上昇志向の強い人は幸せになりにくい? 作家・米原万里が考えた「自分を満足させる」方法
2025年09月07日 公開
逃避――本来は向き合うべき困難や現実からそっと身を引くこと。ネガティブなものと捉えられがちなその行為を、作家・山口路子さんは「肯定する」と語ります。
山口さんは著書『逃避の名言集』のなかで、著名人や著名な作品の"逃避"に関連する名言を紹介しています。本稿では、作家・米原万里氏が遺した言葉をお届けします。
※本稿は、山口路子著『逃避の名言集』(大和書房)より、内容を一部抜粋・編集したものです
上昇志向が弱いほうが幸せの確率が高いのです
上昇志向の強い人間は、なかなか幸せになりにくい。
幸せとは自分を見つめる、もう一人の自分が、自分に満足であるときに感じる心の状態である。
満足のノルマをどこに置くかで、幸せの度合いも左右される。
――米原万里『魔女の1ダース』
----------
米原万里はロシア語の同時通訳者であり作家でもあります。とってもユニークで情熱的な文章を書く人です。
56歳で癌のため亡くなってしまったことが本当に残念です。最初で最後の書評集『打ちのめされるようなすごい本』には、亡くなる直前の原稿もあります。本への愛にあふれた、それこそ、打ちのめされるすごい本です。
上昇志向が強い人
上昇志向の強い人は幸せになりにくい。だからといって、上昇志向を否定し、すべきこともせずに現状に満足できるなら、問題は起こらないのです。
自分なりに、よりよき人生を歩みたいし、もちろん不幸よりも幸福のほうがいい。
それではどうすればいいの、と考えれば、自分自身とかけはなれたところに「満足のノルマ」を設定しないことがポイントのようです。
これはその人に客観性があるか否か、ということにも関係してきます。
米原万里は「自分を見つめる、もう一人の自分」という言い方をしていますが、これがいわゆる客観性です。この客観性をもたないばかりに、満足のノルマをはるかかなたに設定し苦しんでいる人がいます。
なんでもやみくもに「上を目指しましょう」という考え方は、幸福と遠いところにあるのです。
そう考えると、「幸せ」と「客観性」は深い関係にあるのかもしれません。