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毎日不安で「寝たいのに寝られない」…医師が教える“深い呼吸”の効能

小林弘幸(順天堂大学医学部教授/日本体育協会公認スポーツドクター)

2020年12月09日 公開 2024年12月16日 更新

自律神経の切り替えができるかどうかが、睡眠の質に大きな影響を与える。順天堂大学教授で、自律神経研究の第一人者である小林弘幸氏は、その自律神経を整える最も有効な方法は、「呼吸」を意識することだと語る。

自律神経が睡眠に与えるメカニズムと共に、質の良い睡眠をとるための具体的な睡眠技術についてうかがった。

※本稿は『THE21』2021年1月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「熟睡ルーティン」で質の高い睡眠を習慣に

映画も空前絶後の大ヒットとなった漫画・アニメ『鬼滅の刃』では、主人公たちが〝全集中の呼吸〟で一瞬にして集中力と身体能力を高め、鬼を倒す術を繰り出します。呼吸の持つ計り知れないパワーと可能性を感じながら、作品の世界を楽しまれたのではないでしょうか。

私は自律神経の研究をするようになってから、心身の状態を整えるのに「呼吸」が最も重要であることを説いてきました。 日常生活では、自分の呼吸がどんな状態にあるかを意識することはあまりありません。

しかし実は、呼吸は心身の状態を劇的に変える力を秘めています。例えば、日本で働いているときは体調が冴えなかったのに、ハワイなどのリゾート地に行った途端、改善したという経験はありませんか? これは「呼吸」が変わったのです。

快適な気候で、海や山など美しい風景が目の前に広がっている。それが深くゆっくりとした呼吸をもたらし、心身の状態を激変させていたのです。

この「呼吸」、睡眠とも深く関係していますので、呼吸から始まる「熟睡ルーティン」をご紹介していきます。

 

自律神経が衰えるとストレスを引きずりがち

ウィズコロナとなった今、世の中は急激に変化しようとしています。こうした時代は人々の抱える不安や恐怖が倍増し、不眠や体調不良を訴える人が急増します。どんな時代にあっても、しなやかに生き抜くには、「健康の資本」が絶対不可欠です。

健康の資本とは「運動と食事と睡眠」から成り立ちますが、最優先すべきは「睡眠」です。なぜなら、運動や食事は数日おろそかになってもダメージは大きくありませんが、眠れない日が1日でもあれば、翌日から不調をきたし、回復に1週間かかることもあります。

さらに1週間不眠が続けば、そのダメージは甚大で、回復に1カ月はかかるでしょう。逆に言えば、良い睡眠をとることを目標に運動や食事を工夫することで、常にベストパフォーマンスを発揮できる状態が維持できるのです。

今、睡眠で悩まれている方は、子供の頃を思い出してみてください。布団に入れば、すとんと眠りに落ちていたはずです。その頃と一体何が変わってしまったのでしょう? 最大の原因は「自律神経の衰え」です。  

自律神経とは、内臓各器官の働き、とりわけ血流をコントロールしている生命活動のライフラインです。自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があります。

人間の身体をクルマにたとえると、交感神経は身体を興奮、緊張した状態にするアクセルで、副交感神経はリラックスした穏やかな状態にするブレーキ。そして、人間の身体には、日中は交感神経が優位で、夜になると副交感神経が優位になる生体リズムが備わっています。

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「深い呼吸」が熟眠ルーティンをつくる

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