「大型動物用の罠にかかったたぬき、たぬきなら出られるくらい隙間があるのに『たぬきはもうおしまいです......』という顔で、ずっと檻の中にいた。檻を開けても『もうおしまいだからほっておいて......』とでも言いそうな哀愁を帯びたまま、なかなか出てこず、抱っこで出された。」
――9千650万表示、27万いいね、約3万リポストという数字を叩き出したこのポスト。投稿したのは福島県を活動拠点とするVtuber樫尾キネさんです。XやYouTubeで地元の魅力を発信する一方、日常的に出会うタヌキについて度々投稿しています。タヌキとの関係、なぜ人々はタヌキに魅了されるのか? そして庭先に現れたタヌキの驚きの行動とは......『タヌキまるごとBOOK』に掲載された樫尾キネさんのインタビューを増補・再編集してお届けします。(画像は全て『タヌキまるごとBOOK』より)
※前後編の前編です。
箱罠に入っていたタヌキに猟師さんは...
――タヌキとはいつからの付き合いでしょうか?
私が暮らす福島県福島市は、盆地の中にあります。山が多い環境で畑や果樹の世話をしており、野生動物や自然と近い生活をしています。物心ついたころには、身の回りにタヌキがいましたね。70年くらいの付き合いでしょうか。
昔はもっとたくさんのタヌキを見たように思います。柵やビニールハウスなどの対策も今ほど進んでいなかったので、果樹の周りでタヌキの喧嘩をよく見ました。木に登れた子と下で待っている子が、言い争いのようなことをするんです。喧嘩ではなく、会話だったのかも?
――最近出会ったタヌキはいますか?
タヌキたちはよくゴミ捨て場に来るのですが、最近はカラス対策で鍵付きや箱型のゴミ捨て場に変わりました。タヌキでは太刀打ちできない立派なものですから、ちょっと離れた場所から「いいなあ」とでも言いそうな顔でゴミを眺めています。
――「タヌキはもうおしまいです......」の投稿について詳しく教えてください。
私の身の回りには結構クマが出ます、なので箱罠を何ヵ所かに設置しているんです。それを猟師さんと見回りしていたら、クマ用の罠にタヌキが入っていました。しかも、罠は作動しておらず、入口は開いているのに、タヌキは「おしまいです......」と固まっていました。
箱罠の檻も、タヌキなら普通に出られるんですよ、なのにもうあきらめていた。クマ被害でみんな荒んでいたので、猟師さんたちと「全部タヌキだったらいいのにね」「タヌキたまにしか悪さしねえからなあ」「タヌキよう、クマさ伝言してくれねか~」と言いながら、動物用の網でタヌキをキャッチし、山にリリースしました。
――猟師の方々は、タヌキのことをどのように見ていらっしゃいますか?
山で、物音が近い、動物がいる!となるとやはり危機を感じるものですが、タヌキは「ああ、タヌキか、よかった」と思うそうです。
――タヌキは農作物の食べ方も遠慮がちと聞きます。他の動物(イノシシやアライグマ)などと比較するとどうでしょうか?
タヌキはアライグマのようにスムーズに木登りできず、細い枝先の果実をとろうとして落っこちていました。また、全てを掘り返すイノシシと違い、一生懸命穴を掘っても上手くいかず、サツマイモを見つける前に疲れて諦めていたり......。上手い個体もいるのですが、私の身の回りではこんな姿をよく見かけます。代わりに葉牡丹や食用菊などは元気よく食べまくっていて困りました。
セントバーナードを大きいタヌキだと思っていた?
――「タヌキはもうおしまいです...」のほかにも反響の大きかった投稿はありますか?
「近所のたぬき達、山の麓に暮らしていたセントバーナードを、なぜかボスのように慕っており、子だぬきを見せにきたり、食べ物を運んできていた。うちの黒柴にも挨拶にくることがあり、おそらく、たぬき仲間だと思っていた。」
「補足 とても大人しく賢いセントバーナードだったので、たぬきは無害と判断し、自分の縄張りに入ってきても、吠えたりせずにただ見つめていました。お顔の模様も結構たぬきでした。我が家の黒柴も特にたぬきには吠えませんでした。体型がたぬきでした。」
「近所の親戚宅、セントバーナードちゃんがいたころは、あみあみのフェンスに、タヌキが複数で鼻つっこんで、覗きに来ていた。たまに、エサのようなものを置いて行ったこともある。でも、犬ちゃんが旅立ってからは、来ていない。犬ちゃんを、とっても大きなタヌキだと思っていたのかもしれない。」
という一連の投稿も反響がありました。我が家の先代犬はちょっとタヌキに似た柴犬で、河川敷を散歩していると「おや?仲間では?」という顔で、タヌキの親子が顔を出すことがありました。一定の距離を保ってお互い見つめるだけで、特に関わることはなかったのですが、なにか縁のようなものを感じました。
セントバーナードちゃんは、親戚の家にいた大きくて穏やかな子です。たしかに顔の模様や色合いは巨大なタヌキに見えなくもない、そんな雰囲気でした。この時もタヌキは遠くから眺めたり、子タヌキを連れてきて一緒に眺めたり、不思議な関係でした。イヌとタヌキが会話していたなら、ちょっと聞いてみたいなと思ってしまいますね。