乳がん検診を毎年受けても「早期発見」できない理由とは 専門医が教える検査の盲点
2026年03月11日 公開
乳がんの患者数は年々増えており、近年は9人に1人がかかるといわれているそう。日本の乳がん検診受診率は50%を下回っているといい(2022年時点)、早期発見にも課題があります。そんな乳がん検診の実態を、医療ジャーナリストの木原洋美さんに解説していただきます。
※本稿は『PHPからだスマイル』2026年3月号の内容を一部抜粋・再編集したものです。
毎年検診を受けても見逃されてきた理由
A子さん(42歳)は3年前、乳房に痛みを感じて受診した乳腺外科でステージⅡの乳がんと診断されました。母親を乳がんで亡くしている彼女は、毎年欠かさず検診を受けてきたので納得がいきません。医師に「どうして早期発見(0期またはⅠ期)じゃないんですか」と問いただすと「あなたの乳房はマンモグラフィではがんを発見しにくい高濃度乳房だからです。早期発見したいなら、超音波(エコー)検査と両方受けておくとよかったですね」と言われてしまいました。
高濃度乳房とは乳腺組織の割合が多い乳房のことです。乳房には高濃度乳房と、乳腺組織が10%未満の脂肪性乳房などがあり、日本人女性の約8割は高濃度乳房というデータもあります(欧米では3~4割)。
「高濃度乳房はマンモグラフィでは全体が白く写るので、同じように白く写るがんは"雪原で白ウサギを探す"ように見つけづらいのです。逆に脂肪性乳房は、マンモグラフィでの発見が比較的容易です。そのため日本人には超音波検査との併用あるいは交互に受けることをお勧めします」と東京女子医科大学の明石定子医師は言います。
アメリカでは乳房タイプの通知が義務化
高濃度乳房の割合がそれだけ高いのなら、検診の際に自分の乳房タイプを教えてもらい、マンモグラフィか超音波検査かを選べるようになったらいいですよね。
「乳房タイプを通知するべきではないかという議論は10年ほど前からあります。でも、超音波検査の精度はオペレータの技術によって差があるため、導入には技術認定や研修・資格制度の整備が必要です。また、公的がん検診の目的は、がんの早期発見ではなく死亡者を減らすことなので、死亡率減少の確固たる裏付けが不足している超音波検査の導入は時期尚早との理由から、結論が出ないまま今に至っています」(明石医師)
要するに、高濃度乳房であることを伝えたとしても、その先の検査の質の担保に問題があるため、導入は見送られてきたわけです。アメリカでは2024年から、マンモグラフィ受診者に高濃度乳房かそうでないかを通知することが義務づけられました。
日本でも超音波検査の死亡率減少効果の研究は進んでいるので、公的検診がマンモグラフィと超音波検査の2大検査体制になる日は近いと明石医師は考えています。とはいえ、日本の場合は、乳房タイプや検査法以前に、検診受診率の低さが問題視されています。
「欧米の7~8割に比べ、日本における乳がん検診の受診率は47.4%(2022年)。乳がんの患者数は年々増えていて、今は9人に1人がかかるといわれています。ぜひ検診を受けてください」(明石医師)
痛みのない検査の研究・開発が進行中
一方、マンモグラフィの受診率がなかなか増えない一因に、「検査自体の痛み」があげられます。
これに対して近年、「ドゥイブス検査(MRI)」「乳房専用PET検査」のような痛みのない検査も登場しています。ただし、受けられる施設はまだ少なく、また、「その検査さえ受けていれば大丈夫」という検査はないのが現状です。
専用の装置に息を吹きかけるだけで乳がんの有無が検出できる「呼気乳がん検査」も研究されていますが、まだまだ開発途中です。
さらに乳がんでは「ブレスト・アウェアネス(乳房を意識する生活習慣)」が提言されています。
「これまでの自己検診のように自分で乳がんを見つけてといわれても、発見は難しいのではないでしょうか。なぜなら、がんに触ったことがないんですから。ブレスト・アウェアネスは、自分の胸に関心をもって変化に気づくことです。毎月変化がないかをチェックし、変化があれば受診してください」(明石医師)
がんの位置にもよりますが、一般的にはがんが3cmくらいの大きさにならないと自分で見つけるのは困難だとされるので、2cm以下の早期がんを発見するには、定期的な画像による検査が不可欠とのこと。
乳がんから自分や家族を守るには、今はまだ痛みも煩わしさも乗り越えて、2年に1回、複数の検査を受けるのが望ましいようです。
◎監修:明石定子医師(東京女子医科大学病院副院長・東京女子医科大学乳腺外科教授)