

だから、運を引き寄せるためには強い気持ちが必要不可欠なのだが、もうひとつ絶対に忘れてはいけないものがあると思っている。

「親に対する感謝の心、ご先祖さまに対する感謝の心」

そういう気持ちだ。これこそが好運を引き寄せてくれるのだと信じている。なぜなら、親やご先祖さまに対する感謝の心をいつも持っているからこそ、プレッシャーのかかるような場面でも強い気持ちを持てるからだ。困難やつらいことに立ち向かうための気力を授けてくれるのが、親やご先祖さまなのだと言い換えてもいい。

こういうことだ。僕は新井家の長男である。両親はものすごく苦労して育ててくれた。両親ががんばって生きてきたからこそ、いまの自分がいる。そして、両親も、それぞれの両親が苦労して育ててくれたからこそ、この世に存在し、僕の両親となっている。

つまり、いまの自分がいるのは、両親のおかげであり、その両親を産み、育ててくれた祖父母のおかげだと言える。もちろん、祖父母がいるのも、またその親がいればこそ……というふうに、代々のご先祖さまのおかげで僕はいま生きているわけだ。だから、「ご先祖さまに生かされている。ご先祖さまに守られている」と強く感じるし、そのことにすごく感謝している。

そして、「守られている」と思うことができるから、プレッシャーや困難に立ち向かうことができる。自分ひとりなら逃げたくなるかもしれないけれど、ご先祖さまが守ってくれていると信じられるから、つまり自分ひとりではないと思えるから、強い気持ちを持つことができ、これまで巡ってきたチャンスをつかむことができたと思うのだ。

その意味で、運というものはまさしくご先祖さまが授けてくれるものであり、その運をつかむことができているとするならば、それは両親やご先祖さまに対する感謝の心を片時も忘れていないからだ――僕は勝手にそう解釈しているのである。

あるいは、運というものは、自分の力だけでなく、ご先祖さまの力も借りて引き寄せるものだと言ってもいいのかもしれない。いずれにせよ、運を呼び込み、つかむためには、ご先祖さまへの感謝が絶対に欠かせないと僕は思っているのだ。

誤解してほしくないので念のために言っておくが、むろん、運を引き寄せるためにご先祖さまに感謝しているわけではない。それでは本末転倒だし、ほんとうの感謝ではない。そんな考え方をしていては運を呼び込むことなどできないだろう。

ご先祖さまにかぎらず、何事にも「感謝しなさい」と、僕は両親からずっと言われ続けてきた。だから、感謝するのはあたりまえのことだと考えているし、考える前に自然に感謝の心を持つようになっているのだ。

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