優秀な上司ほど“デキる部下を潰してしまう”3つの理由
2026年01月09日 公開
優秀な部下だからこそ期待が大きく、他の社員よりも厳しく指導してしまう。今までにそうした経験がある上司の方もいるかもしれません。
優秀な部下は、そうした上司の期待に応えようとして頑張りすぎてしまい、キャパオーバーで壊れてしまう可能性がある――経営難の企業の再建も担ってきた前田康二郎氏は、そう指摘します。本稿では、前田康二郎氏の著書『デキる上司がデキる部下を潰してしまう。はなぜ起こるのか?』より、デキる部下と接する上で知っておきたい3つのことを解説します。
※本稿は、前田康二郎著『デキる上司がデキる部下を潰してしまう。はなぜ起こるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
「自分のように」をしてしまうと部下が壊れる
デキる上司とデキる部下の最も大きな違いの一つは経験値です。上司が「良かれと思って」した指導が逆に部下にとって重荷になり、最悪の場合潰れてしまうということがあります。その原因は、上司が「今日現在の自分自身の経験値も加わった実力」をベースにして部下にそのまま割り引かず指導してしまっているからです。
40歳の上司が25歳の部下に教えるときに、自分の25歳の時をベースに部下に寄り添えばいいものを、40歳の今の実力をそっくりそのままを25歳の部下に習得してもらおうと躍起になってしまうから潰れてしまうのです。
そのような指導では、いくらデキる部下であってもこなしきれません。しかもデキる上司からの指導ですから言っている内容は間違ってもおらず、悪意による指導でもないので断ることもできず、そうこうしているうちに自分のキャパシティをオーバーして壊れてしまうのです。
デキる上司は、デキる部下に出会った時こそ、都度「相手の経験値に立って」そして、「部下と同じ年だった自分の経験値」を思い出して、そのレベルに見合う、無理のない指導をしていただければと思います。そして部下に指導の「強度」を定期的に確認してください。
部下が「もう少し負荷をかけてもらって大丈夫です」と申し出てきたらそれに合わせて増やし、「ちょっとこれ以上の負荷は今厳しいです」という場合は、無理強いせず、さっと引き下がりましょう。デキる上司とデキる部下の経験値の差は、AIをもってしても補完できません。
経験値の違いは、職場のさまざまなシーン、「心身を壊さない、潰さない」ことにも大きく寄与しています。ここでは、経験値の差により生じる違いにフォーカスし、なぜデキる上司が「壊れにくい、潰れにくい」かについてお伝えしていきます。
上司と部下では“耐性”が違う
耐性というと、業務量や仕事の難易度、そして何度失敗しても成功するまではあきらめない精神力、といったものを想像する方も多いでしょうが、それに関しては、デキる部下もイメージがついているでしょうし、自分で感覚も掴めると思います。
それよりも「何を言われても全く動じないぞ」といった、「良い意味」での図々しさや厚かましさ、また「何を言われてもこの会社に最後までしがみついてやるぞ」という「良い意味」での居直りといった耐性が、デキる部下の中には弱いケースがあります。それが心身の不調をきたすきっかけとなるのです。
職場には、周囲から「あの人、よくずっと会社に居座り続けているよね」と揶揄されても全く我関せず、堂々と出社している人もいることでしょう。職場で生き残るということは、ある意味、そうした「良い意味」での図々しさや厚かましさ、ふてぶてしさの耐性が高い人とも対峙して生き残っていかなければいけません。
そのような耐性は、いくら仕事ができるといっても、若い年齢では耐性が育っていないケースが多いのです。そのため、たとえば社内改革で反対勢力を説得する、というような業務をデキる部下が行う際には、そのようなネガティブな耐性が強い相手に部下が追い込まれてしまわないよう、上司は、常に見守っている必要があります。
上司と部下では“対処能力”が違う
仕事でアクシデントが起こった際に、どのような対処をしてその場を乗り切るか、あるいは課題解決をするかという点において、デキる上司はさまざまな場面を経験してきています。そのため、経験値が積み上がるほど、過去に自分が経験したケースから類似案件を自分の記憶から引き出し、その場でアレンジをして対処するということができます。
しかし、まだ経験の浅い若いデキる部下の場合、そのストックがそこまでありません。そのため、アクシデントが起こる度に、一からどう対処、解決すべきかを考えなければいけないことも多いですので、緊急性や不確実性の高い事象が起こりやすい業種や業務の職場では、日々起こるアクシデントの対処だけでデキる部下が疲弊してしまうことがあります。
上司が「うちの部下は私と同じくらい能力が高いからいろいろと仕事を任せても大丈夫」と思っていても、アクシデントが発生した時に対処する「手数の量」が上司と部下では全く違いますから、上司はその点を留意して、上司と部下とは「能力+経験値(アクシデントに対処する手数)」の合計で比較し、部下の業務量を加減してください。
上司と部下では“順応性”が違う
「流行に乗る」という意味での「順応性」に関しては若い世代のほうが慣れているかもしれませんが、こと組織への順応においては逆ではないかと思います。たとえばチーム単位で行動する仕事において、自分の意見が誰かと対立する場面があったとします。
デキる上司であれば、対応能力と同様に、過去の経験から、自分の意見を「妥協して相手に合わせてもいいもの」と「どうしても自分の主張を曲げられないもの」とをその場で手短に精査し、相手と交渉をして双方に最適な落としどころを見つけ、業務を先へ進めていくことができます。お互いにその場の状況に順応していくということです。
しかし、経験値が少ない場合、そのような交渉テクニックもまだ持ち合わせておらず、「順応=妥協=負け」という発想で、自分の意見や主張を一切曲げずに順応を拒否して、業務が先に進まなくなるケースもあります。
周囲から見ると「頑固」「融通が利かない」ように見えるものは、単に「順応するためのテクニックを持ち合わせていないだけ」ということもあります。
そのため、もし部下がそのような場面の当事者によくなっているようでしたら、上司がご自身の経験値を部下にインプットする、ビジネス書やセミナーなどで、他者の解決事例をインプットするなどして、部下の手数を物理的に増やすことも、組織への順応性を高める効果があります。