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キノベス2026は『世界99』が大賞に けんご×スケザネが語りつくした傑作の数々

PHPオンライン編集部

2026年02月03日 公開


(左)けんごさん、(右)渡辺祐真さん

2026年1月31日の閉店後から2月1日の早朝にかけて、紀伊國屋書店新宿本店で初開催されたオールナイトフェス「KINOFES 2026」。リアル書店にしかない価値を再定義する試みとして行われたこのイベントでは、ライブトークや選書企画と並び、「紀伊國屋三賞」の発表が行われました。

「紀伊國屋三賞」は、過去1年間に刊行された新刊を対象に、紀伊國屋書店のスタッフが自分で読んで本当に面白いと感じた本を選び、読者に届けるための賞です。この日は、小説紹介で知られるけんごさんと、書評家の渡辺祐真(スケザネ)さんをゲストに、司会を紀伊國屋書店新宿本店の書店員・竹田さんが務めました。

 

紀伊國屋じんぶん大賞2026は『斜め論』

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大賞:『斜め論―空間の病理学』松本卓也(筑摩書房)
2位:『会話の0.2秒を言語学する』水野太貴(新潮社)
3位:『クィア・レヴィナス』古怒田望人/いりや(青土社)
4位:『庭の話』宇野常寛(講談社)
5位:『生きることでなぜ、たましいの傷が癒されるのか―紛争地ルワンダに暮らす人びとの民族誌』大竹裕子(白水社)
6位:『人びとの社会戦争―日本はなぜ戦争への道を歩んだのか』益田肇(岩波書店)
7位:『カウンセリングとは何か―変化するということ』東畑開人(講談社)
8位:『性/生をめぐる闘争―台湾と韓国における性的マイノリティの運動と政治』福永玄弥(明石書店)
9位:『内在的多様性批判―ポストモダン人類学から存在論的転回へ』久保明教(作品社)
10位:『アセクシュアルアロマンティック入門―性的惹かれや恋愛感情を持たない人たち』松浦優(集英社)--------------------------------

最初に発表されたのは紀伊國屋じんぶん大賞2026。過去1年間の新刊人文書の中から選ばれた第1位は、松本卓也さんの『斜め論』でした。

スケザネさんは本作について、「成長や上昇といった"縦"の価値観、連帯や横並びの"水平"の価値観、そのどちらかではなく、両方を組み合わせた"斜め"の視点を提示している」と解説。

「上昇志向に絡め取られず、かといって馴れ合いにもならない。そのための視点が、精神病理学や哲学の理論を使いながら語られている」と、その読みどころを語りました。

けんごさんは率直に、「正直に言うと、最初はちんぷんかんでした」と笑いを誘いつつも、「今の説明を聞いた上で読むと、まったく違う捉え方ができると思う」とコメント。「『斜め論』というタイトル自体が、これから広がっていきそうな言葉だ」と評価しました。

スケザネさんからは、『会話の0.2秒を言語学する』『庭の話』『カウンセリングとは何か』など、同賞に並んだ作品にも触れ、「とてもいいランキングだと思う」と、2026年の人文書シーンの充実ぶりを強調しました。

 

キノベス!キッズ2026は『ある星の汽車』

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1位:『ある星の汽車』森洋子(福音館書店)
2位:『どろぼうジャンボリ』阿部結(ほるぷ出版)
3位:『くも』しおたにまみこ(偕成社)
4位:『まてないの』ヨシタケシンスケ(ブロンズ新社)
5位:『みえないおしごと』とくながけい(中央公論新社)
6位:『超チョウ図鑑』tupera tupera(アリス館)
7位:『大人も知らないみのまわりの謎大全』ネルノダイスキ(ダイヤモンド社)
8位:『ポケモン生態図鑑』きのしたちひろ(小学館)
9位:『大ピンチずかん〈3〉』鈴木のりたけ(小学館)
10位:『ほしぞらのたからもの』豊福まきこ(BL出版)
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続いて発表されたキノベス!キッズ2026の受賞作は、森洋子さんの絵本『ある星の汽車』。

司会の竹田さんは、「表紙を見ただけでも、大人の方が手に取りたくなる雰囲気がある」と紹介。希少動物や絶滅動物が登場する点にも触れました。

けんごさんも「表紙だけでなく、開いてすぐに絵に引き込まれる」と語り、スケザネさんも「最初は心が温かくなるけれど、後半でヒュッと突きつけられるものがある。大人にこそ読んでほしい絵本」と評価。

またスケザネさんは、『大ピンチずかん』『身の回りの謎大全』など、近年のキノベス!キッズの傾向にも触れ、「大人の知的好奇心も刺激する本が増えている」と語りました。

けんごさんも、「子どもの本は、最終的に大人が選ぶもの。大人が楽しまなければ子どもに届かない」と話し、大人でも子どもの本に触れてみる価値を強調しました。

 

キノベス!2026は『世界99』

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1位:『世界99〈上〉』『世界99〈下〉』村田沙耶香(集英社)
2位:『本なら売るほど 〈1〉 』児島青(KADOKAWA)
3位:『イン・ザ・メガチャーチ』朝井リョウ(日経BP)
4位:『僕には鳥の言葉がわかる』鈴木俊貴(小学館)
5位:『エピクロスの処方箋』夏川草介(水鈴社)
6位:『殺し屋の営業術』野宮有(講談社)
7位:『失われた貌』櫻田智也(新潮社)
8位:『さよならジャバウォック』伊坂幸太郎(双葉社)
9位:『探偵小石は恋しない』森バジル(小学館)
10位:『謎の香りはパン屋から』土屋うさぎ(宝島社)

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「キノベス!2026」栄えある第1位に選ばれたのは、村田沙耶香さんの『世界99』でした。

司会の竹田さんは「海外のディストピア小説とは違う、日本的なディストピア」と表現し、「恐ろしいのに読むのをやめられない」と語りました。

スケザネさんも「100年後の教科書に載っていてもおかしくない。その作品を今リアルタイムで読めるのは本当にラッキー」と強調。けんごさんは「村田さんのこれまでの作品の集大成」と評価し、さらに「未読の方は、"新宿"という言葉を頭の片隅に置いて読んでほしい」と読み方のヒントも添えました。

2位は唯一のマンガ作品となった『本なら売るほど』。「古本屋を舞台に、出てくる本が全部コア。本好きなら絶対刺さる」と断言し、「とりあえず一人1冊買ってください」と会場を沸かせました。

けんごさんも、「SNSで小説紹介をしている立場として、この作品に出てくる“本の紹介の仕方”は本当に勉強になる」と語り、発信者としての視点からも強く支持しました。

3位の『イン・ザ・メガチャーチ』についてスケザネさんは「分厚いが一晩で読んでしまった」と熱弁。

4位の『僕には鳥の言葉がわかる』については、けんごさんが「『斜め論』や『会話の0.2秒を言語学する』とあわせて読むと、より立体的に楽しめる」と推薦。スケザネさんは、「著者の鈴木俊貴さんは、オールナイトニッポンもやって、徹子の部屋にも出ていて、売れすぎやろと思った」と笑いを交えつつ、その注目度の高さに言及しました。

 

ミステリーの躍進と「自分だけの第1位」の見つけ方

6位から10位については、スケザネさんは「ミステリー系が多い」と全体の傾向を分析。

6位の『殺し屋の営業術』について、「営業マンが殺し屋を売り込む設定がとにかく面白く、営業トークが物語を動かしていく」と高く評価しました。けんごさんは9位の『探偵小石は恋しない』を挙げ、「福岡が舞台で、自分が青春を過ごした場所。本格ミステリーが得意ではない自分でも、かなり心を揺さぶられた作品」と語りました。

そのほか、伊坂幸太郎さんの『さよならジャバウォック』や、完成度の高さが話題となった土屋うさぎさんの『謎の香りはパン屋から』など、多彩な作品が選ばれた今回の「紀伊國屋三賞」。

最後に司会の竹田さんは、「順位はついていますが、良し悪しではありません。誰かにとっての1位になれば、それは傑作」と語り、「ぜひ自分だけの1位を見つけてほしい」と締めくくりました。

 

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