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最近よく聞く「ポンジ・スキーム」に要警戒 “絶対儲かる”で騙す巧妙な手口

川口幸子(金融コンサルタント)

2025年12月25日 公開

「貯金だけでは不十分、投資でお金を増やそう」と考える人が増えています。しかし、気を付けなければならないのが詐欺などの罠。「高利回り」「リスクゼロ」という謳い文句は「危険度MAX」です。どうすれば詐欺や危ない投資にひっかからずに、自身のお金を守ることができるでしょうか。ファイナンシャルプランナー(FP)として、多くの人からお金の相談を受けてきた「かわゆ先生」こと川口幸子さんが、具体的な事例をもとに注意点を解説します。

本稿は、川口幸子著『FP歴30年の母が20代の娘に伝えたい人生が変わるお金の話』(日本実業出版社)より一部抜粋・編集したものです。

 

向こうからやってくる「うまい話」はまず疑う

「絶対に儲かる投資がある」「短期間で資産が倍になる」「今だけのチャンス」
こんな言葉を聞いたことはありませんか?
あるいは、友人や知人からそんな話を紹介されたことはありませんか?

こうした"うまい話"には、共通の特徴があります。それは、必ずと言っていいほど「向こうからやってくる」ということ。あなたが探していないのに、相手のほうから近づいてきて、「得をするチャンスですよ」と甘い言葉を投げかけてくるのです。

実は、世界の富裕層、とくに欧米のユダヤ人投資家たちの間ではよく知られている「お金を守る鉄則」があります。彼らはこう言います。
「本当に儲かる話は、他人には教えない」。それが真実です。

もし、あなたがまだ何も知らない状態で、「これは特別だから」「今だけだから」と投資話を持ちかけられたら、まず疑ってかかるべきです。
なぜなら、そうした儲け話の多くは、あなたのお金を狙っているからです。投資話をしてくる相手が本当に親切心から動いているのなら、なぜ見ず知らずの他人に儲け話を教える必要があるのでしょうか?

とくに注意したいのが、「高利回り」や「絶対に損しない」といった表現のもの。金融の世界において、「リスクゼロで高収益」という話はまず存在しません。もしそれが本当に安全で確実なら、世の中の誰もがすでに始めているはずです。

最近では、SNSやマッチングアプリを通じた詐欺も増えています。架空の利益画面を見せて信用させ、少額の入金から始まり、やがて高額投資を持ちかけられる。そして最後には出金できず、連絡が途絶える...。こうした手口で多くの人が被害にあっています。
だからこそ、忘れてはいけないのは、「お金は時間をかけて増やすもの」だということ。急激に、確実に儲かるものは存在しません。
まずは、「うまい話が来た時こそ、一歩引いて考える」。この習慣を身につけるだけでも、お金の失敗から自分を守ることができます。

 

「ポンジ・スキーム」とは何か?

「これ、絶対儲かるから」
「月利 20%、しかもリスクなし」
もし誰かがあなたに"あなただけに"と、こうした話を持ってきたとしたら、まず疑ってください。とくに最近多いのが「ポンジ・スキーム」と呼ばれる詐欺です。

ポンジ・スキームとは、実際には投資運用を行っていないにもかかわらず、他の出資者から集めたお金を「配当金」のように装って支払う手口。資金が集まっている間だけは配当が出続けますが、自転車操業なので、いずれ崩壊します。名前の由来は、1920年代にアメリカでこの手口を広めた詐欺師チャールズ・ポンジです。

近年、日本でもこのような手口による被害が多発しています。
たとえば、仮想通貨の自動売買を謳うP案件では、月利 20%の高配当を強調。250万円を入金し「350万円に増えた」と喜んだ矢先に、出金停止となり、最終的には資金が戻らないという被害が多発しました。
他にも会員制クラブを通じた海外FX投資のS案件も話題になりました。SNSや口コミを通じて、まるで限定情報のように広まり、信頼する友人や知人からすすめられて始めた人も少なくありません。しかし、2021年以降、お金が戻ってこないとの報告が相次ぎました。

さらには、E会社が、「FXで安全に運用する」と説明し、東京・六本木の一等地にオフィスを構えるなどして信用させ、結果的に約500億円の被害を出した事件もありました。内装の豪華さや見せかけのセミナーに安心してしまった人も多かったようです。

そして古典的ながら根強い「未公開株詐欺」もあります。
「必ず上場する」「あなた限定で紹介」「高値で買い取る」といった話には注意が必要です。そもそも本当に価値ある株があれば、一般に出回る前に証券会社や機関投資家が買い占めるのが普通。わざわざ素人に回ってくる理由がありません。

これらに共通するのは、以下のような特徴です。
「高すぎる利回り(年10%以上)」「リスクがないと断言される」「紹介制」「すぐ始めるよう急かされる」「金融庁に登録されていない」「出金がやたらと手間」「セミナーやサロンで安心させる演出」など。
大切なお金と時間を守るには、「そんなにうまい話はない」と冷静に考えることが何より大切です。「聞く耳を持たない」ことこそが最大の自衛策です。被害にあわないために、怪しい話は最初から断る勇気を持ちましょう。

 

「海外投資」はリスクが高い

「海外の不動産で高利回り!」「外国ファンドで資産倍増!」ーーこんなワード、SNSやYouTubeで見かけたことがあるかもしれません。
実際、海外投資って、なんだかかっこよく聞こえますよね。
円安・物価高が続く今、「日本の資産だけじゃ将来が不安...」という気持ちから、海外に目を向ける若い世代も増えてきました。

でも、お金の専門家として、あなたに伝えたいことがあります。
海外投資は、情報が取れない時点で「危険度マックス」です。
たとえば「フィリピンのコンドミニアムが利回り12%」「タイのリゾート開発案件で3年後に倍になる」など、実際に私のもとにも、そういった投資話に関する相談がよく届きます。ですが、その詳細を聞くと、「物件の所在地が不明確」「契約書が英語で読めない」「日本の金融庁に登録されていない業者」...と、ツッコミどころ満載です。

 

情報が手に入らない投資はギャンブル

まず大前提として、情報が手に入らない投資は、ほぼギャンブルです。
投資に必要なのは、「いい話かどうか」ではなく、「正確な情報に基づいた判断ができるかどうか」です。その国の法律、税制、経済状況、不動産市場の変化、トラブルが起きた時の対応手段...そういった背景を自分で調べて、納得できるかどうかが、投資のスタートラインです。

それに、言葉の壁があります。契約書も説明も英語や現地語で書かれていることが多く、内容を100%理解するのは簡単ではありません。
「現地に精通した日本人がサポートしますから安心です」と言われても、その人が信頼に値するのか、万が一トラブルが起きた時にどう対処してくれるのかは、かなり不透明です。
また、こうした案件を持ちかける業者の中には、日本の金融庁に登録していない「無登録業者」も少なくありません。登録されていない場合、たとえ被害にあっても公的な保護の対象外になるため、泣き寝入りせざるを得ないケースも。

つまり、日本で保険に入っていないクルマを運転するようなものーー事故が起きたら、全責任は自分持ち、という状況です。

 

わからないものには投資しない

もう1つ大事な視点。それは、「わからないものにお金を出さない」という、投資の鉄則です。
わからない=不安になる。その不安を「でも儲かるかも」で打ち消そうとすると、判断を誤りやすくなります。大事なのは、「これは自分がきちんと理解できている商品か?」「リスクが説明されているか?」を自分に問いかけること。

とくに20代は、投資の土台をつくっていくタイミングです。海外投資をするなとは言いません。
でもそれは、もっと経験を積んで、「情報を集める力」「契約を読み解く力」「疑う目線」が育ってからでも遅くありません。焦らず、今はまず国内での基本的な資産形成に力を入れるほうが、よっぽどリターンは大きくなるのです。

著者紹介

川口幸子(かわぐち・ゆきこ)

金融コンサルタント

金融コンサルタント、ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引士、国際認定コーチ、マネーセミナー講師。家庭の事情から幼少期に祖父母の元で暮らし、米国や英ロンドン、日本の行き来を経験。資産家ユダヤ人や欧米人富裕層との出会いから"欧米式のお金の教育"を受けて育ち、8歳で長期積立分散投資をスタート、13歳で約400万円を貯める。銀行勤務を経てFP・金融コンサルタントの道へ。金融教育や講演にも力を入れ、現在約4500名の顧客を抱えている。通称、「かわゆ先生」。

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