ロザン菅×安達裕哉「高学歴なのに仕事がうまくいかない人」に欠ける本当のコミュ力とは?
2026年03月27日 公開
左:安達裕哉さん、右:ロザンの菅広文さん
高学歴なのに、仕事ができないのはなぜか?そんな疑問の答えは、「コミュニケーション力」にありました。
昨年上梓した『学力よりコミュ力』が話題のお笑い芸人・ロザンの菅広文さんと、『コミュ力が高い人が話しながら意識していること』の著者であり、一流コンサルタントの安達裕哉さんが対談を実施。「コンサルは男芸者である」「最新技術より、昔ながらの親父のやり方が選ばれる理由」など、仕事の本質を左右する“信頼のつかみ方”を解き明かします。
構成:次重浩子(PHPオンライン編集部)
写真:中西史也(PHP研究所/ビジネス・教養出版部)
最新技術より「いつもの親父のやり方」
菅:昨年『学力よりコミュ力 無理しないコミュニケーション術』を出版した、お笑いコンビ・ロザンの菅広文です。よろしくお願い致します。
安達:『コミュ力が高い人が話しながら意識していること』を執筆した安達裕哉と申します。よろしくお願い致します。
菅:安達さんの『コミュ力が高い人が話しながら意識していること』、僕読ませていただいてすごいびっくりしたんですよ。なんでかっていうと、言ってることがほぼ同じなんです。安達さん、ちょっとパクりました?パクりましたよね(笑)
安達:いやいや(笑)でもそうですね。同じようなこと書いていますね。
菅:そうですよね!でも実は、安達さんのほうが僕より先に執筆されているんですよね。ってことは、僕がパクりました!(笑)っていうぐらい、言ってることが共通しているんですよ。僕の『学力よりコミュ力』を読んでおもしろいなって思っていただいた方は、ほんまに読んでいただきたい。僕の本が初級みたいな感じで、安達さんの本は上級というか、仕事で活かせる本っていう感じですね。
安達:ありがとうございます。私が『学力よりコミュ力』を拝読させていただいて思ったのは、菅さん、本当にサラリーマンやったことないの?ってことなんです。この本には、会社で指導されることが結構そのまま書いてあるんですよ。
菅:いや、それね。従兄弟にも言われました。従兄弟はサラリーマンやっているんですけど、「菅ちゃんサラリーマンやってたっけ?」って。
安達:もう新人研修で50回ぐらい言われるようなことが書いてあるんでびっくりしました。先ほどおっしゃっていただきましたけど、根っこの思想は本当に同じなんだなと思いましたね。
私は新卒で入ったコンサル会社に12年ほど勤めたんですが、そこでは新人さんを徹底的にトレーニングするんです。朝と夕方の2回、当日や前日にお会いしたお客さんとのやりとりを上司に報告するんですが、そのときに上司が「じゃあ俺はお客さん役をやるから、ちょっとやってみろ」って言って、お客さんとの折衝をロールプレイングさせます。そこでうまくできないと何回もやり直し。私の本では、その時の教えを書いています。
菅:はー、おもしろい...!でも、コンサル会社に入られる方って、学力の高い方が多いわけじゃないですか。だからといってコミュ力が高いかっていうと、また別の話なんですよね。
安達:そうです。勉強ができてもコミュニケーション能力が低いと、どうしても会社でうまくいかない。菅さんも『学力よりコミュ力』でまさにそのことを書いておられて、このあたりをどう考えていらっしゃるのか、今日お伺いしたいなと思って来たんです。
菅:なるほど。実は最近ちょっとおもしろいと思った話があってね。
同級生が父親から受け継いだ歯医者をやっているんです。歯科医療の世界もテクノロジーが進化して、新しい治療法がどんどん開発されているんですけど、親父の代から通ってくれている患者さんが決まって言うセリフがあって、それは「お父さんがやったやり方でやってほしい」なんですって。
「うん。だから新しい機材があってね、これでやった方が治ると思うんですよ」って説明しても、「いや、そんなのはええねん。お父さんがやったやり方でやってほしい」って言われるんですって。
これはつまりどういうことかというと、最新テクノロジーよりもお父さんの方が、信頼度が高いってことなんです。
安達:おもしろいですね。これは技術ではなくて、人のほうに信頼感がついてると。
菅:そうです。つまり勉強をしても使えなかったら意味がないんです。どれだけ学力が高くても、すごいテクノロジーを持っていても、相手が了承してくれないと結局使えない。それを左右するのはコミュ力じゃないかなと思っていて。
「新しいテクノロジーが素晴らしくて、親父がやっていたこととはちょっと違うけれども、こっちの方がいいんですよ」ってことをどう相手に説明できるか。これが僕はコミュ力やと思ってるんですよね。
安達:結構似たような話があって、私がコンサル会社に入社して最初に言われたのは、「お前ら、クライアントに提案するのがコンサルタントの仕事だって勘違いしてないか?」ってことなんです。
菅:どういうことですか。
安達:「お前らが提案しても、お客さんは『やりたい』って絶対思わないから提案するな。まずはお客さんに気に入られなさい」と。「コンサルタントの別名は、男芸者だ」とも。
菅:なるほどね。
安達:私も入社した頃は、業績の話とか戦略の話ができるのかなって思っていたんですけど、まずはお客様に気に入られる会話をしなさい、としか指導されなかった。我々がやる仕事は、お客様がやりたいことをサポートすること、というのが実は基本であると。
菅:でもそれ、すごい大事ですよ、本当にね。
安達:そうなんですよね。じゃないとやっぱり話を聞いてくれないんです。
コンサルの仕事は、お客さんの『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を探すこと
安達:芸人さんだと、お客様がやりたいことが明確になってない状態で、どういう風にコミュニケーション取るんですか?
菅:僕らの仕事は笑うっていう反応があるから、わかりやすいんですよ。笑ってくれたらこれはいいんだな、笑ってくれないんだったらダメなんだなって、判断基準がしっかりあるんですよね。
安達:なるほど。たしかに我々の場合は、面談で結構笑ってくれたなと思ったら不採用だった、というのはよくある話で(笑)。
菅:僕らは笑ってもらうことが一番大事なんですけど、普通のお仕事されている人って、相手の表情を見て、どう感じているか察しないといけないから、僕らよりも大変なんじゃないかなとは思いますね。
だって、笑わすことはそんなに難しいことじゃないから。
安達:えー?(笑)
観客:えー?(笑)
菅:え、ちょっと待って(笑)。俺そんなすべってる?
安達:そうですか(笑)やっぱり世界が違いますね。
反応という点でいうと、コンサルの現場でお客様は笑ってくれないし、ずっとむすっとしてる場合もすごく多いです。そういう時にどうするかというと、本当は何を考えておられるのかを突き詰めるために、色々質問をするんです。
菅:なるほど。反応を見てるってこと?
安達:そうですね。お客様に「課題はなんですか」って聞くコンサルタントが結構いますが、「採用です」っていう答えが返ってきた時に、ダメなコンサルタントは「あ、採用ですか。採用ならこういうことやれます!」ってすぐ営業を始めちゃう。これ、絶対やってはならないと言われたことのひとつです。
では何をするかというと、もう少し質問して確かめるんです。「では採用について、具体的に今やってらっしゃることはなんですか?」とか。で、「いや特に何もやってないんだけど」って返ってきたら、そこが課題だと判断する。そのための材料を少しずつ集めていかないといけない。
菅:でもそのお客さんと別の担当者に聞くと、言ってることが180度違うやん、みたいなことはないんですか。
安達:めちゃくちゃあります。おもしろいことに、人間って言ってることと考えてることが一緒じゃないんですよね。
例えば「カレーが食べたい」って言っている人をカレー屋に誘うと「いや、ちょっと今日は違うんだ」って言われたりする。これは仕事でもよくある話でして、「うちの会社、もっと売り上げを伸ばしたいんだよね」って中小企業の社長が威勢よく言うんだけど、実は内心売り上げを伸ばしたいとは全然思ってない、ということもよくある。
菅・それはなんなんですか。本音と建前ですか。
安達:というよりも「言わされている」。好きな食べ物はなんですか?って質問されたから、好きな食べ物を無理やりひねり出した、という状態。好きな本はなんですか?って聞かれた時に、ちょっとかっこつけて言ってしまうことあるじゃないですか。『アルジャーノンに花束を』とか...。だから、発言されたことをそのまま鵜呑みにしちゃいけないぞっていうことをすごく言われましたね。
菅:これ言っといたらいい感じに映るんちゃうか、みたいなことですかね。ほんまは小難しい映画よりも娯楽映画が大好きやのに、「好きな映画は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』です!」とは言いにくい、みたいな。コンサルのお仕事は、お客さんの『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を探す仕事ってことですか。
安達:まさにその通りですね。そうしないとお金を出していただけないというのが、コンサルタントという仕事の本当のところです。だから、クライアントに提案するのがコンサルの仕事ではない、というのはそういうことなんです。