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仕事

「話が合わない同僚や部下」ともうまくやれる人の2つの習慣

越川慎司(株式会社クロスリバー代表取締役社長)

2025年10月14日 公開

20年以上にわたりリーダーとして経験を積み、これまでに2万人以上の人材育成に携わってきた越川慎司さん。著書『一流のマネジャー945人をAI分析してわかった できるリーダーの基本』では、管理職の負担を軽減しながらチームの成果を高めるための実践知が紹介されています。

「上司は偉い」「顧客が絶対だ」という上下関係は終わり、互いに感情を共有し、解決策を共につくる"共感・共創の時代"に突入した――と本書では指摘されています。リーダーとメンバーが「良い関係」を築くことは、成果の向上や個々の成長を実現するために欠かせないのです。

本稿では、働き方改革のプロである越川さんに、現場で効果を発揮する「コミュニケーション」の取り方について伺いました。

 

会議をコミュニケーションの場と勘違いしてはいけない

――「若手と何を話したらいいのか分からない」という管理職の方は多いのではないでしょうか。立場や年齢の異なる相手と、うまくコミュニケーションをとるために意識すべきポイントがあれば教えてください。

【越川】2つポイントがあります。

まず1つ目は「会議をコミュニケーションの場と勘違いしないこと」です。社内会議はコミュニケーションの場ではありません。

定例のチームミーティングでは、41%の参加者が"内職"をしているという調査結果もあります。聞いているふりをしているだけで、本当は聞いていないんです。

さらに会議はどうしても上下関係が前面に出やすく、意思決定者がファシリテーションを担ってしまうことも少なくありません。そうなると、結局は意思決定者の思いのままに話が進んでしまいます。だから会議が「お山の大将の場」になり、上司は話していて気持ちいいので会議がなくならないのです。

会議をたくさん行ったからといって腹を割って話せるようになるわけではありません。できるリーダーはむしろ会議の時間を減らし、1対1の対話を増やしています。たとえば定例会議を60分から45分に短縮して、その分を1on1に充てる。それが最初に取るべきアクションです。

 

共通点を2つ探す

2つ目は「共通点を探すこと」です。年齢や性別、国籍、バックグラウンドが違えば、話が合うわけがないです。心理学者のアドラーも「人は完全にわかり合えない」と言っているので、そもそも無理な話なんですよ。

でも仕事上は協力が必要です。だから大切なのは、過剰な気遣いを減らし、共通点を見つけることです。過剰な気遣いは生産性を落とすことがわかっています。

また、調査では相手と共通点が2つ以上あると腹を割って話しやすい関係になりやすいことも判明しました。特に効果的だったのは、飲食の話題です。

天気やニュースの雑談をしがちですが、8割以上がネガティブな内容になってしまいます。「今日は暑いな」とか「コロナが流行ってきたな」のように。そうするとテンションも下がってしまいますよね。

しかし、食べ物は誰にでも共通するテーマです。たとえば「今日のお昼にラーメンを食べて眠くなった」とリーダーが弱みを見せると、若手が「私もラーメン好きです」と返してくれる。そこから会話が広がります。

「九州の屋台ラーメンが美味しかった」といった話から、「実は僕、九州出身で」と共通点が増える。このように自然と腹を割って話せる関係性になるんです。実際、20代のラーメン好きは以前より2倍に増えているというデータがあります。

自分から腹を割って話すこと。「お昼ご飯なに食べた?」と聞いても、若い人たちは、「適当に食べました」と返すことが多い。ちゃんと答えてくれる人は、大体半分ぐらいしかいません。

しかし、リーダーが「今日お弁当を家から持ってきたんだけど足りなかったんだ。みんなはお昼何食べた?」と聞くと、8割以上の人がしっかり答えてくれます。

このように、返報性の原理で自分が腹を割れば、相手も腹を割ります。相手を観察しながら恐れずに共通点を見つけるというコミュニケーションを、会議ではなく、対話の中で行うことが大切です。

優秀なトップセールスも、最初の5分でお客様との共通点を必ず探しています。これはリーダーに必要なスキルです。

 

飲み会よりランチ、タバコ部屋ではなく自販機の前

――最近では飲み会も少なくなって、コミュニケーションをとる場が以前よりも少なくなっているかもしれません。

【越川】腹を割って話せる関係性を作る「関係構築モード」では、以前は飲み会やタバコ部屋が重要でした。でも今はその文化がなくなってきています。そこで有効なのがランチです。時間外ではないし、食堂を備えている会社なら気軽に誘える。飲み会よりハードルが低いです。

また、調査で分かったのは「自動販売機の前」が一番関係性を作りやすいということ。偶然コーヒーを買いに行ったら同僚に会って、そのまま雑談になる。こうした偶発的な出会いが関係性を深めます。

1on1をルール化している企業が6~7割ありますが、1on1はあまり会議室でやらない方がいいこともわかってきたんです。会議室でやると"面談"になってしまうので、自販機横の丸テーブルや社員食堂、近くの喫茶店など、カジュアルな場で行った方が関係はフラットになりやすいです。

飲み会ではなくランチ、タバコ部屋ではなく自販機の前...。これがうまくいきやすいコミュニケーションの場だと判明しています。

 

著者紹介

越川慎司(こしかわ・しんじ)

株式会社クロスリバー代表取締役社長

2005年に米マイクロソフトへ入社し、後に日本マイクロソフトの業務執行役員としてPowerPoint、Excel、Word、Microsoft Teamsなど、主要プロダクトの事業責任者を歴任。

2017年、株式会社クロスリバーを設立し、全メンバーが週休3日制と複業(専業禁止)を実践する独自の働き方で、これまでに800社以上の業務改善・働き方改革に携わる。教育者としても活動し、京都大学大学院をはじめとする教育機関で教壇に立つ一方、年間400件を超えるオンライン講座を展開。受講者満足度は平均98%を誇り、学んだ内容を実際の行動に移す受講者が95%を超えるなど、確かな成果を上げている。

著書は直近8年間で32冊に上り、『仕事の「ムダ」が必ずなくなる 超・時短術』(日経BP)や『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は海外でも翻訳・出版されベストセラーとなる。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」ほか、多数のメディア出演実績を持つ。数字に裏打ちされた具体的なノウハウと豊富な実績を基盤に、組織と個人のパフォーマンス最大化を支援し続けている。

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