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老後の“眠れない悩み”は気にしなくていい...精神科医がすすめる「昼寝」の効用

保坂隆(精神科医)

2025年09月24日 公開

老後の“眠れない悩み”は気にしなくていい...精神科医がすすめる「昼寝」の効用

高齢になると、「眠れない」「眠りが浅い」といった睡眠の悩みを抱える人は少なくありません。

精神科医・保坂隆さんは、そんなときは無理に眠ろうとせず、むしろ開き直って好きなことをしてみるよう患者にすすめているといいます。今回は、保坂さんの著書『精神科医が教える 定年から元気になる「老後の暮らし方」』から、睡眠のモヤモヤに向き合うためのヒントとなる一節をお届けします。

※本稿は、保坂隆著『精神科医が教える 定年から元気になる「老後の暮らし方」』(PHP文庫)より内容を一部抜粋・編集したものです

 

「眠れない悩み」は気にしない 現役時代の仕事はないのです

「夜、寝床に入ってもなかなか寝つけない......」と、深刻に悩む人も少なくありません。年齢を重ねると、誰でも若いころのようにバタンキューとはいかなくなるでしょう。

ある時間が来れば眠くなり、朝が来るとすっきり目が覚める。こうした睡眠のリズムは、体内時計によってコントロールされています。でも、その「時計」ももう何十年も使ってきているのです。体のあちこちにガタが来ているのと同じで、少々、動きが悪くなったとしても許せるとは思いませんか?

「睡眠は8時間必要なのに全然眠れていない」と心配する人もいますが、実は、必要な睡眠時間は人によって、かなりバラつきがあることがわかっています。

「深く短く眠る派」もいれば「眠りが浅く、長時間眠らないと物足りない派」もいます。その人の睡眠の質によって、必要な睡眠時間は違ってきます。

だから「何時間眠らなければいけない」と時間にこだわることに、あまり意味はないのです。

たとえ眠くなくても電気を消し、部屋を真っ暗にしてしまう方法も有効です。睡眠を促す脳内物資のメラトニンは、目に入る光の量が減少すると分泌され始め、それにより脳は眠くなったと判断するのです。新幹線や飛行機などで、アイマスクをすると眠りやすいのはそのためです。

このメラトニンの元になる物質は、やはり脳内物質の一つであるセロトニン。つまりセロトニンを増やすことができれば、メラトニンも十分生成されて、眠りやすくなるわけですね。

セロトニンを増やすポイントは、大きく二つ。朝の光を全身で浴びることと、必須アミノ酸の一つ、トリプトファンをたっぷり摂取することです。ちなみに、トリプトファンは穀類、豆類、乳製品、魚などに多く含まれています。

こうした対策を講じたなら、あとは「眠れなくても気にしない」と開き直ってしまうほうがいい──。私はそう考えています。

高齢者に限らず、不眠の悩みの最大の原因は「眠れない、眠れない」と不安になり、いざベッドの中に入ってからも、ひたすら「眠らなければ......」と焦ってしまうことです。でも、もう現役時代ではないのです。翌日の仕事や家事に差し障りが出るような心配もないでしょう。

ですから、私は逆療法とばかりに「眠れないならいっそのこと起きてしまい、好きなことをなさっては?」とお勧めすることがあるくらいです。たとえば、横になって本を読んだり、ラジオを聞いたり、長編ドラマのDVDを見たり......。

そうして気がつくと朝。知らないうちに寝入っていたのですね。好きなことをしていると、「眠れない」というプレッシャーも忘れてしまうからでしょう。

そのうち、起きている疲れによって自然と寝入ってしまう......。そんなことは案外よくあるものです。

 

昼寝の効用...体内時計には「一日二回」の眠気の山がある

「睡眠が浅くなった」「トイレに起きることが増えた......」というような、睡眠の悩みを訴える人が増えています。これもひと言でいってしまえば加齢現象の一環で、ある程度はやむを得ないものです。

睡眠にはレム睡眠と、ノンレム睡眠の二つがあり、それぞれを90分くらいで繰り返しているのですが、年齢とともにこのサイクルに乱れが生じて、浅い眠りであるレム睡眠が増えてくるのです。

トイレが近くなるのは、別に夜中だけの話でなく、日中でも経験ずみではないでしょうか?「あれもトシのせい、これもトシのせい」と考えると寂しくなってしまいますが、それが老いの現実ということでしょう。

けれども、詩人の萩原朔太郎は「老は成長でもなく退歩でもない。ただ『変化』である」と言っています。年齢を重ねて、自分がそう変わってきたのだと考える。こうした発想は、大いに参考にしたいものだと思います。

夜の睡眠に変化が生じた結果、日中にとても眠くなったり、だるいなあと感じるようなら、昼寝をする方法もあります。

最近、「昼寝の効用」に関する研究発表が次々となされ、それに基づいて企業や学校でも、積極的に昼寝を採り入れるところが出てきています。

カリフォルニア大学のサラ・メドニック教授は「1時間半の昼寝は、一晩分の睡眠に等しい疲労回復効果がある」と提唱していますし、ハーバード大学でも「昼寝は、記憶力と学習能力を高める」という研究結果を発表しています。

また、人の体内時計には、もともと一日二回の眠気の山があることも知っておくといいでしょう。大きな山は夜の午前2時~4時。もう一つの小さな山は午後11時~4時。この小さな山でも、「ちょっと眠るといい」というわけです。

ただし、昼寝は最大でも1時間以内にとどめること。15~30分がベストという説もあるくらいです。これぐらいの時間で目が覚めるようにするには、昼寝の前に、コーヒーなどのカフェイン飲料を飲むのがコツだそうです。

スペインには「シエスタ」という伝統的な昼寝の習慣があります。これからは日本でも「シエスタ」を新しい習慣にしていく。その先鞭を、定年族から始めるというのはいかがでしょうか。

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