「投資をするのは、ある程度お金が貯まってから」と、普通預金で銀行に預けっぱなしにしていませんか。たとえ少額でも、若いうちから投資を始めておくと、将来大きな差が出ます。ファイナンシャルプランナー(FP)として、多くの人からお金の相談を受けてきた「かわゆ先生」こと川口幸子さんが、なぜ若い人ほど「今すぐ投資を始めるべき」なのか、具体的な数字をもとに解説します。
本稿は、川口幸子著『FP歴30年の母が20代の娘に伝えたい人生が変わるお金の話』(日本実業出版社)より一部抜粋・編集したものです。
※本稿は2025年12月時点の情報に基づき、投資に対する考え方を示したものであり、個別の金融商品を推奨するものではありません。金融商品の価値は状況によって変動しますので、購入の可否を含む投資の判断はご自身の責任で行うようお願いいたします。
なぜ「時間を味方につける」ことが大切なのか?
投資は「時間を味方につける」ことで、大きな力を発揮します。だからこそ、投資の世界では「今すぐ始める」ことが大切だと繰り返し言われるのです。とくに若い人には、長い時間を使って運用できるという圧倒的なアドバンテージがあります。
たとえば、65歳をリタイアの目標とした場合、20代で投資を始めれば40年もの運用期間を確保できます。この「長い時間」が、投資のリスクとリターンのブレを平均化してくれるため、大きな安心材料になります。
一方、60歳になってから投資を始めると、仮に70歳まで働いたとしても運用期間は10年ほど。この短期間では市場の上下動に影響を受けやすく、リスクも高まります。
過去には1987年のブラックマンデーや、2008年のリーマンショック、2020年のコロナショックなど、株式市場に大きな影響を与える出来事もありました。
過去155年分の株価チャートからは、
①長期的には右肩上がりで成長
②大幅な下落後も数年かけて株価は回復
の2つがわかります。
こうした歴史からも、長期投資がどれほど重要かがわかります。
20代で始めれば、たとえ少額からのスタートでも、複利の効果で資産は大きく育ちます。先ほど書いたように、65歳を目標とするなら40年間も投資に時間を使えるのです。
今始めるかどうかで、将来の資産額には大きな差が生まれます。
また、長期投資であれば、途中で一部を引き出すなどの選択肢も生まれます。ゴールまでの道のりが長ければ長いほど柔軟に対応できるのです。大切なのは、「いつかやろう」ではなく「今、始める」こと。時間こそ最大の武器であり、味方なのです。
複利の力を最大限に活かすには、とにかく早く始めること。少額でもいい。まずはスタートを切ることが、未来の自分を助ける第一歩になります。
アメリカでは40歳前後でFIREも
20代は、資産形成を始めるには最も有利なタイミングです。
なぜなら、「時間」が最大の味方になるからです。たとえ少額でも、若いうちからコツコツ積み立てていけば、将来の大きな差につながります。
まずは、毎月5000円を「そのお金はなかったもの」として、自動で積み立てましょう。ただし、預金ではなく、NISAの「つみたて投資枠」などを活用して世界株などの投資信託に回すのがポイントです。毎月一定額をコツコツ積み立てていく方法で、時間を味方に、複利の力でお金を育てていきます。
投資初心者にとって大切なのは、「無理をしないこと」と、「周囲に流されないこと」です。みんながやっているからと、なんとなく始めると、経済に関する不安なニュースに心が揺れ、映画や食事も楽しめず、やがて「怖いからやめよう」となってしまいます。
結果的に価格が下がった時にやめてしまって損失を確定し、「やっぱり投資は怖い」と悪い印象だけが残ってしまいます。
そうならないためにも、自分で投資について理解してから始めましょう。
ネット証券で口座を開設し、S&P500や全世界株式のようなインデックスファンドを選び、毎月5000円ずつ積み立てていきます。
毎月5000円を年利7%の投資信託で10年間積み立てると、投資総額60万円がおよそ88万円になります。これが40年続いたと仮定すると、投資総額240万円が1280万円を超える可能性もあります。
さらに、アメリカには年平均15%前後のリターンを記録してきたファンドも存在します。5000円を40年間投資すれば、最終的には1億円超となる計算も理論上は可能です。もちろん、常に高利回りが保証されるわけではありませんが、「やめずに続けること」が最大のポイントです。
投資に慣れてきたら、毎月の収入の1割を追加で投資に回すと、より大きな成果が期待できます。たとえば、毎月2万円を年利7%で20年間積み立てれば、投資総額480万円が1000万円を超えることもあります。
同じく、3万円を年利15%で20年間運用した場合、元本720万円が4000万円超になる可能性も。
アメリカでは、40歳前後でFIRE(Financial Independence, Retire Early:経済的自立と早期退職)を達成する人も増えています。もちろん、彼らは社会と関わりを持ちつつ、自分の時間を大切にする生活を送っている人がほとんどです。
今の一歩が、20年後の大きな安心につながります。「時間」と「習慣」を味方につけ、まずは5000円からでも投資生活を始めてみましょう。
お金が増える「4つの力」を味方にしよう
資産運用を始めるにあたって、知っておきたいのが、「時間」「金利」「分散」「複利」の4つのキーワードです。
これらは単体で理解するだけでなく、組み合わせて活用することで大きな効果を発揮します。以下にそれぞれの役割と関係性について説明します。
【1】時間を味方にする
まず〈時間〉です。投資において「時間を味方につける」ことは最大の武器になります。金融市場は日々変動していますが、長期的に見ると経済は成長し、市場全体も上昇する傾向があります。短期間では利益が出たり損をしたりする不安定さがありますが、10年、20年と長い目で見ることで、リスクが平均化されて安定した成果を得やすくなります。
短期で儲けようとするのは「投資」ではなく「投機」に近く、運任せになりがちです。
【2】金利はお金を増やすエンジン
次に〈金利〉です。
金利とは、元本に対してどれだけの利回りがあるかを示すもの。預金でも投資でも、金利(利回り)が高いほど資産は効率よく増えます。たとえば金利0.2%の銀行預金に100万円を預けても10年後に増えているのは2万円で、増えている実感はほとんどないでしょう。
一方で、年利5〜7%といった商品に投資をしていれば、60万〜100万円の増加となるなど、時間と複利の力で資産は大きく増えていきます。
【3】分散でリスクをやわらげる
そして〈分散〉です。投資先を複数に分けることは、リスクを減らすための基本です。1つの金融商品に全額を投資してしまうと、その資産が値下がりした時に損失も大きくなります。
しかし、株式、投資信託、債券、金、外国資産など、異なる特徴を持つ資産に分散して投資することで、ある資産の価値が下がっても他でカバーできる可能性が高まります。これを「ポートフォリオ」(保有する金融商品の組み合わせや割合)として整理することで、自分のお金がどう分配されているかを把握できます。
【4】複利は「雪だるま」のように増える
最後に〈複利〉の力です。複利とは「利息が利息を生む仕組み」のこと。たとえば、100万円を年利7%で運用した場合、1年後には107万円になります。翌年はこの107万円に対して7%の利息がつくため、より多くの利益が得られます。年利7%であれば、10年続ければ元本がほぼ2倍になります。これが複利の力です。
このように、「時間」「金利」「分散」「複利」は、どれも投資において欠かせない要素であり、組み合わせることで相乗効果が生まれます。たとえば、分散投資でリスクを抑えつつ、時間をかけて複利を活かし、金利の高い商品に長期で積立する。この基本に忠実な投資スタイルこそ、初心者でも着実に資産を増やしていくための王道といえるでしょう。