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よく眠れる人にはどんな特徴が? 「睡眠の質が高まる」4つの習慣

友野なお(睡眠コンサルタント)

2024年09月18日 公開

これからの季節は、夏の寝苦しさから解放され、一年で最も眠りやすくなるシーズンです。この時期に眠り方を見直し、人生の質を高めていきましょう。月刊『PHP』2024年10月号では、睡眠コンサルタントの友野なおさんに「最高の睡眠」を取るためのポイントについて聞きました。(取材・文:加曽利智子 イラストレーション:はまぎしかなえ)

※本稿は、月刊誌『PHP』2024年10月号より、一部編集・抜粋したものです。

 

睡眠不足が引き起こす4つの悪影響

寝つきが悪い、目覚めが悪い、夜中に目が覚める......。これらは、睡眠不足や睡眠の質が低下しているサイン。学術的な報告では、日本人の5人に1人が、睡眠に悩みを抱えているとされています。

60代以上になると、老化現象の一つで、まとまった睡眠を取ることが難しくなります。また、50代の女性は忙しすぎて世界で最も眠れていないといわれています。20代以下の若い世代でも、就寝前までスマートフォンを手放せずに眠れない人が増え、習いごとが忙しくて睡眠に問題を抱えている子供もいます。年代にかかわらず、何かしらの悩みを抱えている人が多いと言えるでしょう。

睡眠不足が続くと、大きく分けて次の4つの悪影響が出てきます。

①体への悪影響=活動量が減り、生活習慣病のリスクが上がります。
②心への悪影響=感情のコントロールが難しくなり、ストレスに対する抵抗力が下がります。イライラしたり、やる気が起きなくなったりも。
③脳への悪影響=集中力、注意力、判断力、記憶力、コミュニケーションやクリエイティブ能力がダウン。認知症リスクも上がります。
④行動への悪影響=遅刻や欠勤が増え、不登校や退職につながります。冷静な判断ができず、ケガやトラブルも。また、太りやすい行動をとるようになります。

 

ストレス解消は「レム睡眠」の間に

私がさまざまな方と接するなかでよく耳にするのが、「なかなか寝つけない」といった悩みです。さらに、「仕事のことが気になって、疲れているはずなのに眠れない」「寝る前にSNSを見たら内容が気になり、心がざわざわして3時間くらい眠れなかった」など、ストレスが関係しているものが多く見られます。

睡眠は、体は休んでいるが脳は動いている「レム睡眠」と体と脳の両方が休んでいる「ノンレム睡眠」の2種類から構成されています。

就寝直後にノンレム睡眠が訪れて、レム睡眠とノンレム睡眠が交互にくり返され、朝が近づくにつれてレム睡眠の時間が増えていくのが、質のよい睡眠です。

「レム睡眠」は眠りとしては浅いですが、記憶や感情の整理など、心の健康を保つうえで欠かすことのできない大事な睡眠。そのため、寝つけないことが多く、睡眠リズムが乱れると、心の安定を保つことが難しくなってしまいます。

レム睡眠をしっかり取るために、約7時間の睡眠を確保し、最低でも5時間を切らないようにしましょう。また、就寝中の環境や寝る前の行動、さらには昼間の過ごし方も大切です。具体的な方法を紹介しますので、実践してみてください。

 

睡眠上手は寝返り上手

寝返りには、睡眠のリズムを守る働きがあります。よい睡眠の要は「寝返りが打ちやすい環境」を作ること。まず、寝るときはパジャマに着替えましょう。スウェットなどの厚みのある生地は寝具との間に摩擦を起こし、スムーズな寝返りを妨げます。また、就寝中は冬でもコップ一杯分の汗をかくため、素材は吸汗、保湿性のある綿がいいでしょう。

次に重要なのが、マットレスと枕。マットレスは、腰など体の重い部分が落ち込まない「体圧分散」のものを選びましょう。枕は、日中の姿勢によってその晩に快適な高さが変わるため、自分で高さを調節できるタイプがおすすめです。

 

快眠のための4つの習慣

日々のちょっとした行動で、睡眠の質は上がります。

 

1. 昼寝

睡眠不足の日はもちろん、昼食後は誰でも眠くなりやすいもの。睡魔と戦いながらの仕事や家事は効率が落ちます。昼寝でエネルギーを充電しましょう。目を閉じて外部情報を遮断すると、脳の疲れが取れます。そのために、15時までに座ったままで15~20分間の短い睡眠を取るのがポイント。15時を過ぎたり、横になってぐっすり寝たりすると、夜の睡眠に影響が出るので注意しましょう。

 

2. 夜の運動

運動をすると体温が上昇し、その後、休息モードに切り替わって体温が下降する落差で、眠気が訪れます。睡眠につながる運動のゴールデンタイムは、前日に就寝した時間から19時間後。寝たのが0時なら19時といった具合です。散歩やストレッチなどで30分程度軽く体を動かしましょう。夕飯を作りながらつま先立ちやシンクの下からお鍋を取るときに屈伸など、ながら運動でもOKです。

 

3. 水曜日の夜はのんびり過ごす

月~金の5連勤の場合、心と体の不調を左右する自律神経は「木曜日」が一番乱れるといわれています。自律神経と深い関係がある睡眠の質も、月曜日から木曜日にかけて落ちていきます。そんな木曜日に備え、水曜日の夜は、残業や飲み会などの予定は入れず、自分を癒やす時間に。好きなことをしてのんびり過ごし、ぐっすり眠って爽快な木曜日を迎えましょう。睡眠の質も上がります。

 

4. 「入眠儀式」を持つ

眠る前に決まった行動をとると「これをしたから眠れる」と脳に意識づけられ、寝つきやすくなります。そこで、自分なりのナイトルーチン(入眠儀式)を持ちましょう。簡単で、自分が好きで続けられることで、大きな道具を使わないものなら、自宅でも旅先でも実践できます。ただし、体が活動的になること、神経を使うことは、逆に寝つけななくなってしまうので避けましょう。

 

眠れないときにやってほしい3つのこと

焦らず、リラックスすることが大切です。

 

①ベッドから出る

以前は、寝つけなくても横になることが推奨されていました。でも無理に横になっていると、思考が巡り始めて脳が興奮し、ますます眠れなくなる悪循環に。30分たっても寝つけなかったら、ベッドから出て過ごしましょう。

 

②絶対に時計を見ない

時計を見ると、「2時間たったのにまだ眠くない」「起床まであと4時間しかない」など、無意識のうちにも計算をして、眠れない時間が長いほど、焦って寝つけなくなります。気になっても、時計を見るのはやめましょう。

 

③単調な作業をする

テレビを見る、ゲームをするのはやめましょう。光の刺激で脳が覚醒します。なるべく頭を使わない単調な動きで脳はリラックスし、しだいに眠くなります。作業に夢中になりすぎず、眠い感覚が消える前にベッドに戻るのがポイントです。

 

\寝つきに抜群! 絵本を読む/

イギリスの研究では、「6分の読書」が散歩やコーヒー、ゲームや音楽鑑賞よりもストレス解消効果が高かったといわれています。私が寝つきに効果抜群と実感したのが、小学校低学年向けの絵本を読むこと。難しい漢字がなく、10分弱で読み切れて、ストーリーもおだやかなものがほとんど。童心にかえり、温かい気持ちが安眠へと導いてくれます。

 

ストレスが減る「スリープヨガ」に挑戦!

手足が冷えると寝つきが悪く、途中で目が覚めることも。血行をよくして快眠へといざなうヨガを紹介します。つらかったら、できるところまででOK。美しいポーズよりも、腹式呼吸で体をリラックスさせることを意識しましょう。

 

①あお向けになり、両膝を立て、足を肩幅に開く。息を吐きながら両膝をおなかまで持ち上げ、息を吸いながら左右の足を外側から手でつかむ。

②左右の膝を、体の外側まで広げ、脇の方向へ引き上げながら、すねを床に対して垂直の位置になるように持っていく。足の裏が天井を向くように。

③息を吸いながら両膝を床に引き寄せ、吐きながら両膝をゆるめて少し床から離す。30秒~1分間、それぞれのポーズをキープしたら、ゆっくりと足を下ろす。

 

著者紹介

友野なお(ともの・なお)

睡眠コンサルタント

順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科にて睡眠を研究し、修士号を取得。現在は千葉大学大学院医学博士課程にて睡眠とソーシャルキャピタルを研究し、行動療法からの睡眠改善や快眠のための空間作りについて講演なども行なう。『人生まですっきりする眠りかた』(王様文庫)など著書多数。

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